はっぴいえんど「12月の雨の日」
1970年8月発表のアルバム『はっぴいえんど』より。 つい最近まで、はっぴいえんどは積極的に聴くバンドではなかった。鈴木茂『バンド・ワゴン』や大瀧詠一のソロアルバムなどは聴いていたが、 2005年9月に稲荷山公園で行われた「ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル」の細野晴臣のライブを 見て感激してから、細野ソロ初期3作~はっぴいえんどと辿って聴いていった。 私が日本のロックバンドを聴き始めた頃、レコード屋でみた「ゆでめん」のジャケットは強烈な印象を残したが、 その頃、私の周囲にも、はっぴいえんどの音楽に興味を持っている者はいなかったように思う。 はっぴいえんどは良くないと言っている者もいなかったと思うのだが、 中学~高校生にはThe Bandやバッファロー・スプリングフィールドなどのアメリカンロックに影響を受けたはっぴいえんどは、 四人囃子やパンタ(頭脳警察)よりも近寄りがたいものだったという気もする。 自分の好きなパンタとはっぴいえんどが三田祭事件以来対立している、ということにも少なからず影響されてたかもしれないが、それよりも、 雑誌ロック画報01のはっぴいえんど特集で湯浅学が語っていた“はっぴいえんどの得体の知れなさ”が私にとっては入り口にならず、 長い間理解できなかった訳だ。 この「12月の雨の日」は、はっぴいえんどにとって最初につくられた曲で、細野,大瀧、松本の3人が細野宅に集まり作ったメロディに、 後日松本が大滝宅へ向かう途中で見た風景を描いた詞をつけ、その後に鈴木茂の印象的なイントロのフレーズが入った事により、この曲が出来上がり、 同時にバンドの方向性も生まれた。 他のメンバーが「これしかない」と思ったと言う、イントロのギターが独特の世界を作り出しているのは間違いない (アコギのストロークとドラムのタイミングも)。 全編を通して弾いている鈴木茂のギターは、瑞々しさをも感じさせるメロディにゆらぎとうねりを生み出しているが、 このファーストアルバムは4チャンネル録音で、後に8チャンネルで録音されシングルとして発売されたバージョンは、 数本のアコギがダビングされ、余裕のある大瀧の歌とともにさらに広がりを感じさせる素晴らしい出来だ(個人的にはこのシングルバージョンが好み)。