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チャールズ・ブコウスキー著・青野聰訳『町でいちばんの美女』

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カルメン・マキの1996年発表のアルバム『UNISON』に「人魚」という曲が収録されていて、 “リュック・ベンソン監督のつめたく冷えた月」に捧ぐ”と副題が付けられている。 『つめたく冷えた月』は主演もしているパトリック・ブシテーが監督した1991年のモノクロのフランス映画(リュック・ベンソンは製作)で、 今回紹介するチャールズ・ブコウスキーの「人魚との交尾」と「充電のあいまに」の2つの短編小説を原作にしている。 この2編は1972年アメリカで出版された短編集『勃起、射精、露出、日常の狂気にまつわるもろもろの物語』に収められたが、 現在では、1983年にこの短編集を2部にわけて出版された 『町でいちばん美女』(もうひとつは『ありきたりの狂気の物語』)に収められている。 剃刀の様な純粋さと美しさを持った女との一時の愛を描く表題作「町でいちばんの美女」。 それよりももう少しスウィートな「かわいい恋愛事件」。 肉体労働の過酷さを知るものなら深く味わえる「精肉工場のキッド・スターダスト」。 オリジナル短編集のタイトル『勃起、射精...』に恥じない内容の「15センチ」や「ファックマシーン」、「チキン3羽」など体液を感じさせる物語、 ブコウスキーの好きな競馬の話しもいくつか。死ぬほどの病状を抱えた壮絶な入院生活をユーモラスに描いた「慈善病院での生き死に」。 『...日常の狂気にまつわるもろもろの...』という内容の物語も。 「淫魔」は白昼の悪夢のような話で、“日常の狂気”を冷静な視線であるがままに取り上げた作品だ。作者は関連付けないで欲しいとしているが「レイモン・ヴァスケス殺し」は実際にあったラモン・ノヴァロ事件をモデルにしたものだろう。 ハリウッド・ヒルズで優雅な暮らしをしていたラモン・ノヴァロ(『ベン・ハー』など)は、彼が5千ドルを自宅に隠し持っているという情報を 嗅ぎつけたシカゴ出身の兄弟によって、のどを突き刺され死亡した。 「人魚との交尾」は死姦を扱っているが、いたずら心が狂気を誘い、そして小さな愛情を作り出す、リリックな物語だ。 車のバッテリーを充電中に飲み屋に入った男と、そこで出会った娼婦との出来事を描いた「充電のあいまに」を途中のエピソードに加えて、 主人公をジミヘンなどのロック好きフランス人に替えたのが映画『つめたく冷えた月』。 ブコウスキーは世界で起きていること...