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Japanese Punk and New Wave関連書籍 Vol.1 菅原庸介著『蜥蜴の迷宮 −若き爬虫類にささぐ−』

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日本のパンクとニューウェイヴの関連書籍をいくつか紹介。 (株)ドールより1987年に刊行された、東京ロッカーズの代表的バンドであるリザードのモモヨ(菅原庸介)が執筆した自伝的小説『蜥蜴の迷宮 −若き爬虫類にささぐ−』。 映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が当時のアーティスト・関係者達の、主にピュアな部分を抽出して作り上げられた物語だとしたら、このモモヨが“視た夢幻をつらつら書き写した”という”自伝的小説”は、同じ時期を描いた部分もありながら、時にけしの森で迷い囚われ、享楽と邪な情念が渦巻く狂おしい人間関係の中に生きた経験を振り返った物語であり、破局の後に日本の古の歌人とロックンロールを重ね合わせていくことで新たな道を探り出し再生を告げた書でもある。 モモヨの中学・高校時代のエピソードや、もちろん<通底器><幻想鬼><エレクトリック・モス>といったバンドを経た後、紅蜥蜴を結成しリザードと改名した音楽活動の足跡も知ることができる(リザードとして1986年に発表した4曲入りミニアルバム「Book of Changes」まで)。 モモヨ自身が”自伝もどき”と記しているが、レコードのリリース、記された事件や事故の一部は他の出版物に記録されたものと表面的には変わらない事実であり、多くの人物やバンド名は変名となっているが実名で登場している箇所もある。もちろん書かれている修羅場と化した人間関係は知る由もないが、日本のアンダーグラウンドシーンやパンクロックシーンの裏側で何があったのかを知る・夢想するには格好の書だ。 “まず、この道に至らんと思わん者は、非道を行ずべからず” と世阿弥『風姿花伝』の言葉を引いた後、こう記している。 “ただ、ひたすらロックン・ロールするばかりでよい、他に示すべき何もない”(「あとがき 夢現」より)。 この本の中でモモヨが”家では画集を眺めることが多かった。ギュスターヴ・モローという、世紀末フランスの画家やデルフトのフェルメールが好きだった”と記しているが、私が後にフェルメールの絵画を好きになり(2000年に大阪で開催されたフェルメール展観に行った)、最初読んだ時は気にしてなかったけど、読み直したときフェルメールの名前を見てうれしかったな。

松山晋也監修・別冊ele-king『J-PUNK/NEW WAVE-革命の記憶』

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2026年3月31日、Pヴァインより刊行。 映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』、いくつかレビューを読んだけど、当時を経験した世代、または東京ロッカーズ周辺を日本のロック史として知っている(聴いている)人たちは、ああしたらよかった、これが足りないみたいなレビューもあったが、当時の音楽シーンを知らない若者、世代には概ね好評のようだ。それは監督や原作者が望んでいたことでもあると思うので、なんか安心した。 その映画ではとりあげていなかった関西パンクシーン、関西NO WAVEと呼ばれたバンド・アーティスト群も1978年〜1979年には活躍し東京でもライヴをおこなっていたが、その代表的なバンドのひとつであるアーント・サリーを表紙にした、別冊ele-king『J-PUNK/NEW WAVE-革命の記憶』が出版された。 映画『ストリート・キングダム』が公開され、ここにきて書籍『ストリート・キングダム 最終版』、写真集『JIBIKI YUICHI FRICTION 1978-1985』と購買意欲を刺激される出版が続き、この他にもフリクションのシングル「Crazy Dream」や「I Can Tell」のアナログ再発もあり、さすがにシングルの音源はCD等数種持ってるので買わなかったけど。この『J-PUNK/NEW WAVE-革命の記憶』は、かつて雑誌『ロック画報』08号で吉祥寺マイナーについて回想録を書き、“何よりも「東京ロッカーズ」などといういちゃついたネーミングに嫌悪感を抱いていた”という松山晋也が監修している(『ロック画報』08号に掲載されていた記事は、松山晋也のブログに「 吉祥寺マイナーのこと 」として公開されている)。 地引雄一へのインタビューでは、地引が田舎の生活を撮影した写真が見られる(1枚だけど)。見たかったんだよねぇ…地引雄一が東京のロックシーンを撮影する以前の写真。福島県の農村を撮影した写真には、傾いた土壁の納屋と頰かむりをした農夫が写る。写真雑誌にも掲載されたというが他も見てみたい。インタビューはその頃の話題から最近のインディーズ・シーンとの関わりまでを語る、写真を含め16ページ。S-Kenのインタビューは写真を含め12ページで、ポジティヴな波動に満ちた内容。 小嶋さちほのインタビューは短いけど(写真を含め8ページ)、自身の音楽活動がパンクからスピ...

地引雄一撮影・写真集『JIBIKI YUICHI FRICTION 1978-1985』

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2026年3月25日、Record shop BASEより刊行。 地引雄一が1978年から1985年にかけて撮影したフリクションの写真集が発売された。フリクションの写真集というとレック撮影写真集+佐藤ジン・地引雄一・広瀬忠司らによる撮影のフリクション写真集という2冊組(+ライヴCD)『ZONE TRIPPER / FRICTION 1978-2008』(カラーフィールド刊・2008年)があったし、地引雄一の写真集は様々なバンド・アーティスト写真を収録した『TOKYO STREET ROCKERS 1978→1981』(リトルモア刊・2009年)があったが、地引雄一単独の撮影によるフリクション写真集は初の刊行となる。 巻末に掲載されたRecord Shop BASE・飯嶋俊男の「制作、発刊にあたって」によると、“あくまで主役は地引氏”と記されている。映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』と同じく主役はユーイチ、そのファインダー越しの眼差しだ。オンステージでは強烈に放射されるエネルギーが感じられ、オフステージではリラックスしユーモラスにも感じられる写真の数々。フリクションのバイオグラフィーと写真のINDEXを含む160ページ、A4サイズの写真集だ。 地引雄一の写真の魅力というとなんだろう…臨場感、それに被写体/バンドとの近さ…かな。音圧を感じるような接近戦といってもいいかも。 A4サイズなのでこれまで見たことのある写真もドーンと大きく見ることができる。恒松の弾くギター、ダブルカッタウェイのレスポールジュニアのヘッドには「Burny」のロゴ。 写真集には未発表の5曲入りCDが付属している。 曲目は下記、 1. I CAN TELL 1978年5月28日 六本木S-KEN スタジオ(レック、チコ・ヒゲ、ラピス) 2. CRAZY DREAM 1979年4月22日 新宿ロフト 3. ニューセンセーション 1980年9月6日 新宿ニューヨークシアター 4. CYCLE DANCE 1980年9月6日 新宿ニューヨークシアター (Track 2, 3 & 4 レック、チコ・ヒゲ、ツネマツ・マサトシ) 5. ニューセンセーション 1981年1月10日 市ヶ谷法政大学学生会館大ホール(映像では既発) (レック、チコ・ヒゲ、ゲスト:ノン G&Key ) 『J...

地引雄一著『ストリート・キングダム 最終版 東京ロッカーズと80’sインディーズ・シーン』

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2026年3月27日、SLOGAN/indies Pressより刊行。 1986年に ミュージックマガジンより 刊行された初版から40年、 2008年に K&Bパブリッシャーズより刊行された改訂版 『ストリート・キングダム 東京パンク/インディーズ・シーンの記録』から18年、 田口トモロヲ監督・映画『ストリート・キングダム自分の音を鳴らせ。』公開と同日に映画の原作『ストリート・キングダム』が最終版として刊行された。 巻頭に掲載された著者撮影のライヴやオフショット写真は、2008年版から若干追加あり紙質も見易いものになっている。本文の下部にある補足資料・画像も追加されている。最終章としてあとがきに2009年以降の事柄を記載、雑誌『ミュージック・マガジン』1985年3月号から13回にわたって掲載された「地引雄一の現場報告」が再掲載されリザード、フリクション、オート・モッド、くじら、G-シュミット、A-MUSIKなどを取り上げている。巻末には当時のチラシ、ポスター、ファンジンを掲載した「パンクアート・ギャラリー」で、こちらも2008年版から幾つか追加されている。 地引雄一はこの本のまえがきで「ストリート・キングダム」とは、 “何者にも従属しない自由な活力にあふれた異世界”であると記している。それは都市の地下に、路上に、ビルの中に、都市と対峙しながら生きる者達の生活空間に出現したのだと私は思う。 映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』はバンドの再現シーンについつい目が行きがちだが、この本を読み返して主人公ユーイチの物語だったんだなとあらためて思ったのである。 私が購入したタワーレコードではオリジナル特典があった。 タワーレコード購入特典:ポストカード(ザ・スターリン) タワーレコード購入特典その2:スマホサイズ・ステッカー(ノンバンド)