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4月, 2022の投稿を表示しています

BOLSHIE『1979 UNRELEASED STUDIO TRACKS』

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2022年2月25日、BASEよりリリースのアルバム。 BOLSHIE『THE BOX』 で書いたが、売切れ状態だった同時リリースの『1979 UNRELEASED STUDIO TRACKS』が4月に再プレスされて入手可能になった。よかったー。 『THE BOX』に収録されていた上野耕路プロデュースによるデモ音源が “ 自分達の表現したいものと乖離していた ”(『1979 UNRELEASED 〜』ライナーノートより)ため、バンドのセルフ・プロデュースで1979年5月にレコーディングした音源13曲を『1979 UNRELEASED STUDIO TRACKS』に収録している。録音場所は渋谷ヤマハ・エピキュラスと記載がある。 メンバーに不評だった上野デモではキーボードが大きめ(というかギターとドラムがやや抑え気味)にミックスされていたが、この『1979 UNRELEASED STUDIO TRACKS』ではギターとドラムの音がソリッドに録音されており、全体としてラウドな聴感になっている。バランスはキーボードが右チャンネル、ギターが左チャンネルに振り分けられている。 『THE BOX』にも収録されていた1979年5月8日新宿ロフトでのライヴ4曲をはさんで、実はこれが聴かせたかったのでは、と思えるのが、石田健司+岩井誠の2人により1982年春に録音されたプライベート・レコーディングの2曲。 「Cut and Carve」は打ち込みのドラムに、石田のスムースなベースラインと岩井のシンセをこれまでになく活かしたアレンジのアンビエントなナンバー。8分余りのやや長めの曲だが退屈させることはない、驚きのボルシー進化形、かっこいい。「Early C」はノイジーともいえるレゲエ/ダブなナンバーで、裏打ちのキーボードに、女性の語りが被さり、石田のヴォーカルもエフェクトがかかって雰囲気がある。打ち込みのドラム、ベースラインも工夫されているし、最後のコーラス部分も曲を魅力的にしている。 『1979 UNRELEASED STUDIO TRACKS』に封入された、石田健司(ベース&ヴォーカル)のライナーノートに、これまで2回BOLSHIEの音源リリースの話があったが途中頓挫した、と記載があるが、いぬん堂の掲示板にも“ OZ、いぬん堂と出なかった ” と書き込みがあった。 今回リリース

NHK連続テレビ小説『カムカムエブリバディ』

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NHK朝ドラ『カムカムエブリバディ』終了。 ドラマは、1925(大正14)年の岡山に始まり、家族の100年を描く。上白石萌音演ずる安子、夫(松村北斗)稔との間に生まれた娘は、ふたりの思い出の曲「On The Sunny Side of The Street」を歌い演奏したルイ・アームストロングにちなんで “ るい ”と名付けられた。このドラマの主題歌は森山直太朗の作詞作曲でAIの歌う「アルデバラン」だが、ルイ・アームストロングの「On The Sunny Side of The Street」はこの物語/劇中を通じてのテーマ曲といえるものだ。るいを演じたのは深津絵里、るいの娘ひなたを川栄季奈が演じた。 私が面白く観ていたのはるい編で、るいが大阪のクリーニング店に住み込み働き、ジャズ・トランペッターのジョー(オダギリジョー)と出会い、次第に惹かれあっていくのも微笑ましかったし、クリーニング店を営む夫婦(村田雄治と濱田マリ)のほんわかした雰囲気もよかった。ライヴ演奏もするジャズ喫茶の客ベリーちゃん(市川実日子)やジョーのライバル的なトランペッターのトミー(早乙女太一)とのやりとりも面白かった。このころは登場人物が皆優しく、名前に掛けて、るいを “サッチモちゃん” と呼び、幸せでふわふわしたムードでドラマが進む。フラットな性格のジョー、引っ込み思案なるい。ジョーはコンテストで優勝、るいと結婚の約束をした。私はこれ全部るい(か安子)の夢の中の出来事なんじゃないか、後で夢オチになるんじゃないか、と思いながら観ていた。東京でレコーディングを行なっている途中でジョーが原因不明の病気によりトランペットがまったく吹けなくなるまでは。 ジョーは絶望のあまり、全てを終わらせるためひとり海へ入っていった。このシーンは本当にせつなく、ドラマとはいえ本当に波に飲み込まれてしまうのじゃないのかと思うくらいジョーの身体は儚く映った。この海岸はジョーがるいにアメリカへの夢を語った場所。それと悟ったるいが駆けつけ海に入りジョーをきつく抱きしめ助け出す。ここでふたりはさらに強く結びつき、るいとジョーは改めて陽のあたる道を歩く事を決意したのだと思う。 るい編に出てくる時代劇映画『黍之丞 妖術七変化 隠れ里の決闘』は、内容とドラマ内での使われ方が意表をついていたが、この劇中時代劇の黍之丞の決め台詞、“ 暗闇

THE CLASH『COMBAT ROCK / THE PEOPLE'S HALL SPECIAL EDITION Includes unreleased tracks』リリース!

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ザ・クラッシュ『コンバット・ロック』のスペシャル・エディションの日本発売が決定。 オリジナル・アルバムにディスク2(12曲)を加えたCD2枚組 『コンバット・ロック/ザ・ピープルズ・ホール(40周年記念盤)』で、2022年5月25日にリリースされる 。 ソニー・ミュージックのインフォメーション によると、 “ ザ・クラッシュがニューヨークのナイトクラブ『ボンズ・カジノ』で17回連続ライヴを行なったのは、1981年。そのきわめて重要な意味を持つ公演を終えるとすぐ、彼らはロンドンに戻り、ラティマー・ロード周辺の不法占拠地域、フレストニア共和国のザ・ピープルズ・ホールでリハーサルとレコーディングに取り組んでいる ” とある。いまいち意味不明だが調べてみると… ロンドンのラティマー・ロード周辺で1970年代に不法占拠者達が独立を宣言した地域がフレストニア共和国で、そのコミュニティの中心として使われていたのがビクトリア朝の建物 ザ・ピープルズ・ホール (現在もあるようだ)。そこはクラッシュだけではなく、キリング・ジョークやモーターヘッドなども利用していたという。 この『コンバット・ロック』スペシャル・エディションCD2枚組にも収録される『コンバット・ロック』制作時のアウトテイク「Midnight To Stevens」は、1991年リリースのボックスセット『クラッシュ・オン・ブロードウェイ』が初出だ。『〜ブロードウェイ』のブックレットには「Midnight to Stevens」について下記にように説明がある。 “ 1981年9月17日、ロンドン、フレストニアのピープルズ・ホールにてレコーディング。ローリング・ストーンズ・モービルおよびイアー・スタジオを使用。エンジニアはジェレミー・グリーン ” 日本のソニー・ミュージックのインフォメーションを続けると、 “  このディスクのハイライトは、ローリング・ストーンズのモービル・スタジオを使ってザ・ピープルズ・ホールで録音した「権利主張」のニュー・ヴァージョンと、 完全未発表のインストゥルメンタル「ヒー・フー・デアーズ・オア・イズ・タイアード」。ほかに、「ザ・エスカペイズ・オブ・フューチュラ2000」の未発表オリジナル・ミックス「フューチュラ2000」、 マイキー・ドレッドの「レディオ・ワン」、以前は「ザ・ビューティフル・ピープル・

飯嶋俊男+古川博一:編『CHIRASHI Tokyo Punk & New Wave '78-80s』

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2022年3月31日、SLOGANより刊行。 1978年〜1984年までの東京(ほぼ首都圏)のパンク・ニューウェイヴ・シーンで撒かれたチラシ(ビラ/フライヤー)を700枚強収録した本が刊行された。A4判480ページの分厚い本だ。編者としてRecord Shop BASEの飯嶋俊男、音楽雑誌ライター、Marble Sheep等のメンバーだった古川博一。当時のシーンを振り返るには興味深いドキュメントだし、今は無くなったと思うけどネット上に個人が開設した同趣向のHPもあった。 ライヴや音源リリース告知、バンドメンバー募集などを印刷(コピー)したタダ(無料)のペラ紙がチラシで、手書きのイラストやバンドの写真にインレタや手書きの文字が使われていたが、なかにはデザインはともかく、どこかの本や雑誌から写真や絵を切り取ってコラージュしたり、新聞や雑誌から文字を切り貼りしたものもある。チラシはライヴ会場などに入場する際手渡しされたり、レコード店の置き場にあって興味あるものを持っていくもので、もとはタダのものを集め、それを3,900円(税抜)で売る、というのはどうなのか(700枚として1枚あたり約5.6円…当時のコピー代を思えば安いのか…)と思ったが、巻頭のカラーページ(32ページ)の鮮やかさや、チラシに込められたデザインを含めた情報を1枚ずつ読んでいくにつれて購入して良かったなと思う。 津島秀明監督の映画『ROCKERS』のチラシ、『パンク仕掛け99% No.2』ライブ告知、アルバム 『東京ロッカーズ』リリース記念ライヴの告知、色付きだったんだ…。マリア023のジュネとノンのカラー写真を使ったライヴ告知チラシもカッコいい。 東京アンダーグラウンドということで東京ロッカーズ、フリクション、ツネマツマサトシ、E.D.P.S関連のチラシもあるが、そのあたりは こちらのHP で取り上げるとして、ザ・ルースターズ関連では、 1981年11月20日(金)法政大学キャンパス特設大ステージ 「OUTSIDE ROCK CONCERT」 A.R.B IMITATION BUSINESS ROOSTERS CONX ETC. 1983年1月14日(金)池袋西武STUDIO 200 「通俗・異端・音楽実験室 SOGO ISHII'S PRESENTS 思春期挫折症候群(シンドローム)」 Live:

JOHN CALE「HALLELUJAH」

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1991年、Oscar/Columbiaよりリリースのトリビュート・アルバムより。 北京オリンピックでのドーピング疑惑、ウクライナ侵攻により世界選手権からの除外と、2022年に入りロシア関連の問題が続けて起きたフィギュア・スケートの2021年−2022年シーズンが終了した。 緊迫した状況となったシーズンだったが、注目だったのはアイスダンスに転向しフィギュアスケート選手としてカムバックした高橋大輔。パートナー村元哉中と“かなだい” の愛称で呼ばれ驚きの進化を遂げ、その演技にドキドキ・ワクワクした。そしてもう一組、表現力と技術に安定と勢いを増し調子を上げてきた三浦璃来&木原龍一ペアの躍進だ。2021年グランプリシリーズのスケートアメリカで銀メダル、NHK杯で銅メダル、2022年北京オリンピックでは7位入賞、団体では銅メダル獲得に大きく貢献、世界選手権では銀メダル獲得と、国際大会において日本のフィギュアスケート・ペアとしては、これまでにない成績を残した。これは本当に嬉しいし次シーズンへの期待も高まる。 三浦璃来&木原龍一ペアがショート・プログラムで使用していた楽曲が「ハレルヤ」だった。この曲は以前パトリック・チャンが使用していた ジェフ・バックリィのカヴァー・ヴァージョン を紹介したが、三浦璃来&木原龍一ペアが使用していたのはカナダ出身のシンガーソングライター、k.d.ラングのカヴァー・ヴァージョン(原曲はレナード・コーエン)。ゆっくりとしかしリズミカルに奏でるピアノの弾き語りで歌われるk.d.ラングのヴァージョンは、しっとりした情感たっぷりの演技をする“りくりゅう”ペアにはぴったりだった。ふたりの演技を見てこの曲に魅せられた人もいると思う。このk.d.ラングのカヴァー・ヴァージョンは女子シングルでアメリカ代表のマライア・ベルがフリーの演技に使用していた。 さて、今回紹介するのはk.d.ラングではなく、ジョン・ケイルによるピアノの弾き語りカヴァー・ヴァージョン。英国ウェールズ生まれのジョン・ケイルは、ゴールドスミス・カレッジで音楽を学び、ラ・モンテ・ヤング、ジョン・ケージ、トニー・コンラッドと関わりのあったアヴァンギャルド/現代音楽家、いうまでもなくヴェルヴェット・アンダーグラウンドの結成メンバーである。やや敷居の高いアーティストという感じもするが、このジョン・ケイル「ハ