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My Wandering MUSIC History Vol.20 P-MODEL『IN A MODEL ROOM』

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1979年8月ワーナーよりリリースのアルバム。 1973年から活動していたプログレッシヴ・バンド“マンドレイク”がパンク/ニュー・ウェイヴに影響を受け1978年に解散。マンドレイクのメンバー3人(平沢進Vo&G、田中靖美Key、田井中貞利Ds)にベーシスト(秋山勝彦)を加えP-モデルを結成、1979年に発表したのがこのデビュー・アルバム。このアルバムを聴いたり、テレビの特集で見たパンキー・テクノなバンドの前身がプログレ・バンドだったとは当時知る由もなかった。後にリリースされたマンドレイク『アンリリースド・マテリアルVol.1』(1997年)のライナーには、"70年代中期に新月、美狂乱と並び称され” ていたと書いてある。新月のアルバム(1979年リリース)は聴いていたけれど、 どこかで名前くらいは見ていたのだろうか。 平沢進はパンクのヴィジュアルから大きく影響を受けたと語っている通り、ジャケットの配色はピストルズの『Never Mind The Bollocks, Here's The Sex Pistols』を意識したような色使いでヴィヴィッドなイエローとピンクが使用されている。初回プレスはピンク・ヴィニールだった。 シングルになった「美術館で会った人だろ」を始め、スカのリズムを取り入れた「ホワイト・シガレット」や「サンシャイン・シティー」など キーボードがカラフルでパンキーなスピード感のあるナンバーが多いけれど、ドラムのリズム、フィルの多彩さと安定感はさすが前身がプログレ・バンドだけのことはある(当時はそんな聴き方してなかったけど)。その分ベースはシンプルなルート音の演奏が多い。秋山はベース初心者だったようだが「偉大なる頭脳」ではベースのフレーズが効いている。平沢の出身地近郊をタイトルにした「Kameari Pop」の電子音のダンサブルな心地よさも特筆もの。この場合の“Pop”は“Population”の略だろうか、亀有の住人を観察したセカンド・シングル。後年歌詞が変更されている。 初期の攻撃的なパンキッシュなサウンドは3枚目のアルバムからは徐々に内向的な音作りになるが、その前触れとも(マントレイクの手法に戻っていくとも)いえる「偉大なる頭脳」、「アート・ブラインド」、「ソフィスティケイテッド」も面白い。歌詞の内容は「美術館で~」や「子供

My Wandering MUSIC History Vol.19 ヒカシュー『ヒカシュー』

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1980年2月イーストワールド/東芝EMIよりリリースのアルバム。 ヒカシューで強く印象に残ったのは、メンバーが真っ赤なブレザーに白いパンツスタイルの東京オリンピック(1964年)日本選手団制服を着ていたヴィジュアル。 “金曜娯楽館”だったか“ステレオ音楽館”だったか定かではないが1980年頃のテレビ番組のニュー・ウェイヴ/テクノ・ポップ特集を見た時だ。それに巻上公一のユーモラスで不気味な表情と強い発声、コミカルなイメージがありながらも機械的でユニークな楽曲も印象に残った。バンド名の“ヒカシュー”も奇妙ですぐ覚えられる。武満徹の “悲歌” に由来するが、無意味化するためカタカナにし、無意味な “ヒカ” として様々な楽曲を演奏する、そういった意味を無化する“集” 合体であることから、 “ヒカシュー”と名付けたと巻上が語っている(ばるばら著『ナイロン100%』アスペクト社発行)。 オリンピックの制服はファースト・アルバムのジャケットでも着用している。このアルバム・ジャケットで使用されている椅子は渋谷にあったニュー・ウェイヴ・バー“ナイロン100%”(ヒカシューのメンバーも訪れ、ライヴもしている) で使われていたものと同じものらしい。だけどこのアルバム・ジャケットはイメージが散漫な気がする。裏ジャケの滝本淳助による“路上でこたつに入りインターフェースのケーブルを抜き差しするヒカシューの面々”のほうが このグループの特徴を良くとらえていると思うけど。 当時ヒカシューはドラムレスでリズム・ボックスを使用していたが、ファースト・アルバム(プロデュースは近田春夫)では、ゲスト・ミュージシャンで泉水敏郎(8 1/2、ハルメンズ)や高木利夫(近田春夫&BEEF、ジューシー・フルーツ)がドラムで参加している。ドラムスのクレジットがないのは「20世紀の終りに」、「プヨプヨ」、「炎天下」、「ヴィニール人形」、「幼虫の危機」だが、「20世紀の~」はスネアだけ入れようとかリズム・ボックスのレコーディングには苦心したようだ。 アルバムの内容はどの曲も個性的。「レトリックス&ロジックス」や「ルージング・マイ・フューチャー」はロックンロール・ベースな スピード感があるナンバー、Xレイ・スペックスを彷彿とさせる。「モデル」はクラフトワークの日本語カヴァー。怪奇大作戦なムードの「ヴィニー

My Wandering MUSIC History Vol.18 LIZARD『LIZARD』

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1979年11月ウィンドミル/キングよりリリースのアルバム。 私が日本のパンク/ニュー・ウェイヴで初めて手にしたアルバムは『東京ロッカーズ』と『東京ニュー・ウェイヴ'79』(いずれも1979年リリース)。この2枚のオムニバス・アルバムはどちらもトータルで大好きなアルバムだけれど、以前にとりあげているのでここでは取り上げない。『東京ロッカーズ』に収録されているバンドで単体として追いかけて聴き始めたのはリザードだった。Mr.カイトやミラーズは自主製作のシングルは手に入れられなかったしアルバムが出なかった(リザードのファーストがリリースされる1979年11月には、Mr.カイトもミラーズも解散していた)。フリクションは(恒松のHPを作っておいてなんだが)当時10代半ばの耳には若干敷居が高かった。リザードはアルバム『東京ロッカーズ』に起承転結、オチもあるブラック・ユーモアな「ロボット・ラブ」と、現実への失望と奪われた夢の復活を歌う「レクイエム」の2曲を収録していたが、モモヨのヴォーカルは聴き取り易く、アレンジもポップでどちらも気に入って聴いていた。 地引雄一による工場を写したコントラストの強い無機的なモノクロ(一部の光がイエローに光っている) の写真を使用したリザードのファーストアルバムのジャケットはそれだけでアートだったし(地引の実家に近い京葉コンビナートのチッソ五井工場の夜景が使われた)、帯に書かれたコピー “鋼鉄都市ヲ破壊セヨ” には、それまでの日本のロック/ポップスとは違う、という変革へのアティテュードを感じたものだ。アルバムのプロデュースは空手修行の為に来日していたときにリザードのライブ・テープ(S-Kenスタジオで録音されたもの)を聴いたストラングラーズのジャン=ジャック・バーネルで、ロンドンのエデン・スタジオで1979年7月28日から8月2日にかけてレコーディングされている。 キーボードの薄い靄のなかで始まるアルバムの1曲目「New Kids In The City」はミディアムな落ち着いたトーンのナンバーでパンク・ロック的な激しさは無いが、ジャケットのイメージとあわせて近未来的な印象を受けた。モモヨが常に意識していたアンファンテリブルな目線を持ち、裏通りで遊ぶ新しい子供達の未来に対する変化への呼びかけであり、硬直した大人たちの世界への決別の宣言である。

My Wandering MUSIC History Vol.17 THE CLASH『LONDON CALLING』

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1979年12月CBSよりリリースのアルバム。 “ Punk is attitude, not style ” とはいうもののバンドの見てくれはひとつの要素。クラッシュの「London Calling」のプロモーション・ヴィデオに魅了された人は多かったのではないか。テムズ川に面した雨のバターシー・パークでドン・レッツによって制作された「London Calling」のプロモーション・ヴィデオに映る4人のカッコいいこと。イントロの映像でギターを担いで演奏する場所へ歩いて行く姿なんかは、後の石井聰亙監督の映画『爆裂都市』の最初でバトル・ロッカーズが楽屋からステージに向かうシーンに通じるものを感じてしまう。 ミック、ポール、トッパーはスーツやロング・コート、ソフト帽、ネクタイ(昔のギャング・ムーヴィー・スタイル)で決めているが、ジョーの首にバンダナをまいてる姿もかっこいいよなぁ。それに最初の“London Calling…”とフロントの3人がマイクに向かって歌うまでのシークエンスでもう釘づけ。これに勝るプロモ・ヴィデオはなかなか無いんじゃないか。このヴィジュアルや「London Calling」のコード進行 “Em/C“の繰り返しに影響を受けた日本のバンドも多かったのでは。 アルバムとしてもアナログ盤では2枚組(日本盤は3,500円、初回プレスのみポスター付だった)で、ボリュームがあるけど全曲が捨て曲なしで魅力ある曲が並んでいる。タイトル・トラックに続くヴィンス・テイラーのロカビリー・カヴァー「Brand New Cadillac」、 ゆったりジャズ・テイストの「Jimmy Jazz」、変わってビシッとタイトな「Hateful」、映画『ルード・ボーイ』に使用されていた「Rudie Can't Fail」、ドラムから入るアコースティック・タッチの「Spanish Bombs」はミックの高音とジョーの低音ヴォーカルの掛け合い/コーラスの対比が素晴らしい曲。歌詞も“DC10で爆撃”やスペイン語のコーラスなど耳に残るフレーズが多い。ノリの良い曲で思わず体を動かしてしまう。アイリッシュ・ホーンズが活躍する「The Right Profile」、「Lost In The Supermarket」は今でも大型スーパーに行くと頭に浮かんでくる曲。ミックが歌ってるけど、歌詞はミック