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My Wandering MUSIC History Vol.102 小山卓治「FILM GIRL」

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1983年3月21日、CBSソニーからリリースのシングル。 小山卓治のデビュー7インチシングル。私はデビューアルバムを聴いた後にこのシングルを入手したと思う。アルバムに収録されていた「FILM GIRL #2」のタイトルがなんで#2なんだ?というところから探した気がする。 AB面ともデビュー前に自主制作されていた音源をマスタリングし直してリリースされた(プロモ用の自主制作盤が存在しており、自主盤のジャケットは切り貼り文字の素朴な作り)。地元の練習スタジオで録音され、小山卓治オフィシャルHPの ディスコグラフィ によると、ギターには佐橋佳幸、ベースと編曲で西村昌敏(後にフェンス・オブ・ディフェンス)が参加していると記載がある。 「FILM GIRL」は、彼女がギョーカイに染まっていく様を描いた曲(実体験らしい)で、詞とメロディが同時に出てきて、ものの5分くらいで出来上がったという。アルバム・ヴァージョンよりテンポは遅くアレンジはいかにもシンガソングライターといった感じで、購入時に聴いた時はアルバムとだいぶ違うな、ロックな感じがしないなと思った記憶がある。カップリングの「西からの便り」はオルガンの音色で始まり、ややフォーキーな印象だ。 CBSソニー盤のジャケットには煙草に火をつけるのか、暗闇を照らすためなのか、ジッポライターの火に手をかざす写真が使われている。この手は小山卓治自身の手を写したものだという。デザイン的には後のデビューアルバム『NG!』やセカンドシングルの「カーニバル」も同様だがスプリングスティーンのアルバム『ネブラスカ』のジャケット風デザインと言えるかな。 参考文献:長谷川博一編『ミスター・アウトサイド わたしがロックをえがく時』(1991年大栄出版)、ミニコミ『OYAMA TIMES VOL.1』、『同VOL.2』(1984年りぼん)

ザ・ルースターズ、貴重なシングルを、5/15一斉配信開始!

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2024年5月15日、ザ・ルースターズの7インチ・シングル8枚、12インチ・シングル2枚のAB面に加え、アルバム『KAMINARI』の初回プレスに付属したソノシートの「TRANSMISSION」が配信される。 以下、日本コロムビアの オフィシャルHP より。 配信楽曲LINEUP 1.ロージー(single ver.)/恋をしようよ 2.どうしようもない恋の唄/ヘイ・ガール(アルバム未収録) 3.ONE MORE KISS(single ver.)/DISSATISFACTION 4.GIRL FRIEND(single ver.)/WIPE OUT~TELSTAR(アルバム未収録) 5.レッツ・ロック(日本語 ver.)/ゲット・エヴリシング(日本語 ver.) 6.THE AIR/DESIRE 7.SAD SONG (WINTER VERSION)/HEART'S EDGE (REMIX) 8.SOS/Sunday/Oasis(3曲ともアルバム未収録) 9.Super mix (Stranger in Town) (single ver.)/Mega Mix(アルバム未収録) 10.TRANSMISSION(アルバム未収録) 11.BURNING BLUE/STRANGE LIFE  右上の写真はアルバム『KAMINARI』初回プレスに付属のスペシャル・ソノシート「TRANSMISSION」

Rolling Stone Japan 田家秀樹『J-POP LEGEND CAFE』特集・PANTA追悼

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大阪のFM局 FM COCOLOで放送されている音楽評論家・田家秀樹の『J-POP LEGEND CAFE』で、2024年2月に特集された「PANTA追悼」計4回が Rollin Stone Japan WEBサイト に掲載されている。 頭脳警察の相棒TOSHIとマネージャーの田原章雄、ビクターのプロデューサー高垣健、ライターの志田歩、現在の頭脳警察メンバーおおくぼけいと竹内理恵をゲストに迎えた計4回、いずれの回も興味深い話が満載で読み応えのある内容となっている。 頭脳警察、PANTAソロ、PANTA & HAL、石川セリなどへの提供曲についてやスウィート路線、再結成頭脳警察から、未来の頭脳警察へと話は及び、PANTA亡き後の頭脳警察の活動にも期待が高まる。 第1回 PANTA追悼、TOSHIとディレクターが語る頭脳警察の新作アルバム『東京オオカミ』 第2回 レジェンドプロデューサー高垣健が語る、ビクターのロックの礎を作ったPANTAの音楽 第3回 ライター志田歩が語る、PANTA & HALが追求した頭脳警察とは違うアプローチ 第4回 おおくぼけいと竹内理恵、現・頭脳警察のメンバーが語るPANTA 右上のジャケ写は2020年7月18日リリースの3曲入りEP『絶景かな』。

My Wandering MUSIC History Vol.101 小山卓治 with THE CONX『NG!』

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1983年6月22日、CBSソニーよりリリース。 キャッチコピーは「言っちまえばいいんだ。そこから、すべてが始まるんだから」だった。怖いもの知らずのタフなイメージ。熊本出身の小山卓治(当時25歳)が横浜のバンドTHE CONXとタッグを組み作り上げたデビュー・アルバム。言葉とギターを武器に都市(というか東京)を相手に格闘する怒れる若者という印象をアルバム全体から感じる。都市の路上で探しているのは報われる夢、それともハンパな夢なのか。 オープニング、フェイドインで始まる「1WEST 72 STREET NY NY 10023」。ブルースを歌うのが上手い男と上手にダンスを踊る女の出会いから2人が “ダコタ”にたどり着くまでを描いた、まるで16mmのモノクロフィルムを観ているような、それでいて歌詞に出てくるネックレスとかネオンとか壁のポスターとかって言葉の部分はカラーに着色されているようなイメージ。とても映像喚起力のある曲だ。出だしのフレーズ“あんた地下鉄の匂いがする”は、小山卓治が実際に言われた言葉だそう。男が歌うブルースはBRUCEじゃなくてBLUESの方がよかったと思うんだけど(歌詞カードにはBRUCEと書かれている)。 デビューシングルの「FILM GIRL」をTHE CONXと再録、曲名は「FILM GIRL #2」と名付けられた。サックスの響きが都会的で洗練された印象に生まれ変わった。「カーニバル」は真夜中に真実があると信じ、夜の街を彷徨う者達の歌で、2枚目のシングルになった疾走感のあるナンバー。スローなテンポの「ILLUSION」は都市生活者の見る幻影を浮かび上がらせる。  “ 綺麗な服着て綺麗な店で  おいしいものを食べてる君は  みんなとまったく同じに素敵だ ” という歌詞が秀逸。アナログ盤ではここまでがA面。 アナログ盤ではB面トップのモップス「朝まで待てない」(1967年)のカヴァー。個人的にこのアルバムで一番好きなのが、オルガンの響きとベースラインが最高なネオロカ・テイストの「HEAT OF THE NIGHT」で、真夜中の聖者を気取り、ナイフのようなハンドルさばきで246をぶっ飛ばす自称ジョンその連れヨーコ。“約束をタイヤで踏みつけ”ってフレーズが威勢いいが、“ここ”から逃げられない閉塞感も漂う。 少年犯罪というヘヴィな内容をアコースティックな響

和久井光司『ディランを歌う WAKUI sings DYLAN』

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ボブ・ディランの曲をカヴァーする日本人アーティストは数あれど、ディランのカヴァー曲でアルバムを1枚作ったのは日本人では和久井光司だけだろう。それも全12曲が和久井自身による日本語詞だ。原曲にほぼ忠実な訳詞もあれば、原曲のエッセンスやモチーフをとらえた意訳、グッと和久井自身に引き寄せた超訳と様々な日本語詞で歌われている。2007年11月28日、ソニー・ミュージック・ダイレクトからリリースされた。 お馴染み「風に吹かれて」はリズムをレゲエに、ゲスト・ヴォーカルにパンタ、あがた森魚、中山ラビ、小室等、サエキけんぞうが参加して、なかなか豪華なオープニング・ナンバー。「メンフィス・ブルース・アゲイン」は、サビの部分が “俺のステージは まだ トラックの上でいい メンフィス・ブルーズ歌う”と訳されているのが面白い。軽快な演奏にディランのメロディの良さを再認識。 超訳といえるのが「ハリケーン」で、9.11同時多発テロの衝撃、腹黒い奴らを告発、ロックンロールとオン・ザ・ロードに生きることを歌う。“ねぇ、寝よう、ねぇ”で始まる「レイ・レディ・レイ」もユニーク。 ベスト・トラックといえるのが「ブラインド・ウィリー・マクテル」。戦前から活躍していたブルースマン、ブラインド・ウィリー・マクテルから名をとったこの曲は、アルバム『インフィデル』(1983年)のアウトテイク。『ブートレグ・シリーズVol.1〜3』(1991年)でアコースティック・ヴァージョンが初めてリリース、その後『ブートレグ・シリーズVol.16 スプリングタイム・イン・ニューヨーク』(2021年)ではバンド・ヴァージョンがリリースされた。和久井はほぼ原曲に沿った日本語詞でブルースとロックを感じさせるソリッドな演奏のカヴァーに仕上げた。サックスとギターのスリリングなソロも聴きどころ。 ラストのアコースティック・ギターとヴォーカルのみで演奏される「運命のひとひねり」もしっとりとしていい。 収録曲は下記の12曲。  1. Blowin' In The Wind  2. Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again  3. The Man In Me  4. Hurricane  5. Jokerman  6. Lay, Lady, Lay  7. Mr. Tambo

SHEENA & THE ROKKETS『#1 SPECIAL EDITON』

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シーナ&ザ・ロケッツのファースト・アルバム『#1』が1979年のオリジナル仕様で鮎川誠秘蔵音源シリーズAYU-Recordsより2024年3月25日にリリースされた。 『#1』は1979年にエルボンよりオリジナルがリリースされ、1986年にヴィヴィッドからアナログ盤、1994年にCHOPからCD化、2004年にヴィヴィッドからCD再発と何度か再発されているが、これらの再発に関してはバンド側に了解なくおこなわれ、鮎川、シーナも全く知らされておらず印税も入っていないということだ。また曲順などオリジナルと異なる仕様でリリースされていたので、オリジナル・エルボン盤仕様での再発は今回が初となる。 通常盤に加えて、初回限定のスペシャル・エディションがリリースされ、スペシャル・エディションには、 下記の3枚のCD、 ・『#1』オリジナル+ボーナス・トラック(通常盤と同じ) ・『#1 MONO』モノミックス ・『御法度盤 鮎川誠の”素晴らしきロックの世界”』(アルファ時代のライブ等秘蔵音源集) それに下記の特典アイテム、 ・鮎川誠とシーナのフォトブック「#1Rokkets FIRST Recording Day」 ・エルボン盤LPミニポスター(両面デザイン) ・特製コルクコースター ・月刊鮎川誠No.5 が特製赤ショッパーに入れられていた(右上の写真)。 アルバム『#1』に関してはマスターテープからではなくシーナの生家から見つかったテスト盤をマスターとしているため若干のスクラッチ・ノイズがあるが通常聴く分にはほとんど気にならない。ボーナストラックで収録されているシングル・ヴァージョンの「涙のハイウェイ」、そのシングルB面曲「恋はノーノーノー」も盤起こしのようだ。 しかし、ようやくオリジナルの曲順・ヴァージョンで『#1』が聴けるのは非常に嬉しいし、オリジナル仕様はしっくりくる。セカンドラインなリズムの「夢見るラグドール」(サンハウスの「夢見るボロ人形」)で始まるのがいい。「レモンティ」をはさんでアルバム・ヴァージョンの「涙のハイウェイ」は、冒頭のSEが無かったり、シーナのヴォーカルや演奏も落ち着いている感じを受ける。これまでプロデューサーとしてクレジットされていた柏木省三の名前は無くなり、プロデュースは鮎川誠となっている。 SHEENA & THE ROKKETS #1 『#

VARIOUS ARTISTS『LOFT SESSIONS VOL.1 featuring female vocalists』

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先日紹介した平野悠著『 1976年の新宿ロフト 』の中でも触れていた、ロフトが立ち上げた“LIVE HOUSE LOFT SERIES”(通称ロフト・レーベル)としてビクターから1978年3月にリリースされた『ロフト・セッションズ Vol.1 フィーチャーリング・フィメール・ヴォーカリスツ』。素晴らしい夜景のジャケ、そのタイトルからロフトで行われたライヴ・セッションの模様を収めたアルバムと勘違いしそうだが、ライブ作品ではなくロフトに所縁あるミュージシャン達、6人の女性ヴォーカリストによりビクターのスタジオで録音された楽曲を収録している。プロデュースは『1976年の新宿ロフト』で平野悠と対談していた牧村憲一、エクゼクティヴ・ブロデューサーは平野悠。 1970年代の後半、“ライヴハウスから新人を発掘しよう”をテーマにロフトの平野悠が、牧村憲一をプロデューサーとして迎えレコード事業に参入、ロフト・レーベルとしては2枚目のアルバム・リリースが『ロフト・セッションズ Vol.1』だった。 ピピ&コットでデビューしソロでも作品を発表していた吉田佳子はシンガーとして数年間のキャリアがあるものの、他の5人のシンガーはこのオムニバス作品が音源デビューとなった。 ロフトで行われていた新人オーディションで選ばれた大高静子(おおたか静流)、 紀ノ国屋バンドのリード・ヴォーカル高崎昌子(1979年にアルバム『ストリート・センセイション』をリリース)、 1979年にソロ・デビュー・アルバムをリリースする上村かをる、 当時大学生だったという堤遙子、 1978年11月に牧村憲一のプロデュースによりRCAからデビュー・アルバム『ビギニング』をリリースする竹内まりや(『ロフト・セッションズ Vol.1』の表記は竹内マリヤ)。 演奏陣はセンチメンタル・シティ・ロマンス、美乃家セントラル・ステイション、ムーンライダーズ、紀ノ国屋バンド、(金子マリ&)バックスバニー、ラストショウ、ソー・バッド・レビュー等から参加、豪華なメンツとなっている。 内容は「 Light Mellow on the Web 」に詳しく。 右上のジャケ写は2016年に再発された紙ジャケCD。 “LIVE HOUSE LOFT SERIES”で1枚のシングルと4枚のLPをリリースし平野悠はレコード事業から撤退、“ロフトの金欠とレ

ましまろ「天国の扉」

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真城めぐみ、真島昌利、中森泰弘の3人組ユニット、ましまろが2016年にリリースした2枚目のシングル「遠雷」にボブ・ディランの日本語訳詞カヴァー「天国の扉」が収録されている。 原題「Knockin' On Heaven's Door」、直訳だと“天国の扉を叩く”だが、ディラン・オリジナルの邦題は「天国への扉」だった。 歌われている訳詞は真島昌利によるもので、ほぼ原詞通りだが、ディランの歌詞が2番までなのに対し真島の訳詞は3番まであり、2番の“今までやってきた事が/今夜俺を打ちのめす”と3番の“ママ いい子になれなかった/どうしてもなれなかった”という部分を追加しているようだ。ほぼ日本語に訳し切ったのが潔い。 YouTubeにはシングル「遠雷」に収録されたヴァージョンとは歌詞が違うライヴ音源がアップされている。こちらもすっきりした仕上がりでなかなか良い。 CDシングルの他収録曲は真城めぐみのヴォーカルでボサノヴァなタイトルトラック「遠雷」と、真島がブルースを唸る「海と肉まん」どちらも真島昌利の作詞作曲。

MY PLAYLIST Vol.9『THE VERY BEST OF BRAIN POLICE 1972-2024』

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これまで頭脳警察のベスト盤というと第1期頭脳警察の楽曲から選んだ『頭脳警察BEST』(1987年)や90年代再結成までのベスト『頭脳警察BEST 1972-1991』(1993年)がリリースされているけど、自分の好きな曲で2024年『東京オオカミ』までのスタジオ録音から集めてみたいと思い、CD1枚に収まる収録時間で選曲。入れたい曲がありすぎて「銃をとれ」、「ふざけるんじゃねえよ」、「悪たれ小僧」、「万物流転」といったオフィシャル・ベストに入っている代表曲や、好きなシングル「孤独という言葉の中に c/w 今日は別に変わらない」の2曲、ライヴは除外したので「赤軍兵士の詩」も入れたかったけど外れることに。 以下、私の選んだベスト・オブ・頭脳警察 1972-2024。  1. 最終指令"自爆せよ"   from『歓喜の歌』(1991年)  2. まるでランボー  from『仮面劇のヒーローを告訴しろ』(1973年)  3. 嵐が待っている  from『頭脳警察 3』(1972年)  4. コミック雑誌なんか要らない  from『乱波』(2019年)  5. ダダリオを探せ  f rom『 乱波 』(2019年)  6. 扇動  from『頭脳警察 7』(1990年)  7. 間際に放て  from シングル「時代はサーカスの象にのって」(2008年)  8. サラブレッド  from『悪たれ小僧』(1974年)  9. 指名手配された犯人は殺人許可証を持っていた  from『頭脳警察 3』(1972年) 10. あなた方の心の中に黒く色どられていない処があったらすぐに電話をして下さい  from『誕生』(1973年) 11 さようなら世界夫人よ  from『頭脳警察セカンド』(1972年) 12. 時代はサーカスの象にのって  from シングル「時代はサーカスの象にのって」(2008年) 13. いじわる猫  from『暗転』(2013年) 14. 麗しのジェット・ダンサー/メカニカル・ドールの悲劇/プリマドンナ/やけっぱちのルンバ  from『乱波』(2019年) 15. タンゴ・グラチア  from『東京オオカミ』(2024年) 16. 黒の図表  from『俺たちに明日はない』(2009年) 17. オリオン頌歌  from『歓喜の歌 』(199

THE GROOVERS「SIMPLE TWIST OF FATE」

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ザ・グルーヴァーズの「 Like A Rolling Stone 」は友部正人の日本語詞だったが、1996年リリースのマキシCDシングル「欠けた月が出ていた」のカップリング曲「Simple Twist of Fate」(邦題:運命のひとひねり)では藤井一彦による日本語詞によるボブ・ディランのカヴァーが聴ける。 ボブ・ディランの名作アルバム『血の轍』収録のアコースティックな原曲のテイストを残しながら、エレクトリックなバンドサウンドにオルガン(エマーソン北村)と女性コーラス(マリー・コクラン)を加えたアレンジ。藤井一彦が自身の訳詞で海外アーティストのカヴァーを録音、音盤化した最初の曲じゃないかな。ほぼ原詞のストーリーを踏襲したなかなか味のある日本語詞になっている。 ネットを見てたらロフトのサイトの Rooftop にグルーヴァーズ20周年時(2011年)のインタビューがあり、グルーヴァーズがトリオになって下北沢シェルターでおこなった1991年の初ワンマン・ライヴのことを藤井一彦が「ボブ・ディランの『LIKE A ROLLING STONE』やリトル・リチャードの『SLIPPIN' AND SLIDIN'』を日本語にして唄ったりしたね。英語を覚えて唄うよりも伝わるかなと思って。考えてみれば日本語吹き替え版カヴァーも長いよね、トリオでの初ライヴからずっとやってるわけだから」と語っている。 このインタビューで「フロントマンであるヴォーカリストが脱退してギタリストが唄うことになったという経緯は、先人で言えばルースターズの軌跡と重なりますよね」と聞かれて、藤井一彦は「実は、ルースターズにあやかって“GROOVERS”の最後の“S”を“Z”にするかどうか迷ったんだよ(笑)。それじゃあまりにパクリだからやめたけど」と答えているのが微笑ましい。

ユーミンストーリーズ NHKドラマ化

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以前ユーミンのトリビュート短編集『 YUMING TRIBUTE STORIES 』を紹介したが、その中から3つの短編「青春のリグレット」、「冬の終り」、「春よ、来い」がドラマ化された。1つの短編を1週月〜木曜4回で放送するようだ。個人的には小池真理子と桐野夏生の作品もドラマ化して欲しかったなぁ。 以下、ドラマの紹介・解説は NHKの「ユーミンストーリーズ」ホームページ より引用。 幅広い層に愛される松任谷由実の名曲からインスピレーションを得て、3人の小説家が生み出した3つの物語。ドラマ化をするために、映画、ドラマ、ミュージックビデオなどで活躍する3人の監督、3人の気鋭脚本家、豪華出演者たち、トップクリエイターが集結。それぞれの創造力が掛け合わされたストーリーは、郷愁の念を抱かせ、切ない気持ちへと誘い、一歩前に踏み出す勇気を与えます。一日の終わりの15分、ユーミンの名曲に思いはせながらホッと一息つけるオムニバスドラマを3週に渡ってお届けします。 第1週「青春のリグレット」(15分×4話) 3月4日(月)~7日(木) 夜10時45分 【原作】綿矢りさ 【脚本】岨手由貴子 【出演】夏帆、金子大地、片桐はいり、中島歩 ほか 【語り】ジェーン・スー 【演出】菊地健雄 <あらすじ> 結婚して4年で夫に浮気され、夫婦関係が破綻しかけている菓子(かこ) [夏帆]。まだやり直せる。そう考えた菓子は夫の浩介[中島歩]を旅行に誘うが、その旅先で、昔ある人に言われた言葉が実は重要な意味を持っていたことに気づき・・・。青春時代の記憶が後悔となって呼び起こされる、ほろ苦い恋の物語。 「青春のリグレット」収録アルバム『DA・DI・DA』(1985年) 第2週「冬の終り」(15分×4話) 3月11日(月)~14日(木) 夜10時45分 【原作】柚木麻子 【脚本】ねじめ彩木 【出演】麻生久美子、篠原ゆき子、伊東蒼、クリスタル ケイ、浅田美代子 ほか 【演出】箱田優子 <あらすじ> スーパーでパートとして働く藤田朋己[麻生久美子]は、新しく入ったパートの仙川真帆[篠原ゆき子]と全く会話が続かず気まずい思いを募らせる。しかし有線である曲が流れた時、初めて変化が訪れた。もう一度、少しだけ日常に変化を。一人の思いをくみ取ったパート仲間によって、ちょっとした大ごとに発展してしまう友情の物語。 「冬の終り」収

平野悠 著『1976年の新宿ロフト』

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2024年1月23日、星海社新書より刊行。 ライブハウスロフトの創業者、平野悠による新書が刊行された。内容は、日刊ゲンダイに掲載された連載「『ロフト』創業者が見たライブハウス50年」を大幅に加筆したもので、第2章の平野悠×牧村憲一の対談は本書の為の録りおろし。 2012年に刊行された同じく平野悠 著『 ライブハウス「ロフト」青春記 』を読んでるし、いろんなところで平野のライブハウス黎明期のエピソードを読んでるから今回の新書は読まなくてもいいかなーと思っていたが、“1976年の”と年代を特定してるし、ちょっと気になって本屋で見つけてパラパラとめくって牧村憲一の対談が面白そうかなと思って結局購入。 やはり『ライブハウス「ロフト」青春記』と似た内容で掲載写真も1976年に特化しているわけではない。連載が2020年〜2021年と新型コロナウイルス感染拡大期だったから、三密の為に世間から風当たりが強かった当時のライヴハウス経営状況についても記載がある。 この本ための録り下ろし第2章の平野悠と音楽プロデューサー牧村憲一の対談とニッポン放送が録音し後日ラジオで放送された新宿ロフトオープンセレモニー10日間(1976年10月1日〜10月10日)のメモ書き記録、その時の音源を収録しているアーティストのディスク紹介で70ページほど。これが本書の肝でそれゆえのタイトル“1976年”だと思う。二人にとっての密接な関わりの結晶といえるのが、平野が起こしたロフト・レーベルのプロデューサーとして牧村が招聘され作り上げたレコード『ロフト・セッションズ Vol.1』(1977年リリース)だろう。 その後平野・新宿ロフトはパンク・ニューウェイヴへ傾倒していく。牧村はそんな新宿ロフトを遠巻きに眺めていたがネオアコ関連のバンド、ペニー・アーケイドの名前を出しロフトの懐の深さを語っていた。

頭脳警察『東京オオカミ』

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パンタの遺作といっていいんだろうな頭脳警察のアルバム『東京オオカミ』が2024年、パンタの誕生日2月5日にBRAINPOLICE UNION/ROCKET PUNCH LLCよりリリース。プロデュースは秋間経夫。 ミュージックマガジン増刊『パンタ/頭脳警察 反骨のメッセージと叙情が交差するロック詩人の航跡』に掲載された志田歩の同アルバム解説とネット版 Rooftopに掲載されたトシ達のインタビュー を参照しながら紹介したい。 オープニング・ナンバーでタイトル・トラック「東京オオカミ」の烈しく扇動的な緊張感はどうだ。1972年の「ふざけるんじゃねえよ」、1990年の「Blood Blood Blood」を受け継ぎ比肩する楽曲。作詞はパンタと田原章雄(マネージャー)の共作で、東京の神社にオオカミの狛犬があること等から、かつて東京にオオカミが群れなし駆け抜けていた、その伝説から飛び出し、誇り高く吠え続けろ、という内容。オリジナル頭脳警察が活動していた政治の季節を感じさせるが、その連想を避けるように元は漢字だったタイトル“東京狼”をカタカナ表記にしているという。非常に印象的なギターリフはT.REX「Jewel」を思わせる。 地名の丹後をかけている「タンゴ・グラチア」。ガラシャ(Garacia)はキリスト教の洗礼を受けた明智光秀の三女・玉(たま)で、細川藤孝の息子忠興に嫁ぎ丹後の国で暮らした。後に石田三成の人質となることを拒み壮絶な最後を遂げる。辞世の句、“散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ”を歌詞に取り込み、余命宣告を受けていたパンタが歌う…。美しく気高くも切ない傑作。隠れキリシタンが口伝してきた「ぐるりよざ」(グレゴリオ聖歌)をサックスの竹内理恵が低音で奏で、タンゴのリズムに切り替わるイントロは特にスリリング。 パンタが1968年(18歳!)に作詞作曲したという「雨ざらしの文明」はザ・ビートルズの「Tomorrow Never Knows」にインスパイアされたようなサイケデリックなアレンジ。同じく1968年に作られたという「ソンムの原に」は、1989年に刊行されたパンタ詩集『ナイフ』に未発表曲として歌詞が掲載されていた(現行とは若干異なる歌詞)。コーラスのアレンジを含めGS的印象も受ける軽快なアレンジだが歌われている内容は現代まで性懲りも無く繰り広

PANTA参加ディスク5. 『BOOGIE WITH THE WIZARD〜A TRIBUTE TO MARC BOLAN & T.REX〜』

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ミュージックマガジン増刊『パンタ/頭脳警察 反骨のメッセージと叙情が交差するロック詩人の航跡』のディスコグラフィのなかで紹介しきれなかったと思われる幾つかのディスクを取り上げてみたい。 1997年11月21日、テイチクよりリリースのT.REXトリビュート盤に頭脳警察で参加している。メンバーはパンタ、トシに、G藤井一彦、D後藤升宏、チェロ坂本弘道、ヴァイオリン阿部美緒、アコーディオン田村亜紀。 頭脳警察が演奏したのは「Rip Off〜Girl」のメドレーで両曲とも『エレクトリック・ウォリアー』(1971年)収録曲。「Rip Off」はタイトなリズムにトシのコンガが効いてる。藤井一彦のギターもいいし。パンタのヴォーカルも合いの手も生き生きしてる。転調して弦が入り盛り上がっていく“I'm the King of the highway〜”というところが非常にかっこいい。メドレーでアコギのストロークで始まる「Girl」へ。静謐なアコーステイック・アレンジで弦の響きにパンタのヴォーカルが冴える。 このカヴァー「Rip Off〜Girl」は、その後頭脳警察結成40周年記念ボックス(2010年リリース)『無冠の帝王』のCD1『間違いだらけの歌』にボーナス・トラックとして収録、さらに2015年には『間違いだらけの歌』が単独リリースされて増刊『パンタ/頭脳警察 反骨のメッセージと叙情が交差するロック詩人の航跡』のディスコグラフィにも紹介されている。 だけどこの『BOOGIE WITH THE WIZARD〜A TRIBUTE TO MARC BOLAN & T.REX〜』には15曲目に収録されているボランズ・チルドレン名義の「T.REX Tribute Medley」にもパンタは参加している。 ボランズ・チルドレンによる「T.REX Tribute Medley」は、 a) 20th Century Boy/吉井和哉(ザ・イエロー・モンキー) b) Metal Guru/ROLLY c) Hot Love/本田泰章 d) Children of The Revolution/パンタ e) Dandy In The Underworld/秋間経夫(マルコシアス・バンプ) f) Telegram Sam/広石武彦 g) Get It On/本田泰章、ROLLY、広石武彦、

PANTA参加ディスク4. 『365:A TRIBUTE TO THE STALIN』

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ミュージックマガジン増刊『パンタ/頭脳警察 反骨のメッセージと叙情が交差するロック詩人の航跡』のディスコグラフィのなかで紹介しきれなかったと思われる幾つかのディスクを取り上げてみたい。 2001年1月24日にポリドールよりリリースされたザ・スターリンのトリビュート盤。まず丸尾末廣によるイラストの“STOP JAP!”なジャケットが最高。ライナーノーツはミチロウ自身によるもので“名だたる名コック、板前さんが、ボクの肉を使って、腕によりをかけて作ってくれた、鉄人(スターリン)料理”と書いている。ザ・スターリン・トリビュートだけど、ザなしのスターリン(「包丁とマンジュウ」)や遠藤ミチロウ・ソロ(「おかあさん、いい加減あなたの顔は忘れてしいまいました」)の曲も取り上げられている。 パンタはPANTA & MUSCLE POLICE名義でそのミチロウ・ソロの代表作「おかあさん、いい加減あなたの顔は忘れてしいまいました」をカヴァー。1984年リリースのカセットブック『ベトナム伝説』収録曲。マッスル・ポリス(筋肉警察)とはパンタの他に筋肉少女帯からベーシスト内田雄一郎、ギタリスト本城聡章が参加したユニット。パンタによるヴォイスと内田がベースとギター、ブログラミング、本城がギターとノイズとクレジットされている。ほぼ原曲通りのアレンジだが演奏はよりヘヴィ&ハードになっており、呟くようなパンタの声が重なる。曲の終盤にはパンタのヴォイスがダブルトラックになり厚みを増している。 愛と諧謔に溢れた暴力性、幻想と欲望のエロス、フリーキーな言葉の連続性と発展性を表現する遠藤ミチロウの歌詞…普段パンタが使用しないような言葉、表現を多く含んだこの曲に挑戦する新鮮さはあったと思うが…最後の決めゼリフとも言える“赤い色は大嫌いです!”をどうしても言えなくて“赤いトマトは大嫌いです!”と言い変えてしまってはミチロウに対するトリビュート度は増してしまっている…。まぁ『R☆E☆D』というタイトルのアルバムを作ってるくらいだかなぁパンタは…しょうがあんめぇ。 他の楽曲を紹介すると、セクシーでメランコリックな三軒茶屋'Sの「Stop Girl」、ザなしスターリン「包丁とマンジュウ」をファンキーにカヴァーした大槻ケンヂと電車、ダブな赤犬の「虫」、ストレートなカヴァーの犬神サーカス団「Stop Jap

PANTA参加ディスク3. Piggy 6 oh! oh!『DON'T LOOK BACK』

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ミュージックマガジン増刊『パンタ/頭脳警察 反骨のメッセージと叙情が交差するロック詩人の航跡』のディスコグラフィのなかで紹介しきれなかったと思われる幾つかのディスクを取り上げてみたい。 Piggy 6 oh! oh!はデザイナーの山本耀司をメインヴォーカルに、鈴木慶一、真城めぐみ、あがた森魚、パンタ、早川義夫、鹿島達也、西海孝、小島徹也が参加したユニットといっていいのかな。このアルバムのプロデュースは鈴木慶一、収録されている7曲は全てカヴァー曲。1996年3月25日、アゲント・コンシピオよりリリースされた。 パンタはザ・ドアーズ「People Are Strange」のカヴァーで山本耀司とともにヴォーカルを担当している。演奏はギターとマンドリンが西海孝、ベースはスーパーバッドの鹿島達也、ドラムが小島徹也。スローなアレンジで、ウッドベースの響きが印象的なアコースティック・テイストで仕上げている。パンタの声はドアーズの曲にあっているな。『THE COVER SPECIAL』の「The End」も良かったし。1999年リリースのCDシングル「雨の化石」に収録されていたブレヒト/クルト・ヴァイルのカヴァー「アラバマ・ソング」はドアーズもカヴァーしてたし。 他の楽曲を少し紹介すると(特に記載のない楽曲のヴォーカルは山本耀司) 「Down By The River」(ニール・ヤング)ヴォーカル:山本&鈴木慶一 「The House of The Rising Sun」(トラディショナル) 「Just Like A Woman」(ボブ・ディラン)ヴォーカル:山本&あがた森魚 「君をさらって」(早川義夫)コーラスで早川義夫が参加 「500 Miles」(ヘディ・ウエスト)コーラスでパンタ参加 「It's All Over Now Baby Blue」(ボブ・ディラン) 参加メンバーのフォト(ブックレットより)

PANTA参加ディスク2. AD-BIRDS『GUITAR TRIPPER』

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ミュージックマガジン増刊『パンタ/頭脳警察 反骨のメッセージと叙情が交差するロック詩人の航跡』のディスコグラフィのなかで紹介しきれなかったと思われる幾つかのディスクを取り上げてみたい。 1995年5月24日、ビクターエンタテイメントよりリリースの『Guitar Tripper』は、アーティスト表記がAD-BIRDSとなっているが、実際はJACK、BANZAI、NOBODY、野村義男、パンタ、ユキ・ラインハートの楽曲を収録したオムニバス盤で、G.T.ホーキンスCMサウンドトラック集Vol.1と記載があり全10曲のうち5曲がG.T.ホーキンスのCMで使用されている。 パンタは2曲で参加、5曲めに収録されている「マウンテンウィスキー〜C.W.ニコルに捧ぐ〜」は、下戸のパンタが歌うC.W.ニコルに捧ぐウイスキー讃歌。キャンピング・バックにウイスキーの小瓶をしのばせ、“山でのむ、谷でのむ、森の中でのむ”、独りになり山の上のアホになる、と溌剌とした声でパンタは歌う。アメリカンで伸びやかなスライド・ギターが印象的。 もう1曲は9曲目に収録されている「カレーと夕焼け」で、キャンプで食べるカレー讃歌。覚えがあるよなぁ、キャンプで作るカレーライス。ライスはもちろん薪を使って飯盒炊飯。“キャンプで食べるカレーは、なんて、なんてうまいんだ”とパンタはこれも力強く高らかに歌う。確かに山の中に漂うカレーの匂いを思い出す曲だよ。 2曲とも作詞・作曲はつかもとひろあき、編曲はかつてPANTA & HALのギタリストの今剛。だが、パンタのヴォーカル・イメージからするとかなり違和感がある。パンタのスウィート路線が問題作というなら、このアルバムに収録されている2曲もかなりの問題作と言えると思う。迷いなく溌剌とした力強い歌声はヴォーカリストに徹した感がある。この2曲のカップリングでCDシングルもリリースされている。 演奏しているのは、 Guitar, Pedal Steel & Flat Mandolin:今剛 Drums:山木秀夫 Bass:高水健司 Piano:難波正司 Acoustic Guitar, Keyboard, Hammond:松浦晃久 というメンバー。もちろん私は2曲とも好きだけど。 他アーティストの楽曲を少し紹介すると、JACK名義の「Fuky Campin'」

PANTA参加ディスク1.『THE COVER SPECIAL』

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ミュージックマガジン増刊『パンタ/頭脳警察 反骨のメッセージと叙情が交差するロック詩人の航跡』のディスコグラフィのなかで紹介しきれなかったと思われる幾つかのディスクを取り上げてみたい。 1988年2月6日、渋谷公会堂で行われたカヴァー・イヴェントの模様を収録したライヴ盤『THE COVER SPECIAL』(1988年4月6日リリース)。多くのミュージシャンが参加しているが、柴山俊之+SENTIMENTAL FOOL UNIT、PANTA UNIT、JOHNNY THUNDERS UNIT、THE ROCK BAND UNITという、4つのユニットでの出演となった。 PANTA UNITのメンバーは、 PANTA 中山努(Key) 中谷宏道(B) 西山嘉治(Dr) 菊池琢己(G) という当時のパンタ・バンドのメンバーに、 ムーンライダーズから鈴木慶一 有頂天からケラ、コウ ARBから石橋凌、白浜久 が参加している。 CDに収録されているのは、メインでパンタがヴォーカルをとる、 「The End〜Tomorrow Never Knows〜White Rabbit〜Somebody To Love〜The End」 という12分におよびドアーズ、ビートルズ、ジェファーソン・エアプレインのカヴァー・メドレーで、パンタ曰くサイケデリック・メドレー、「White Rabbit」のパートでヴォーカルをとっている鈴木慶一曰くベトナム戦争映画プロジェクトという付加価値もついている、という今聴いてもその完成度は高いもの。さらに「Somebody To Love」の冒頭部分にはローリング・ストーンズの「Paint It Black」のフレーズが挿入されている。「White Rabbit」で鈴木慶一がディズニー・ミッキーマウスの絵の入った分厚い本を見ながら(たぶん歌詞を挟んでいたのだろう)歌っていたのが印象的だった。 さらに有頂天からケラをヴォーカル、コウをギターに迎え丸山(美輪)明宏で知られる「メケメケ」を演奏、ARBから石橋凌とギターの白浜久を迎え「Route 66」を石橋が、「Money」で白浜久がヴォーカルをとった。 下記はCD未収録部分も含め、当日PANTA UNITが演奏した曲。 1. Revolution(The Beatles) 2. I'm A Man(Spen

MUSIC MAGAZINE 増刊『パンタ/頭脳警察 反骨のメッセージと叙情が交差するロック詩人の航跡』

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2024年1月17日、ミュージック・マガジンより刊行。 2023年7月に逝去したパンタの追悼本が刊行された。色々なところからパンタを追悼する書籍が刊行されるだろうと思っていたが、初めての追悼本だ。 パンタの音楽活動を1. 頭脳警察(1975年迄)、2. ソロとHAL(1989年のソロ迄)、3. 再結成頭脳警察〜2024年最新作で遺作『東京オオカミ』迄、と3つの章に分け、ヒストリー記事、その時代に録音された音盤の紹介、ミュージックマガジン誌に掲載されたパンタの過去記事再掲が主な内容。 ヒストリーとディスク評は新規に書かれ、第2章には『PANTA & HAL BOX』(2004年リリース)のブックレットに掲載された志田歩のテキスト「ドキュメント PANTA & HALの時代」に、2018年のPANTA & HAL EXTENDEDライヴの内容をエピローグとして加筆し収録している(これPANTA & HALの活動を軸にしつつ、この時代の日本ロックシーンをも炙り出していく力作)。 第1章には、頭脳警察が楽曲提供し演奏で参加した1974年の舞台「ロック・サド・イン・ジャパン」に関する田山三樹の記事を掲載、提供曲紹介など初めて知る内容で非常に興味深い。 写真は全体的にやや少なめと思うけど、1stソロ・アルバム『PANTAX'S WORLD』ジャケット写真の別カットや『唇にスパーク』ジャケット写真の別カット(小さくモノクロだけど)もあり。 ディスコグラフィは充実しており、一部シングルと編集盤や発掘音源、ビデオ作品のジャケ写がモノクロになっている他は、紹介されている音盤のジャケ写はほぼカラーで掲載。パンタが他アーティストへ提供した楽曲紹介も充実、こちらも紹介されているジャケ写はカラーで掲載されている。 再掲の記事では、やはり平岡正明の「パンタ、もとにもどれ」だろう。スウィート路線のアルバム『KISS』(1981年リリース)に対し“性愛が足りない”、“性的ボルテージを充電しろ”、と自説を展開し、このアルバムの楽曲を“パンタがパンタになる以前の青春歌謡”、陳腐な“渚と風と太陽と恋という何万遍も使われたデテールをつかって”、“これまでのパンタらしい要素なしに、初恋の過去に溺れて見せること”が、パンタが『KISS』でやりたかったことなのだろう、と7ペ

友部正人「DON'T THINK TWICE, IT'S ALRIGHT」

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友部正人がカヴァーしたボブ・ディランの曲というと、この曲「Don't Think Twice, It's Alright」(邦題:くよくよするなよ)が好き。1992年リリースの8cmCDシングル「Love Me Tender」(プレスリーのカヴァー)のカップリング曲。ディランのアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』収録曲の友部正人による日本語詞カヴァー。 友部正人は女性から別れた男に向けた歌詞にしているが、意訳ではあるものの原曲の持つメッセージやイメージをほぼ忠実に再現していると思う。歌詞には、幾つかの別れの理由が挙げられているが、“でも、もうあんまりくよくよしないでね”と優しい言葉をかける、切ないながらも少しほのぼのした雰囲気を併せ持つ非常に優れたディラン曲の日本語カヴァーだ。 演奏は友部の歌にギターとハーモニカ、仲井戸麗市のギターとマンドリンによるカントリー・フレーヴァーなアレンジ。 このCDシングルは「Love Me Tender」、「Don't Think Twice, It's Alright」、「Jersey Girl」の3曲の日本語詞カヴァーが収録されていて、3曲目のトム・ウェイツのカヴァーもいい。