THE GROOVERS「SIMPLE TWIST OF FATE」
ザ・グルーヴァーズの「Like A Rolling Stone」は友部正人の日本語詞だったが、1996年リリースのマキシCDシングル「欠けた月が出ていた」のカップリング曲「Simple Twist of Fate」(邦題:運命のひとひねり)では藤井一彦による日本語詞によるボブ・ディランのカヴァーが聴ける。
ボブ・ディランの名作アルバム『血の轍』収録のアコースティックな原曲のテイストを残しながら、エレクトリックなバンドサウンドにオルガン(エマーソン北村)と女性コーラス(マリー・コクラン)を加えたアレンジ。藤井一彦が自身の訳詞で海外アーティストのカヴァーを録音、音盤化した最初の曲じゃないかな。ほぼ原詞のストーリーを踏襲したなかなか味のある日本語詞になっている。
ネットを見てたらロフトのサイトのRooftopにグルーヴァーズ20周年時(2011年)のインタビューがあり、グルーヴァーズがトリオになって下北沢シェルターでおこなった1991年の初ワンマン・ライヴのことを藤井一彦が「ボブ・ディランの『LIKE A ROLLING STONE』やリトル・リチャードの『SLIPPIN' AND SLIDIN'』を日本語にして唄ったりしたね。英語を覚えて唄うよりも伝わるかなと思って。考えてみれば日本語吹き替え版カヴァーも長いよね、トリオでの初ライヴからずっとやってるわけだから」と語っている。
このインタビューで「フロントマンであるヴォーカリストが脱退してギタリストが唄うことになったという経緯は、先人で言えばルースターズの軌跡と重なりますよね」と聞かれて、藤井一彦は「実は、ルースターズにあやかって“GROOVERS”の最後の“S”を“Z”にするかどうか迷ったんだよ(笑)。それじゃあまりにパクリだからやめたけど」と答えているのが微笑ましい。