自殺『LIVE AT 屋根裏 1979』

2014年12月11日、いぬん堂からリリースのライヴ・アルバム。

オムニバス・ライヴ・アルバム『東京ニュー・ウェイヴ'79』に2曲、津島秀明監督の映画『ロッカーズ』に1曲が収録されていたのみで、1978年9月~1980年にかけて活動していたバンド、自殺の発掘音源ライヴ・アルバムがリリースされた。

今から35年前、1979年6月ライヴ・ハウス屋根裏での記録。音はプライヴェート音源に慣れている耳であればまぁ良好と言えるものだ。マスターはおそらくオーディエンス録音のカセット・テープだろうと思うが、元のテープの状態により再生が安定していない箇所がある。この録音時はヴォーカル:川上浄、ギター:栗原正明、ベース:中嶋一徳、ドラム:佐瀬浩平というメンバーで、『東京ニュー・ウェイヴ'79』の時とはベースとドラムが交代しているが、ベースの中嶋一徳は『東京ニュー・ウェイヴ'79』録音時は8 1/2のメンバーであった。『LIVE AT 屋根裏 1979』は企画:佐瀬、監修:中嶋、栗原という元メンバーの協力のもとに制作されている。ブックレットの写真は地引雄一。

アルバムはイギー・ポップの「Gimme Some Skin」の凶暴日本語カヴァーで始まる。構成が面白い「みずたまりにて」。川上浄が自殺の前に活動していたバンドは“セカンド・スーサイド”だったが、そのバンド名と同じ「セカンド・スーサイド」はヘヴィなナンバー。ベースの中嶋一徳が作詞作曲したロックンロール・ナンバーで、もともとは中嶋が在籍していた8 1/2のレパートリーだったという「3-2-1-0」はポップな曲調。

「I Got A Right」は再びイギーのカヴァー(こちらは英語詞のまま)。「I Got A Right」と「Gimme Some Skin」はイギー・ポップがアルバム『Raw Power』(1973年)とほぼ同時期に録音していた曲で当時未発表だったが、Siamese Recordsが1977年頃にこの2曲を収録したシングル盤をリリースしている。ほぼインストに近い「ファンシー」はイメージ的にはTHE WHO×NEU!な感じか。CD後半は長尺な曲が続く。「Woo-」は穏やかなさと激しさが交差する曲でベースのフレーズが印象的だ。ファンキーかつ混沌とした「ひなたぼっこ」で破壊的に終了。

初回限定でボーナスCDが付属している。内容は1979年3月Lo-Dプラザでのライヴで、曲名の表記が全くないが、カヴァー、リリカルなナンバー、ヘヴィーなナンバー、ロックンロールと多彩な7曲が収録されている。Track4~Track5の間の曲も凄いなぁ。究極の自己愛ソング…。iPodのシャッフルでかかったらヤバいな。1曲目は「3-2-1-0」、カヴァーはやはりイギー・ポップの「Raw Power」、「I Got A Right」が収録されている。Lo-Dプラザはカセット録音が出来るオーディオ機器の展示会場だったが、その通りすがり性が気に食わなかったのか川上が演奏中“帰れ”を連発し、 “なに見てんだ”、“練習の邪魔になるから皆帰って”と言うなどやや興ざめな部分はある。こちらはライン録音だからミックスは少し気になるが音はそれなりにクリア。

しかし『東京ニュー・ウェイヴ'79』を聴いた時に、“このバンド他の楽曲聴いてみたいなぁ”と思ったものだが、35年越しに願いがかなった、そんな思いを持った人も多かったのではないか。未整理で猥雑で冷ややかな熱と強力なパワーとてんこ盛りの毒。そのサウンドは確かにイギーとジェイムス・ウイリアムソンを思わせる場面がある。この混沌を整理しスタジオで録音された楽曲も聴いてみたかった、と思うのはもちろん叶わぬ事だが、デッド・ボーイズのレコードに引けを取らないものが出来たのではないか。

ライナーノートはサミー前田で『東京ニュー・ウェイヴ'79』収録曲「ゼロ」がマリア023のジュネ作と記載のあるのも興味深い。

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