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MIKE OLDFIELD「MOONLIGHT SHADOW」

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1983年5月リリースのアルバム『Crises』より。 NHKのEテレで時々放送されている「ミュージック・ポートレート」(シーズン3が9月で終わった)は、これまでの人生で影響を受けた音楽10曲を2人の出演者が持ち寄って対談するという内容の番組だが、見ていると時々 “これ聴いてみたいな” という曲が紹介される。 この「Moonlight Shadow」は今年の5月に放送された“よしもとばなな×サンディー”の回で、よしもとばななが4曲目に作家デビューのきっかけ、として選んでいた曲。これを見たとき(聴いたとき)、“あーマイク・オールドフィールドってボーカル入りのポップな曲があるんだ”と思った。マイク・オールドフィールドといえば一部が映画『エクソシスト』で使われた『チューブラー・ベルズ』しか持っていなかったので、プログレ系インストの人、というイメージがあった。余談だけどこの『チューブラー・ベルズ』を購入したのも『エクソシスト』を観てすぐじゃなく(公開年に観た)、1990年代に車の中で聴いた小林武史のFMラジオ番組でアナログ1面分(約20分)がかかっていたのを聴いて面白いなと思って購入したものだ。 良い曲だ、とは思ったものの「Moonlight Shadow」はその後、どのアルバムに収録されているのか調べることもせず、CDを購入することもなく忘れていたのだが、先日友人から譲ってもらったCDの中にアルバム『Crises』が含まれていたという非常にうれしい出来事がありこの名曲が聴けることとなった。調べてみればアルバムと同じ時期に、この曲はシングル・リリースされてイギリスではトップテンヒットになっていることから、当時どこかでこの曲を耳にしていたのかもしれないが、その頃の私の興味ではなかったのだろう。 エイトビートをしっかり刻むサイモン・フィリップスのドラムにエコーのかかったマギー・ライリーの澄んだ歌声、歯切れの良いマイク・オールドフィールドのギター、それにフェアライトCMIの響き。幻想的なムードにつつまれた3分半の非の打ち所がない完璧なポップ・ソングとも思える。 だけど歌われている内容は、銃撃により突然亡くなった彼を想い、彼に会いたい、という歌詞で、曲の(一聴して)爽やかな感じと裏腹に悲しく切ないものだ。この歌詞については1980年のジョン・レノン殺害に影響を受け作られたとも言われ

SEX PISTOLS「SOUNDCHECK at WINTERLAND, Jan. 1978」

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セックス・ピストルズ最後のライブとなった1978年1月14日サンフランシスコ・ウィンターランド公演だが、そのサウンドチェックの模様という音源がYouTubeにアップされている。 ウィンターランドは5千人の収容数というから声の響き方が気になったのだろうか、ジョニー・ロットンは“ハロー!”を連発。いつもこうやってサウンド・チェックしていたのかな。バンドは「Belsen Was A Gas」を演奏し始めるが、まるでチューニングが合っていないシドとスティーヴは演奏を中断、お互いのチューニングを合わせる(だけどいまいち合ってないし、「Pretty Vacant」の後では弾けてないシドにギターがチューニングを合わせてる気がする)。演奏が聴けるのは4曲で、 Belsen Was A Gas Pretty Vacant Problems(未完奏) Feelings(未完奏) ウィンターランドも今は無く1985年に取り壊され、跡地にはマンションが建っている。

『CROSSBEAT Special Edition THE CLASH』

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2012年12月に『THE DIG Special Edition THE CLASH featuring Joe Strummer』が出版されて間もないのだが、同じくシンコーミュージックからまたもやクラッシュのムックが2013年9月9日に出版された。 “月刊誌としては一旦休刊する”という発表が先月あった雑誌“クロスビート”のスペシャル・エディションで、9月10日に発売となる12枚組ボックスセット『サウンド・システム』のリリース直前というタイミングだ。そのボックス(結局国内盤は出なかった)は値段の割に初出の音源が少ないのと、そのうち幾つかはブートで聴いてしまっていることもあり、私は今のところ購入を見送っているのだけれど…。 まずは、そのボックスの内容解説とポール・シムノン最新インタビュー(勿論ボックスについても言及している)。その他インタビューは雑誌『ジャム』、『ミュージック・ライフ』、 『クロスビート』で過去に掲載されたクラッシュのメンバーに対するインタビューを再掲載しているが、いくつかは以前にシンコーミュージックから発売されたムックに掲載されていたものとダブりあり。 『動乱』発表後しばらくしてのインタビューだったジャム1979年7月号の水上はるこによるもの、『ロンドン・コーリング』リリース後のミュージック・ライフ1980年4月の東郷かおる子によるものの一部、ポーグス加入時のクロスビート1992年3月号の大谷英之によるもの、は2002年にジョーが亡くなってすぐに出版された『THE DIG Tribute Edition JOE STRUMMER 1952-2002』 に再掲されたものと同じ。 トッパーのインタビューはミュージック・ライフ1982年3月号の森田敏文による1982年のクラッシュ来日時のもので、2006年にシングル・ボックスがリリースされたときに出版された『THE DIG Special Edition THE CLASH』に再掲されたものと同じ。 また、ジャム1979年2月号の水上はるこによるジョー・ストラマー日本初インタビューは、2002年雑誌THE DIG No.30に再掲載されていた。 他の10本のインタビューは再掲載とはいえ、まとめて読めるのは有り難い。特にミックのBADもからめた1993年と2011年、クラッシュの思い出を語った2004年のイ

荒井由実「ひこうき雲」

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1973年11月リリースのアルバム『ひこうき雲』より。 宮崎駿の作品を観るようになったのはいつ頃からだろうか。思い返してみると、友人の下宿で読んだ宮崎駿・作のコミック『風の谷のナウシカ』が最初じゃないかな。たぶん2巻くらいは出ていたころじゃないだろうか、まとめて読んだ覚えがある。後に映画として観られる綺麗な線描とは違う、ややグロテスクにも思える画風で描かれ、登場人物達の活躍やストーリーも魅力のあるものだが、はるか過去の戦争によって汚染された世界と、汚染を浄化するために毒を吐き出す自然の治癒・再生能力(それが人間にとって脅威となった)という ベースにあるテーマに強く惹かれたものだった。または『カリオストロの城』をテレビで観たか、のどちらかだと思う。あ、『未来少年コナン』も時々見てたかな…。 アニメーション映画監督の宮崎駿が『風立ちぬ』(2013年公開)を最後に長編監督から引退すると記者会見を行った。 その『風立ちぬ』のエンディングで流れるのがユーミンの「ひこうき雲」。 ユーミンの1983年に出版された語りおろし本『ルージュの伝言』には「ひこうき雲」 を筋ジストロフィーを患った小学校の同級生が亡くなったときの事をモチーフにして作った、ということが書いてある。掃除の時に“机を持てない”と言うその男の子に“足の悪いふりをしないで”と言っていたというユーミン。その言葉は“優しさ”だと思っていたという。小学校以来会うこともなく、高校1年のときにその子は亡くなり、お葬式に呼ばれて見た成長した故人の写真、集まった同級生たちとの再会、そこで小学生のまま止まっている時間の感覚を強く意識したという。高校3年の時に近くで起きた心中事件をきっかけにこのお葬式の時の事を思い出し「ひこうき雲」が作られた。曲が作られた時期は高校3年の終わり~大学1年の初め、1年の終わりにはアルバムの録音が始まるが、キャラメル・ママのアレンジ/演奏があるにしても18歳にしてこの完成度は凄い。 もちろん出来上がった歌に具体的な病名や年齢や性別等は描かれていない。バロック/プロコル・ハルム調のアレンジにのせ、同級生の早逝という出来事を振り返り、普遍的な言葉を選び、イノセントな情景にして儚い“あの子の命”を描く。少女ならではの死への憧憬を含みつつ、現実に発した冷徹ともいえる視線と厳しい言葉は、 “何もおそれない”、“けれ

湯浅学監修・選『日本ロック&ポップス・アルバム名鑑1966-1978』

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ミュージック・マガジン社発行、レコード・コレクターズ増刊、2013年8月31日発売。 湯浅学監修・選による893枚のアルバムがほぼ発売順に掲載されている。以前やはりミュージック・マガジン社から発売された『日本のロック/フォーク・アルバム・ベスト100 1960-1989』のようなランキング本ではない。 序文で湯浅学いわく“生来の年表好き”なので“世の中に出た順番に見たい”、“音盤年表”ということだが、これはわかる。世の中に出た順番や年代は私も非常に気になる。ガイド本もわりかし見てきたので少々値も張るし、どうしようかなと購入をためらっていたのだが、この湯浅の序文を読み、こういう基準で選んでいるなら、と購入したのだが、なかなか面白い。 1966年(その前に前史として24枚が選ばれている)を起点として1978年まで、ジャケットは全てカラーで掲載されており壮観だ。ジャケの下にはオリジナル発売時のレーベルと番号が記載されているが、このあたりもCD化、未CD化といった事や、現行CD番号を掲載して入手の可否といった事にとらわれない、単純に年表的な並べ方を目指している事が徹底されていて良い。 それに200字程度の解説が掲載されている。盤によっては2枚分を使って解説。ロック・フォークに限らずポップス、というか歌謡曲・演歌系からも選盤されている。読み進めていくと“園まり”、”森進一”、“黛ジュン”、“伊東ゆかり”、“藤圭子”、“トワエモワ”、“野坂昭如”なんかのアルバムに興味が湧いてしまう今の気分。そうかと思えば、見た事も(勿論聴いたこともない)自主制作盤も載っていたり、とにかく幅広い。 1976年は英米でパンク・ムーブメントが勃興し、1977年には次々にパンク・アルバムがリリースされたが、こうして見ると日本では1978年までにアルバム単位でのパンクの出現は無かったんだなと改めて思う(もちろん影響はあったが)。むしろニュー・ウェイヴのとっかかりは見て取れる。巻末には“発掘盤”の括りがあり、そこにはガセネタのボックスやゴジラ・レコードのコンピ『ゴジラ・スペシャル・ディナー』が選出されている。 この本に紹介されている音盤で我が家にある最古の音盤はフォークルの『ハレンチ』(1967年)だった。CDだけど。2013年11月発売予定の続巻『1979-1989』も楽しみだ。