松山晋也監修・別冊ele-king『J-PUNK/NEW WAVE-革命の記憶』

2026年3月31日、Pヴァインより刊行。

映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』、いくつかレビューを読んだけど、当時を経験した世代、または東京ロッカーズ周辺を日本のロック史として知っている(聴いている)人たちは、ああしたらよかった、これが足りないみたいなレビューもあったが、当時の音楽シーンを知らない若者、世代には概ね好評のようだ。それは監督や原作者が望んでいたことでもあると思うので、なんか安心した。

その映画ではとりあげていなかった関西パンクシーン、関西NO WAVEと呼ばれたバンド・アーティスト群も1978年〜1979年には活躍し東京でもライヴをおこなっていたが、その代表的なバンドのひとつであるアーント・サリーを表紙にした、別冊ele-king『J-PUNK/NEW WAVE-革命の記憶』が出版された。

映画『ストリート・キングダム』が公開され、ここにきて書籍『ストリート・キングダム 最終版』、写真集『JIBIKI YUICHI FRICTION 1978-1985』と購買意欲を刺激される出版が続き、この他にもフリクションのシングル「Crazy Dream」や「I Can Tell」のアナログ再発もあり、さすがにシングルの音源はCD等数種持ってるので買わなかったけど。この『J-PUNK/NEW WAVE-革命の記憶』は、かつて雑誌『ロック画報』08号で吉祥寺マイナーについて回想録を書き、“何よりも「東京ロッカーズ」などといういちゃついたネーミングに嫌悪感を抱いていた”という松山晋也が監修している(『ロック画報』08号に掲載されていた記事は、松山晋也のブログに「吉祥寺マイナーのこと」として公開されている)。

地引雄一へのインタビューでは、地引が田舎の生活を撮影した写真が見られる(1枚だけど)。見たかったんだよねぇ…地引雄一が東京のロックシーンを撮影する以前の写真。福島県の農村を撮影した写真には、傾いた土壁の納屋と頰かむりをした農夫が写る。写真雑誌にも掲載されたというが他も見てみたい。インタビューはその頃の話題から最近のインディーズ・シーンとの関わりまでを語る、写真を含め16ページ。S-Kenのインタビューは写真を含め12ページで、ポジティヴな波動に満ちた内容。

小嶋さちほのインタビューは短いけど(写真を含め8ページ)、自身の音楽活動がパンクからスピリチュアル・ミュージックへと変わっていったことについて、”パンクのスタイルにこだわって生きた人は、みんなこの世を卒業されてます”という言葉が印象的。巻上公一のインタビューは写真を含む14ページ。1974年に演劇の関係でニューヨークへ行き、出来てまもないCBGBやボトムラインにいってニューヨーク・パンクのオリジネイター達を見たという話や独特のセンスとユーモアを持ったヒカシュー・ミュージックのバックボーンを興味深く読んだ。レックからベースについて教わったというノンのインタビューは、東京ロッカーズというシーンに血が通っていたことを感じさせるとてもいい内容。辛口でイマドキの客やミュージシャンを手厳しく話すレコード店フジヤマの店長・渡辺正へのインタビューは、映画にフジヤマが出てくるだけあって映画と共鳴している。インタビュアーは全て松山晋也(一部は野田努と共同)。

コラムでは大熊ワタルによる「東京の地下帝国」は、大熊自身も出演していた吉祥寺マイナーの誕生〜閉店までを描き、様々な資料から法政大学館の歴史を紐解く。石橋正二郎による「西部講堂物語」は西部講堂のしくみついて詳しく解説しているが、ビートクレイジーによる会場使用や情報宣伝の方法なども記載され興味深い。美川俊治によるジャパニーズ・ノイズ・ミュージック検証「Japanoiseの呪い」、岸野雄一による京浜兄弟社についての「川向こうの秘密結社」、工藤冬里による「地下水脈のうた」、東瀬戸悟による「ヴァニティと阿木譲」にはジャケ写はないがヴァニティ・レコーズ全カタログあり。イアン・F・マーティンによる日本のアンダーグラウンド・ミュージックを検証した「混沌と革命」は、海外のパンクロックが日本のアンダーラウンド・シーンに与えた影響、その後の進化についてわかりやすい言葉で丁寧に記している。

地引陽一の「フォトギャラリー」は19ページあり、なかでも迷彩服でベースを弾くゼルダのさちほのウォーリアーな姿がかっこいい。ディスク・ガイド的には名盤30枚をとりあげた「Timeless Masterpieces 30」。JOJO広重、田畑満、掟ポルシェ、吉田豪による「極私的名盤10」。他に林原聡太の「チラシ・ギャラリー」、主要なインディ・レーベルを紹介した剛田武による「重要レーベル・ファイル」を掲載。

林原聡太のMUNION特集号『日本のパンクロック』(1981年)の再刊があるらしい(大熊ワタル「東京の地下帝国」の注による)。

どのインタビュー、コラムも非常に読み応えのある内容で、パンク/ニューウェイヴから影響を受けた日本のアンダーグラウンド・シーンを、アーティスト側、演奏場所を提供する側、レコードを送り出す側から、と網羅的に当時の状況を知ることができる力作。



このブログの人気の投稿

私の放浪音楽史 Vol.84 1984『逆噴射家族フィルムサウンドダイジェスト』

WILKO JOHNSON「WILKO JOHNSON SPECIAL PLAYING ANALYSIS」

私の放浪音楽史 Vol.60 MOONRIDERS『MODERN MUSIC』