投稿

7月, 2019の投稿を表示しています

トレイシー・ソーン著・浅倉卓弥訳『安アパートのディスコクイーン:トレイシー・ソーン自伝』

イメージ
2019年6月12日 ele-king booksより出版。 トレイシー・ソーンの自伝が刊行された。 スターン・ボップス(Stern Bops)というバンドの紅一点リズムギタリストから始まり、マリン・ガールズ、ソロ・アーティスト、エヴリシング・バット・ザ・ガールと進んだミュージシャンとしての経歴はもちろん、プライベートな事柄も出生から家庭環境、ベン・ワットとのエピソード、子供達の事なども詳しく書かれている。それも終始シニカルでビターな筆致で、捻れたユーモアがたっぷり。少しだけかいつまんで紹介すると、 トレイシーが “自分が真にパンクの子供であった” とこの自伝に書いている通り1977年6月にトレイシーはパンクに目覚めた。いわく “危険分子を気取っては周囲を威嚇してばかりいるようなものに心底惹かれた” その時を境に、いい子ちゃんだったトレイシーは、髪の毛をスパイクカットにし、両親は我が子の部屋から聴こえてくる音楽に恐怖した。 ジャムにストラングラーズ、アドヴァーツ、ブームタウン・ラッツ、ミンク・デヴィル、そしてピストルズ、クラッシュ…。通販でクラッシュやエックス・レイ・スペックスなどの7inchシングルを手に入れた。 トレイシーはこの時の両親との軋轢をこう書いている。 “ 今から三十年余り前というこの時代、十代の若者達とその両親達との間における世代間ギャップというものは現在のそれよりよほど大きかったのだ。この隔たりは、多分この時期を頂点にしてじわじわと縮まっているはずだ。だから、今日では子供と親が一緒のレコードを好きでいたり、あるいは親子が連れ立ってグラストンベリーのロックフェスへ嬉々として足を運んだりすることは、最早ありふれた光景とさえなっている ” 今の時代、たかがパンク(ロック)を聴いたり観たりしているだけで親子の溝が深まり断絶が起こる、などということはヨーロッパやアメリカ、それに日本でも無いと思う。 パンク以後、ロックンロールやソウル、ジャズに限らず、ワールドミュージック、非音楽的なノイズ、アヴァンギャルドを含め様々な表現方法を積極的に取り入れ、異種交配しポップに昇華させる、という試みを繰り返し、作り上げ、それを聴いていた若者達が成長し親になれば、その子供が何を聴こうがほとんど許容できる範囲となるし、もはやパンクという音楽を聴いたり演奏することなどなんの反抗の