2020年10月24日 フィルム・アート社より出版。 デイヴィッド・リンチの伝記/自伝の邦訳が刊行された。ハードカバー、総ページ数704、価格4,500円(税抜)、重い…。原書は2018年にランダム・ハウス社から出ていたようだ。私は邦訳発売後、1ヶ月くらいしてから購入したものの、本の厚さと重さに恐れをなしてか、なかなか手に取らず、やっと読み始めても読み進むスピードが遅かったが、『ブルーベルベット』あたりのエピソードからは一気に読み進み、先日やっと読了。 16の章からなり、リンチ出生から、幼少時代、アートへの目覚め、絵画制作、学生時代、映画制作開始、『イレイザーヘッド』制作、その反響から『エレファントマン』制作と成功、『デューン』制作と失敗、その反省から『ブルーベルベット』制作、テレビドラマ『ツイン・ピークス』の大きな成功、その後、数々の映画制作とテレビドラマ制作、 舞台、絵画、写真、音楽、ウェブ・サイトでの作品発表等、リンチの生まれた1946年1月20日から2017年『ツイン・ピークス・ザ・リターン』放映までの71年を振り返る。 評論家・ジャーナリストのクリスティン・マッケナが関係者にインタビュー・取材をおこないリンチの足跡を記し、その後にデイヴィッド・リンチが同時期の出来事を回想する。つまり各章では、同じ時期を取材者とリンチ本人が辿ることになり読者は同時期を2度読むことになる。 もちろん視点が違うので、同じ出来事を扱ってもその感じ方や捉え方が違うから、面白いと言えば面白いのだが読者としてはややまどろこしい。 訳者の後書きに書いてある通り、その手法はリンチらしいとも言えるのだが、それで本が厚くなっているのでは…。まず客観的な視点で書かれた出来事を読み、その情報に基づいて読者が頭に描くであろう映像に、リンチが主観的に語るその手法はDVDやブルーレイで言えばコメンタリー的と言えるかも。 実現しなかった映画…『ロニー・ロケット』、『ワン・サライヴァ・バブル』、『ザ・ドリーム・オブ・ザ・ボヴァイン』をはじめ、現れては製作できず消えてゆく計画の数々、『ブルーベルベット』後にマーク・フロストと映画化をすすめていた、マリリン・モンローの死にケネディが関与していたという、モンロー最後の数ヶ月を追った『女神』、『ローラ・パーマー最後の7日間』の後に映画化を構想していたという伝説のブル