投稿

7月, 2018の投稿を表示しています

エスケン著『都市から都市、そしてまたアクロバット 回想録1971-1991』

イメージ
2018年6月河出書房新社より出版。 S-KENの回想録が刊行された。 個人的には東京ロッカーズ周辺で認識しているエスケンだが、 “エスケン”となる前、田中唯士として活動していた時期も詳しく書かれている。 ちょこっと内容を紹介すると...。 1971年、「自由通りの午後」の作曲者(歌唱はアイジョージ)としてエスケンはポーランドで行われた音楽祭“ ソボト国際音楽フェスティバル ”へ参加する。音楽祭への旅券は音楽祭終了後、どこへ寄って帰国しても良いという地球周遊券だった。エスケンは音楽祭終了後ロンドンから客として来ていた日本人と共にヒッチハイクで東欧のポーランド、チェコスロバキアへ。 厳しい国境検問所を抜けてヒッチハイクを続け西ドイツ、スイス、フランス、イギリスのロンドンへ。ここで相棒と別れエスケンは飛行機でアメリカへ渡り、ニューヨーク、サンフランシスコ、ハワイへと3ヶ月かけて東京へと戻る。 この時の体験がエスケンの “先入観を捨て古今東西の心揺さぶる音楽、アート、文学て徹底して探索する” 考え方のもとになったようだ。 日本に戻ったエスケンはレコード会社の要請でピースシティーというバンドを結成しリードヴォーカルを担当、「しぶう c/w 僕の愛した花」、「自由通りの午後 c/w バラの花のあなたに」の2枚のシングルをリリースしたが短期で解散。その後、月刊音楽雑誌『ライトミュージック』の編集者となり“世界中の音楽や文化全般を一気に吸収”する。そこでも悲喜こもごもあるわけだが、エスケンは編集者の立場を利用しアメリカ特派員という境遇を作り出し、1975年5月ロスアンゼルスへ旅立ち、ロスで暮らしながら当地の音楽状況を取材、1976年にニューヨークへ移り住む。ここではかねてからエスケンの好きだったニューヨークのラテン音楽“サルサ”に酔いしれる。 エスケンがサルサを気に入るきっかけとなったアーティストで、ライヴに何度も足を運んだウィリー・コロンの『LO MATO』(ロ・マト)というアルバムが紹介されているが、後のエスケンのファースト・アルバムのタイトル『魔都』はここから来てるんだろうなぁ…。 しばらくしてエスケンの特派員生活は終わるが、エスケンはニューヨークに留まることを決意する。興味は映画に移って連日映画館通いとなったが、CBGBへいった事をきっかけにして映画浸りの生活も終わりを告

映画・石井岳龍監督『 パンク侍、斬られて候』

イメージ
2018年6月30日、遂に公開された石井岳龍監督最新作『パンク侍、斬られて候』。 町田康の原作小説は文庫化された時に読んで、これが書ける町田康はすげぇ、やっぱり才能ある、それまでの町田康の最高傑作だ!と思ったものだ。なかなかボリュームのある小説だが、これが映画化されるとは(しかも実写で)まったく想像できなかった。 しかし、石井岳龍は2004年に小説が刊行された際に読んで映画化を考え始めたという…恐るべし。だが技術・資金面で企画は難航、頓挫する。時は流れ2015年、石井岳龍監督の『ソレダケ』を観た伊藤和弘プロデューサーの助力もあり再び企画が動き出し、映画化実現へ大きく動き出す。町田康は映画化を快諾、宮藤官九郎が脚本に起用された。最初は2時間尺の配信コンテンツとしてdTVで配信する予定であった企画は全国映画館で公開される映画となった。2016年の冬には初稿が完成し、2017年6月クランクイン、8月末にクランクアップ、ポストプロダクションを経て遂に映画は完成、2018年6月30日公開となった。 これを書いているのは7月1日だが、昨日、地元田舎の映画館で初日初回で観に行きましたよ、 えぇ、なにしろ石井・ex聰亙・岳龍の新作映画を近所で観られるんだから。 で、感想なんだけど、まだ公開されたばかりで内容細かく書くのもつまらんし、後日機会があれば…。 石井監督の持ち味のひとつであるダークな部分は抑えられ、やや脚本の宮藤官九郎側に振れているような気がするが、格闘シーンのスピード感、腹ふり党のモブシーンはさすがの迫力。個人的には納得の出来。 主人公は綾野剛ってことになっているが、登場人物はいずれもクセ者ばかり、豊川悦司(只今朝ドラ出演中)の演技には感嘆するところあり、國村隼しかり、浅野忠信しかり、そして幕暮孫兵衛こと染谷将太が素晴らしい。もう出演者誰もが快演・怪演なのだが、これまた特筆すべきは北川景子の演技で感動ものです。 主題歌はセックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」。 なぜ日本の映画のそれも時代劇にこの曲が、と気になる向きもあるとは思う。 かつて原作者の町田康(当時町蔵)が主演し、山本政志が監督した『熊楠』という映画があった。『熊楠』は資金難のため製作が中断し未完となってしまったが、町田が演じた学者、南方熊楠は、古今東西、地域・時代・学問・雑談を分け隔てなく全てを対