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My Wandering MUSIC History Vol.104 小山卓治「DOWN」

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1984年5月21日、CBSソニーからリリースのシングル。 小山卓治4枚目の7インチシングル。ジャケットの小山卓治はアルバム『インフィデル』(1983年)のディランを彷彿とさせる容貌になり、前作「傷だらけの天使」のジャケからブルーな雰囲気を更に増している(前作と同じく写真は井出情児)。まぁタイトルは「ダウン」で、落ち込んで鬱陶しい気分になる理由を歌うんだから当然である。 それでも桑田りん、佐藤めぐみの女性コーラスを加えてサウンド面では爽やかさを取り入れ、軽快なキーボードの音色にスピーディなリズムで憂鬱さを消し去ろうとしている印象はある。もっともこのシングルリリース後、小山卓治自身が体調を崩し入院してしまうのだが…。 小山卓治初のプロモーション・ビデオも作られ、そこではサングラスもかけず、髭面ではなくさっぱり、すっきりした顔立ちで歌っている。当時はなんの変哲もないビデオだな、と思ったが、今見るとシンプルでいいかな。 この曲のリリースから40年経っているが、このフレーズはずーっと変わらずこの国の音楽業界の実態を表している。   “ガキ共のためのTOP 3が  テレビから流れる  またあの曲を歌うっていうのかい  新しいだけでいいのなら  もう時間の問題だ  ほら次のやつが出番を待ってる” カップリング(B面)はオルガンの音色が印象的なアレンジの「土曜の夜の小さな反乱」で、まもなく三十路の真面目な勤め人が、やり直したいと、きまぐれに足を向けた繁華街に行ったことを後悔する内容。30歳でとうとうおっさんになる、というのも今から思うとちょっと可笑しいけど、DON'T TRUST OVER THIRTYだったからな当時は。 このシングルのレコーディングメンバーは、 ドラム:カースケ ベース:大庭珍太 E.ギター:金井タロー キーボード:ロケット・マツ パーカッション:小松崎政男 というメンバー。バッキング・ヴォーカルには桑田りん、佐藤めぐみ(A面のみ)が参加。

My Wandering MUSIC History Vol.103 小山卓治「傷だらけの天使」

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1983年12月12日、CBSソニーからリリースのシングル。 ファーストアルバムから半年で届けられた新曲は1970年代中頃にショーケンと水谷豊が出演していたテレビドラマと同タイトル。私もいろんな面で影響されたドラマ『傷だらけの天使』については 以前も書いた 。 激動の1960年代が終わり、シラケてゆく1970年代を体験した小山卓治がその1970年代を振り返った曲だという。兄弟になった俺達、半端な自由と脆い絆、そして裏切り。曲の後半で歌われる歌詞、“スクリーンの中で男がこう歌う「友よ答えは風の中にある」”は、おそらく映画『バングラディシュ・コンサート』で「風に吹かれて」を歌うディランだろう。 ダイナミックなイントロで始まり、シンプルなビートと掻き鳴らされるアコースティック・ギターのストロークが歌を支えていくが、曲の後半、“せめてこれくらいの格好が お似合いだってあてがわれた 俺達の時代ってやつに せめて最後のお別れを”と歌った後、急激にテンポアップしてフェイドアウト。 B面には「悪夢」を収録。悪夢のような現実の日々、当時一部で広がっていたハンド・イン・ハンドな盛り上がりを一蹴し、自分を欺き、貶めようとする者に抗い、望むものは傷つくことも傷つけることも恐れず、自分の手を汚さなければ掴み取れない。これまでも小山卓治が幾つかの曲で歌ってきた、誰かにあたえられたもので満足することに対する拒絶、あたえられたものじゃなく自分が真に望むものを探し掴み取ること。この曲でもそのために走り出せと歌う。フォーキーな雰囲気がありつつもロッキンなアレンジがいい。 このシングルのレコーディングはファーストアルバムから引き続き小山卓治 with THE CONXで行われており、 ドラム:付岡オサム ベース:大庭チンタ E.ギター:MOONEY E.ギター:金井タロー ピアノ&オルガン:ロケット・マツ サックス:スマイリー・松本 というメンバー。アレンジは「傷だらけの天使」がプロデューサーの前田一郎&THE CONX、「悪夢」はTHE CONXが担当した。モノクロのジャケット写真は井出情児によるもの。 下のジャケ写は作曲・大野克夫、演奏・井上堯之バンドのドラマ主題曲。1974年リリースの4曲入り7インチシングル。 小山卓治のベストをカセットに録音して作った時、この主題曲を入れクロスフェードで小山卓治

ロック・アーティストの詩集 国内編

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ロック・アーティストの詩集、国内アーティスト編。 『パンタ詩集 ナイフ』(JICC出版局刊・1989年初版) 私にとっては待望のと言ってもよかったかな。パンタが紡ぎ出すポリティカルでロマンチック、アヴァンギャルドでシュールでユニークでラディカル、時に暴走、時に不可解、さらに優しくて聡明な歌詞。えぇ新品で買いましたよ…この詩集は。頭脳警察「銃をとれ!」からソロ・アルバム『クリスタル・ナハト』迄、1970〜1987年の楽曲から、当時未発表の20編を含むパンタ自身が選んだ85編を収録した詩集。ヒロ伊藤と鋤田正義による写真ページ、吉原聖洋による詩の解説と年譜あり。充実した内容だ。帯の裏に書かれた紹介文は橋本治によるもの。 『遠藤ミチロウ全歌詞集 お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』(ソフトマジック刊・2001年初版) ザ・スターリン初の音盤、1980年のソノシート「電動こけし」から2000年の「21世紀のニューじじい」(間寛平への提供曲・ミチロウのヴァージョンはアルバム『AIPA』に収録)まで195編の歌詞を収録している。セルフ・カヴァー9曲入りCD付属。阪本順治(映画監督)と宮藤官九郎による解説あり。 『供花』(思潮社刊・1992年初版) 町田町蔵初の詩集。5章に分かれており134編の詩を収録、5章はINUのアルバム『メシ喰うな!』全曲とオムニバス『レベル・ストリート』収録の「ボリス・ヴィアンの憤り」、カセットブック『どてらい男又(やつ)ら』からタイトル曲を除く町蔵作詞の全曲、アルバム『ほな、どないせぇゆぅね』全曲の歌詞を収録している。1〜4章に収録されている詩の書かれ方として“時に書き下ろしを、時に今までのアルバムやライブの歌詞に手を加えたものを、年代順ではなく意識の流れに沿って書いていった”と記載がある。カセットブックのタイトル曲「どてらい男又(やつ)ら」は手を加えられ書き下ろしの詩となり1章に収められている。いくつかの詩の部分は後にリリースされた楽曲の歌詞になっている(「頭腐」、「出戻り春子」、「パワー トゥ ザ ピープル」)。大座談会と年譜、バンドメンバーの一覧あり。 『それから 江戸アケミ詩集』(思潮社刊・1999年新装第一刷) 初版は1993年に刊行。「試作」と題された6編の詩を含む49編が収められている。アケミの発言を文字起こしして掲載している