ロック・アーティストの詩集 国内編
ロック・アーティストの詩集、国内アーティスト編。
『パンタ詩集 ナイフ』(JICC出版局刊・1989年初版)
私にとっては待望のと言ってもよかったかな。パンタが紡ぎ出すポリティカルでロマンチック、アヴァンギャルドでシュールでユニークでラディカル、時に暴走、時に不可解、さらに優しくて聡明な歌詞。えぇ新品で買いましたよ…この詩集は。頭脳警察「銃をとれ!」からソロ・アルバム『クリスタル・ナハト』迄、1970〜1987年の楽曲から、当時未発表の20編を含むパンタ自身が選んだ85編を収録した詩集。ヒロ伊藤と鋤田正義による写真ページ、吉原聖洋による詩の解説と年譜あり。充実した内容だ。帯の裏に書かれた紹介文は橋本治によるもの。
ザ・スターリン初の音盤、1980年のソノシート「電動こけし」から2000年の「21世紀のニューじじい」(間寛平への提供曲・ミチロウのヴァージョンはアルバム『AIPA』に収録)まで195編の歌詞を収録している。セルフ・カヴァー9曲入りCD付属。阪本順治(映画監督)と宮藤官九郎による解説あり。
『供花』(思潮社刊・1992年初版)
町田町蔵初の詩集。5章に分かれており134編の詩を収録、5章はINUのアルバム『メシ喰うな!』全曲とオムニバス『レベル・ストリート』収録の「ボリス・ヴィアンの憤り」、カセットブック『どてらい男又(やつ)ら』からタイトル曲を除く町蔵作詞の全曲、アルバム『ほな、どないせぇゆぅね』全曲の歌詞を収録している。1〜4章に収録されている詩の書かれ方として“時に書き下ろしを、時に今までのアルバムやライブの歌詞に手を加えたものを、年代順ではなく意識の流れに沿って書いていった”と記載がある。カセットブックのタイトル曲「どてらい男又(やつ)ら」は手を加えられ書き下ろしの詩となり1章に収められている。いくつかの詩の部分は後にリリースされた楽曲の歌詞になっている(「頭腐」、「出戻り春子」、「パワー トゥ ザ ピープル」)。大座談会と年譜、バンドメンバーの一覧あり。
『それから 江戸アケミ詩集』(思潮社刊・1999年新装第一刷)
初版は1993年に刊行。「試作」と題された6編の詩を含む49編が収められている。アケミの発言を文字起こしして掲載している。略歴、ジャケ写なしのディスコグラフィあり。スキャンダラスな話題先行のイメージで避けていたじゃがたらだったが、陣野俊史著『じゃがたら』を読んで遅ればせながらその魅力に目覚め、じゃがたらのアルバムを集めていた頃に中古で買ったもの。
『エリーゼのために 忌野清志郎詩集』(彌生書房・1983年初版)
音盤化されていない詩を含む初期〜1982年のアルバム『BEAT POPS』まで64編を選んで収録した詩集。1〜4章に分かれており、1章はやや官能的、2章はロマンティック、3章は不遜で反抗的、4章はロックンロールな内容の歌詞で分けられているような気がする。表紙画は片山健によるもの。和服を着た清志郎の肖像写真(芥川龍之介を模したらしい)はおおくぼひさこが撮影した。
『荒涼天使たちの夜 美咲歌芽句(ジーン)詩集』(思潮社刊・2007年初版)
ミスター・カイトのヴォーカリストとして1978年〜1979年にかけて東京のロック・シーンで活躍していたジーン改め美咲歌芽句(みさかめぐ、本名は三坂恵美子)の詩集で49編の詩が収録されている。2001年にキャプテン・トリップからリリースされたミスター・カイトのライヴCD『ライヴ・イノセント』収録曲で自身が作詞した歌詞を第2章に掲載しているが、CDの「Anjuna Beach」は「Anjuna Beach 2」と題されている。そのCD制作時に自宅の押入れの段ボール箱から1970年代の初めから書きためていた詩が見つかり詩集として出版する計画が始まったという。1、3、4章にはその見つかった詩と2000年代以降に書かれた詩が掲載されているようだ。そして“地上に墜落した日”と題された経歴(15ページ分)には少女時代〜詩集刊行時までの出来事と想いが綴られている。私は詩集発売後しばらくして美咲歌芽句のHPから購入したが、そこから購入すると当時ラピスと活動していた荒涼天使というバンドのスタジオ・セッションを収録したCD-R付きだった。