THE SMITHEREENS『ESPECIALLY FOR YOU』

1986年、アルファ/エニグマよりリリース (JPN)のアルバム。
スミザリーンズはアメリカ・ニュージャージーで小学校からの友人だったギターのジム・バジャックと ドラムのデニス・ディケン、ベースのマイク・メサロスが、地元新聞にボーカリストを求む広告を出したところ、 パット・ディニジオが加わり1970年代の終りに結成された。 ニュージャージーやニューヨークでクラブ・サーキットを続けながら、1980年10月にはD-Tone Recordsから 1枚目のEP「Girl About Town」をリリースした。

1983年にはLittle Ricky Recordから5曲入りミニ・アルバム『Beauty And Sadness』をリリースするが、 アメリカでは大きなブレイクには至らず、ミニ・アルバムがヒットしたスカンジナビアへ行ったり、 オーティス・ブラックウェルのツアーにバックバンドとして同行したり、 共にレコーディングをしていた (『Beauty And Sadness』は1988年にEnigma Recoredsより4曲入りミニ・アルバムとして再発されている)。

1985年スミザリーンズはエニグマ・レコードにデモ・テープを送り契約を結ぶ。 2週間でレコーディングされ、ほぼ1年間ビルボードのトップ100以内に留まり、 ゴールド・ディスク獲得というヒットとなったファースト・アルバムが 『Especially For You』だ。

ボトムを強調したイントロから始まる「Strangers When We Meet」。 パットが同名の映画からインスパイアされて作ったと言うこの曲は、ソリッドなギター、 アコースティック・ギター、マーシャル・クレンショウのオルガンにのって歌う パットのボーカルとメロディが新鮮。ミディアムなテンポで恋心を打ち明ける「Listen To Me Girl」、 ガレージな曲調の「Groovy Tuesday」と続く。

アコーディオンが印象的に使われている「Cigarette」。 アコーディオンを弾くケニー・マーゴリスは、Mink Devilleの「Coup de Grace」などに参加していた。 恋人と過ごす時間を、短くなっていく煙草の赤い火と煙りに見立てた歌詞はロマンチック。
ロイ・オービソンの「Pretty Woman」をちょっぴり思せるイントロの「Time And Time Again」は スミザリーンズの初期から演奏されていた曲で、何度も何度も新しい恋をくり返す男を描いたR&Rナンバー。 ブリティシュな肌触りのサウンドだ。

パットが飛行機の中でアイデアが浮かんだという「Behind The Wall of Sleep」はドライブ感がたまらない。 ”真っ黒に着飾り、ビル・ワイマンの様に立ってベースを弾く女性の為なら自分の魂さえ失ってもいい” といった内容のエキサイティングなナンバー。

かわって、下積み時代にパットのアルバイト先の上司だったというスザンヌ・ヴェガとのデュエットが聴ける 「In A Lonely Place」。”きみに出会った時に僕は生まれ、きみとの愛に生き、きみとの別れによって僕は死んだ” というフレーズが切ないメロディと共に胸を打つ。アコースティック・ギターとビブラフォンが印象的。 ドラキュラ映画『血と薔薇』からインスパイアされたという「Blood And Roses」はミニ・アルバム収録曲の再録。 50'sテイストな「Crazy Mixed-Up Kid」、アナログ盤のラストはバラード「Alone At Midnight」。 CDにはボーナストラックの「White Castle Blues」を収録。

スミザリーンズはこれまでに6枚のオリジナル・アルバムをリリース、 このファースト・アルバムようなヒットこそないが、地道な活動を続けている。 レアトラック集、ライブ盤もリリースしている。 特にファースト・アルバムリリース直後1986年10月のライブを収めたライブ 『The Smithereens Live』(1988年)は6曲入りでThe Whoのカバー「The Seeker」も聴ける文句無しのカッコよさで必聴。 

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