PANTA「氷川丸」
2001年の初め頃から歌われていた曲だが、このライブ盤が(待望の)初出となった。
氷川丸は現在、横浜港山下公園に係留され観光スポットとなっているが、1930年に建造された貨客船で、 太平洋戦争が始まってから傷病者を運ぶ病院船として海軍に徴用された。
白く塗られた船体、赤十字の印し、それを照らすライト。あふれる負傷者、病人。あわただしく動き回る軍医、看護人達。休む間もない手当て、手術。 手当ての甲斐なく亡くなった者を弔うために歌われる「海ゆかば」。戦時下で保護された病院船とはいえ常につきまとう危険。 そして、なにもかもを包む、おだやかな深い海。
そんな光景が浮かぶ歌詞に少しのユーモアを加え、速い2拍子にのせて歌われる。 これだけ強烈にイメージを喚起させる歌詞は久しぶりだ。 ギターのストロークが船のスピードを感じさせ、躍動的とも思えるが、ヴァイオリンとピアノの旋律が絡み合う悲しくも美しいアレンジ。
今も海が見つめているのは、繰り返される未来と追加されるだけの過去なのか。