PANTA & HAL「IDカード」
ウラワロックンロールセンターが、主催したライブ音源をCDリリースしているシリーズから、 PANTA & HALの最後期のライブ音源が発売された。 HALはこのライブのあと4ヶ月も経たず解散してしまう。 PA卓からのライン録音ということで音質は良い。ジャケットは何とかならなかったのか。 もう少しデザインされたものにして欲しかった。
このCDのリリースがアナウンスされた時、最大の期待は未発表(一度だけFMでデモ音源が放送された)の 「メルティング・ポット」だった。 このライブでもキリキリした緊張感はあるものの、ギターソロ後の演奏ミスは非常に残念。
これまでの曲を再アレンジして“今”の自分達のカラーを出す、 もしくは同じ演奏に飽きてきて変化をつけるというのは続けていくバンドの常かも知れないが、 このアルバムに収録されている「マーラーズ・パーラー‘80」の考えすぎというか、 こねくり回されたアレンジにはHALというバンドの末期的なものを感じてしまう。
やはりアレンジし直された「IDカード」はアルバム『1980X』に収録されていた曲で、スタジオ・バージョンでは無機的でズッシリ重い ナンバーだったが、ここでは無機的に感じられるけれど、焦燥感のあるアレンジになっている。
さりげないイントロのギターの入り方から、“秒刻みに数を~”の所からのパンキーなアレンジ、 “とりすました笑いは~”の部分のタメたリズムとギターのカッティングはスリリングだ。
『1980X』では地味に感じられた曲が、このアルバムの中ではベスト・トラック。
便利さと引き換えにIDとPASSワードがそれこそ秒刻みに増えているネットの現在を考えると、この歌詞は非常に面白い。