LOU REED「METAL MACHINE MUSIC 1~4」
ノイズ系というのはほとんど聴いていないが、たまにガイド本に載っているCDを購入することはある。 内容が唸り声、叫び声とか、楽器じゃなくて日用品を鳴らしてとか、だと自分にとって苦手なのでCDは手元に残っていない。
それでも、これはどんな内容だろうかという興味や、怖いもの見たさというのはあるもので、 ルー・リードのアルバム『メタル・マシーン・ミュージック』も聴いてみたいと思いつつCDショップで手には取ってみるが、レジには持っていかないという位置づけのものだった。
少し前にルー・リードのCDアルバムが紙ジャケット仕様で再発された。そうするとそれまで持っていたプラケース仕様のCDを手放すという人もいる。私の友人もこの買換えをし、ルー・リードのプラケース仕様をまとめて安く譲ってくれたなかにこのアルバムが入っていた。
恐る恐る(そこまで大袈裟じゃないけど)CDをプレーヤーにセットする。
流れてきたのはエレクトリックな音の洪水だ。
ディストーション、フィードバック、トレモロ、反復、リバーブ.…。ギターとエフェクターのみ(シンセサイザーは使っていない)の音源を加工、 幾重にも重なった音が、ふと旋律を生み出したり、人や動物の声に聴こえたり、爆発音に聴こえたりする。全曲インストルメンタル。ヘッドフォンで大音量にして聴くと、そのサウンドは頭の中に直接響いてくる。
『トランスフォーマー』、『ベルリン』、『ロックンロール・アニマル』と傑作を生み出し、 『サリー・キャント・ダンス』が少し不評(私的には結構いい)だったが、ライブ盤を挟んでリリースしたアルバムがこの2枚組、片面に1曲ずつ全4曲、合計1時間余りのサイケデリック電子音楽では、リアルタイムに聴いていた人には、確かに物凄く不評、悪評だったのは理解できる。金返せと言いたくなるであろう。
アルバムの注釈でルー・リードは、これが今表現したい事であり「私が目前にしている現実の音像化」、「私の頭の一部から他人への贈り物」と書いているが、「どうしてもこの作品を好きになれなくてもあなた方を責める気はない」とも付け加えている。
あまりの不評、非難、セールスの不振によりルー自身このアルバムを出したのは冗談だったと語った、と真しやかに言われている。このアルバムを聴く前は、言い訳を言ってもおかしくないだろう、と私は思っていたが、聴いた後ではそんな事はないと思っている。むしろ、このアルバムはポップでさえある。
それは「丁寧に、知的に、交感的に、そして緻密に計算され尽くした私の構想」(アルバムの注釈)により制作されたアルバムだからであり、 ルー・リードの先見性の証でもある。
例えば石井聰亙監督映画『シャッフル』のエンディングのサウンドトラックが好きな人(うぅ、数少なそう…)にはお勧め。