OMNIBUS a Go Go Vol.38『ARE YOU JAP?!』

アナーキー~THE ROCK BANDのギタリスト藤沼伸一がオーガナイズ、多彩なゲストを迎えたコラボレーション・アルバム。藤沼は全作曲(「国旗はためく下に」を除く)を担当、及び全曲でギターを弾いている。リリースは2002年5月。

前年2001年9月のアメリカ同時多発テロをきっかけとして同年10月にはアメリカがアフガニスタンでタリバンと戦争を始め、日本の海上自衛隊も米軍艦船などへ給油活動をするなかでのリリースとなった。その為か、もともとのコンセプトとしてあったのか、参加したアーティスト達の作詞には戦争・日本といったモチーフが根底にあるようで、それは藤沼がボーカルをとり、カバーしている泉谷しげるの「国旗はためく下に」から放射されたメッセージを拡大したものと言える。

NIRVANA「Smells Like Teen Spirit」を思わせるアレンジの泉谷しげる作詞・ボーカル「ワイルドピース」、レゲエ・ダブ~爆音チューンで、後半の “新宿に現身のマリアありて~” の語りが面白い町田康作詞・ボーカルの「花はどこに咲くの?」、柴山俊之作詞・ボーカルの「ありがたや節」といったところが興味深いが、なんといっても忌野清志郎が作詞・ボーカルを担当した「ジライヤ」だ。

曲名は忍者の“自来也”というより歌詞に出てくる“地雷やミサイル”からだろう。RC時代に清志郎がカバーした「明日なき世界」(高石ともや版)に匹敵するプロテストソングだと思う。正直でユニークなバンドマンとしての物言い。
リビングルームで独りテレビ画面を見ながら思う事、もしくはファミレス、居酒屋や職場で、友人や同僚と話しているような内容の歌詞で歌は始まる。

“この戦争はいつまで続くんだろう
 多少の犠牲はやむをえないが
 俺は犠牲者にはなりたくない”

そしてこの現状に対して“音楽や歌は力を失くし、メッセージソングは誰にも歌えない”と嘆いたあと、 こう歌う。

“だから歌おう甘ったるいラブ・ソングを
 世界の平和の夢と錯覚しながら
 今夜歌おう甘ったるいラブ・ソングを
 地雷やミサイルの音をかき消すほどに”

清志郎自身もそれこそ数多くのラブソングがあるが、ラブソング(=歌・音楽)の非力さと潜在的な対抗力の可能性についてあらためて世に問うた曲だ。さらにアフガニスタンの戦争ではピンポイント爆撃の誤爆による犠牲も多く報道されていた事にも思いを馳せ、 “まちがって殺された” まだ “恋も知らないあの子” にラブ・ソングを捧げるのだ。
ミュージック・マガジン社から2011年に出版された『プロテスト・ソング・クロニクル』に是非とも掲載してほしかった。

この他RIZEの大和EMCEE(Jesse)、ロリータ18号の石坂マサヨ、窪洋介、村上ポンタ秀一などが参加した曲や、アベフトシ、仲井戸麗市、藤井一彦ら豪華ギタリスト共演のインスト「VALE TUDO」、収録曲をリミックスした「VALE TUDU MIX」を収録。

“この戦争はいつまで続くんだろう”と清志郎が歌ったアフガン紛争は今年2011年で10年が経過する。日本で、アメリカで、アフガニスタンで、世界のどこかで誰かが歌うラブソングは地雷やミサイルの音をかき消すほど大きくはならなかった。

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