OMNIBUS a Go Go Vol.66『A FACTORY SAMPLE』

設立されたばかりのファクトリー・レコードから1978年12月(1979年1月という説もあり)にリリースされた。33回転のアナログ・7インチ2枚組でプレス数は5,000枚だった。 ジャケット・デザインはピーター・サヴィルでヒート・シール・プラスチック(薄いビニール・コーティングのような)仕様の見開きジャケット。 5枚のステッカーが付属していた。 4組のアーティストが1面ずつに収録されている。
マンチェスターのグラナダ・テレビで音楽番組のホスト等をしていたトニー・ウィルソン、
DJで後にジョイ・ディヴィジョンのマネージャーとなるロブ・グレットン、
ア・サーティン・レシオのマネージャーのアラン・エラスマス、
バズコックスやスローター・アンド・ザ・ドッグス等のシングルをプロデュースしていた、マーティン“ゼロ”ハネット、
デザインをさせて欲しいとウィルソンを訪ねてきた若きデザイナー、ピーター・サヴィル、
この5人によってマンチェスターのラッセル・クラブに“ファクトリー”を1978年5月にオープン。 ウィルソンとエラスムスが共同マネージャとなっていたドゥルッティ・コラムが最初にギグをおこなった。
エニグマからシングルをリリース(1978年6月)後、地元マンチェスターのファクトリーと契約したジョイ・ディヴィジョンは 後のニュー・ウェイブ・サウンドのベーシックとなるようなサウンドを持った「Digital」と、より音響的な「Glass」の2曲を収録。 ワルシャワ時代の直線的なイメージから奥行き/陰影を持ったサウンドへの変化が感じ取れる。
スペイン内戦時にカタロニア出身のアナキストが率いた小隊の名前からグループ名をとったドゥルッティ・コラムは、 まだバンドスタイルでヴィニ・ライリーのギターの他、コリン・シャープ(Vo)、フィル・レインフォード(Vo)、 スティーブン・ホプキンス(Key)、デイヴ・ロウボザム(G)、 後にシンプリー・レッドに参加するクリス・ジョイス(Dr)とトニー・バウワース(B)がクレジットされている。 レゲエ・スタイルのリズムとヴィニの様々なサウンドを奏でるエッジーなギターのマッチングが素晴らしい「No Communication」、 語り調のボーカルとディレイ・ギターが断片的なリズムにのる「Thin Ice(Detail)」の2曲を収録。
コメディアンでもあるジョン・ドウイは「Acne」、「Idiot」、「Hitler's Liver」の3曲を収録。シアトリカルなボーカル・スタイルを聴かせてくれる。 ファクトリー・レコードからもう1枚シングルリリースがあり、またファクトリーでのライブにも参加している。
シェフィールド出身で既にラフトレードから4曲入シングルをリリースしていたキャバレー・ヴォルテールは、 クリス・ワトソン、スティーブン・マリンダー、リチャード・H・カークの3人によって操作された様々なエレクトロニクスから生み出される 実験的な曲を収録している。 ドイツ赤軍を意味する不気味なナンバー「Baader Meinhof」と、このオムニバスの為に作ったというミニマルな「Sex In Secret」の2曲。
『A Factory Sample』から始まったファクトリー・レコードは14年後の1992年に倒産、 また、ファクトリーの創始者達、マーティン・ハネットは1991年に、ロブ・グレットンは1999年に、トニー・ウィルソンは2007年に亡くなっているが、 ファクトリーの歴史は伝説となり、作品は今も影響を与え続けている。

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