OMNIBUS a Go Go Vol.88『LOVE THE REASON』
ザ・ジャムを人気の頂点で解散し、新たにスタイル・カウンシルを1983年にスタートさせて、その音楽的変化にリスナー達は驚き、当惑もしたが、ポール・ウェラーが1981年にスタートしたレスポンド・レコードも様々な音楽性を持ったレーベルだった。80年代のモータウンを目指し、若さ、強さ、美しさ、誠実さを理想に、金儲け主義のミュージック・ビジネスに反旗を掲げ、1985年に閉鎖するまで数々のレコードをリリース、積極的に新人を紹介した。
このコンピレーションは1983年にリリースされ、レスポンドの歌姫トレイシーを始め、クエスチョンズ、エイ・クレイズ等を収録したレーベル・ショーケース的な内容。ジャケット裏には “言いたい事があり、創りたい音楽を知っている” 事が音楽に携わる理由だ、その理由を愛す、とポール・ウェラーは記している。この潔癖な理想主義がレーベルの終焉を招いたとも考えられるが…。
ポール・ウェラーがプロデュースしたクエスチョンズのファンキーな「Work'n' Play」で始まり、エイ・クレイズの7インチB面曲のポップでラブリーな「She Is So」、トレイシーのキュートなセカンド・シングル曲「Give It Some Emotion」と冒頭の3曲は最高の流れ。N. D. Moffattのややジャマイカンな香りもするしゃがれたアコースティック反骨ナンバー「Peace, Love And Harmony」を挟んで、「Give It Some Emotion」からの繋がりも感じさせるシスター・スレッジのヒット曲カバー、トレイシー・アンド・クエスチョンズ名義の「Mama Never Told Me」、スタカンの曲群にも匹敵するようなクエスチョンズの超名曲「Building On A Strong Foundation」。
ウェラーが曲作りに参加したThe Main T-KOの「Fickle Public Speakin'(Remix) 」、エイ・クレイズの最高のポップ・チューンだけどシニカルな「Keeping The Boys Amused」、トニー・バークがダイレクション解散後に結成したビッグ・サウンド・オーソリティは、なかなかハードな内容の歌詞をソウルフルな曲にのせた「History of The World」。ビッグ・サウンド・オーソリティーがレスポンドに残したのはこの1曲のみだった。レスポンドのボーカリスト募集に応募し、やがてレーベルの歌姫となったトレイシーの1983年のデビュー曲「The House That Jack Built」。 トレイシーはスタイル・カウンシルのデビュー・シングル(リリースはほぼ同時期)にバック・ボーカルで参加している (更に遡るとザ・ジャムのラスト・シングルにもバック・ボーカルで参加していた)。アナログ盤のラストはクエスチョンズ「Give It Up Girl」。
ここまでがオリジナル・アナログ収録曲だが、1996年に日本のトラットリアが再発したCDにはボーナス・トラックが追加された。ドリー・ミクスチャーのレスポンドからの2枚目のシングル曲でキャプテン・センシブルがプロデュースした「Everything And More」は、インディー感のあるギター・ポップ。アレンジも凝ってて良い曲だ。アーバン・シェイクダウンのシングル両面「The Big Wolf」と「Rap The Wolf」はレゲエ/ダブ/トースティングで、プロデュースはマーティン・ハネット。トレイシーのシングル「Give It Some Emotion」のB面曲でウェラーが曲作りに参加した「Boy Hairdresser」、更にトレイシーの未発表曲でコンテンポラリーな「Italian Girl」、トレイシー・ヤング名義になってポリドールからリリースしたシングルのB面曲「Find It In Your Nature」を追加収録した。