OMNIBUS a Go Go Vol.91『STIFF, STIFFER, STIFFEST A Stiff Records Collection』
ダムドやエルビス・コステロ、イアン・デューリーといった有名どころが収録されていないが、スティッフが最初にリリースしたニック・ロウのシングルB面曲「Heart of The City」から始まり、ピンク・フェアリーズ「Between The Lines」、ルーガレイターのシングルB面曲「Cincinnati Fatback」、タイラ・ギャング「Styrofoam」、ルー・ルイスのファースト・ソロ・シングル曲「Boogie In The Street」と、スティッフ初期5枚のシングル(カタログNo.はBUY1~5)からの楽曲が収められているし、パブ系のルーモア「Emotional Traffic」、レックレス・エリック「Whole Wide World」、ピンク・フェアリーズのラリー・ウォリスがプロデュースしたメンバーズのロックンロール・ナンバー「Solitary Confinement」、パンク系ではアドヴァーツの代表曲といってもいい「One Chord Wonder」やハードコアというかステージでは衝撃的でショー的な要素も多く取り入れていたプラズマティックスの「Butcher Baby」、ピストルズの映画『グレート・ロックン・ロール・スウィンドル』に参加していたテンポール・チューダーの全英ヒット曲「Sword of A Thousand Men」、それにアメリカのスカ系バンドのアンタッチャブルズ「Free Yourself」も入ってる。
ニュー・ウェイヴ系でザクザク・ギターがかっこいいモーター・ボーイズ・モーター「Drive Friendly」や デパートメントSの「Going Left Right」。この他にもカーラ・トーマスのソウル・ナンバーをレイチェル・スウィートがキュートにカバーした「B-A-B-Y」、コーラス・グループのミント・ジュレプスは1985年のアルバムから「Jimmy Mack」のライブと、本当に色々なグッド・ミュージックをリリースしていたのが分かる選曲で全21曲が収録されている。
レスポンドのトレイシー、コンパクトのマリ・ウィルソンと1980年代中期のインディペンデント・レーベル看板娘を紹介したけれど、スティッフ・レコードのトレイシー・ウルマンを忘れてはいけない。このコンピに収録されているのは、ジャッキー・デシャノン作、アーマ・トーマスの「Breakaway」のカバーだが、このトレイシー・ウルマンのデビュー曲を聴いたときにはクラッシュの「I Fought The Law」を聴いた時に匹敵するインパクトを感じたものだ。
昔のソウル、ポップス、ロックンロールをタイトでパワフル、スピードアップし、当時の最新型アレンジで演奏する、カバー曲の面白さを伝えてくれた曲でもある。トレイシー・ウルマンはスティッフから幾つかのシングルと2枚のアルバムをリリースしたのみだが、その充実した内容の良さは今も変わる事は無い。
そしてもう一人のスティッフの歌姫といってよいカースティ・マッコールは「New England」を収録。プリミティヴでストロングなビリー・ブラッグの曲を繊細なギター・ポップ・サウンドでカバーした美しいバージョン。プロデュースは夫のスティーブ・リリーホワイト。カースティはトレイシー・ウルマンの売出しにも大きく貢献していて、このコンピには入っていないけど「They Don't Know」や「Terry」はもともとカースティ・マッコールの曲だし、この他にも数曲提供していた。それにバック・コーラスでも参加していた。
あ、スティッフの“女王”リーナ・ラヴィッチもお忘れなく「Luckey Number」を収録。