OMNIBUS a Go Go Vol.100『GUITAR POP JAMBOREE STEPPING (MORE)~レア・トラックス Warner Music Editon』
“ギター・ポップ・ジャンボリー”シリーズは1999年~2000年にかけてソニー、ワーナー、BMG、東芝EMIの各社からリリースされたコンピレーション。もとはミュージック・マガジン社の増刊“CD BEST 100”シリーズ『ギター・ポップ・ジャンボリー』として刊行されたディスク・ガイド本を発展させた企画、といえるもので、各社あわせて計6枚のCDがリリースされた。1999年7月にリリースされた『Guitar Pop Jamboree Stepping (more)』は副題に『~レア・トラックス Warner Music Editon』とあるように、ワーナーが所有するレア音源を集めたものだ。
このコンピを購入したきっかけはただ一つ、ストロベリー・スウィッチブレイドによるヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカヴァー「Sunday Morning」が収められていることだ。ジルとローズの女性二人組ストロベリー・スウィッチブレイドはエコー&ザ・バニーメンのギタリスト、ウィル・サージェントの個人レーベル、92ハッピー・カスタマーズから1983年デビューシングルをリリースした後、1984年にワーナー傘下のコロヴァからシングル「Since Yesterday c/w By The Sea」をリリースし全英5位のヒット、人気は日本へも波及して日本のみのミニ・アルバムやシングルもリリース、1986年には来日もしている。
そのヒット・シングル「Since Yesterday」の12インチのみカップリングに追加収録されていたのが「Sunday Morning」だった。まぁ12インチも友人に譲ってもらって持ってるんだけど…。
ヴェルヴェッツのファースト・アルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』の1曲目に収められている「Sunday Morning」は、ジョン・ケイルのチェレスタのキラキラとした音色と、次第に霧がたちこめるように表れるさまざまな楽器、エコーが深くなってゆくルー・リードのヴォーカルが幻想的な曲。
ストロベリー・スウィッチブレイドのヴァージョンは、ギターとオルガンの演奏に、ジルとローズのヴォーカルとハーモニーのみのシンプルなものだが、土曜の夜を眠らずに迎えた日曜の朝の気分を歌ったというヴェルヴェッツのフィーリングを損なうことなく表現している。ストロベリー・スウィッチブレイドは数枚のシングルとアルバム1枚で解散してしまうが、このヴェルヴェッツのカヴァーを収めているCDは今のところこのコンピのみだろう。
アズテック・カメラ「Walk Out To Winter(Extended Version)」は同曲の1983年ラフ・トレードからリリースした12インチに収録されていたヴァージョンで、9分を超す長尺に仕上げられている。シンセなどのエレクトリック色が強くなっているところ、ギターソロ等のアコースティック色の協調されているところ、と変化に富んだヴァージョン。なにより“君の部屋の壁から(ジョー・)ストラマーのポスターが剥がれ落ちて/その後には何も貼られていない”と歌われるこの曲は、12~13歳でパンク・ロック・ムーブメントに出会った若きロディ・フレイムが、やがてそのムーブメントの終焉を見届け、自分自身の新たな音楽的旅路へと旅立つ決意をしたかのような内容で、1983年のアルバム『ハイ・ランド、ハード・レイン』に収録されていたこの曲を歌詞カードを読みながら聴いて、苦く切ない思いを抱いたものだ。超名曲。アズテック・カメラの1993年の日本企画コンピレーション『カヴァーズ&レア』にも収録されていた。
他には、ファンタスティック・サムシングの瑞々しい「The Night We Flew Out The Window」の12インチ・ヴァージョン、モノクローム・セットの1985年シングルのB面曲「Big Ben Bongo」、エドウィン・コリンズ「50 Shades of Blue(Acoustic Version)」は1987年リリース「My Beloved Girl」のシングル・ボックス・セット(2枚組)に収録されていたナンバーで、後の1989年にリリースする初ソロ・アルバム『ホープ・アンド・デスペア』収録のモータウン風のハネたビートのヴァージョンとは全く違うアコースティック・ヴァージョン。
ウェザー・プロフェッツによるレナード・コーエンのカヴァー「Who By The Fire」とプライマル・スクリーム「Star Fruit Surf Rider」はどちらもワーナーと協力関係にあったインディのエレヴェイションから1987年にリリースされたシングル/12インチのカップリング曲。スープ・ドラゴンズ「Just Mind Your Step Girl」は1986年リリースの「Hang-Ten! EP」からでキッチュな魅力のある曲。エレ・ポップ的なドリーム・アカデミーの「The Love Parade(Remix)」やビッグ・ディッシュ「Miss America」も良い。
ユージン・ケリー関連で2曲、ヴァセリンズ「Dying For It(The Blues)」とユージニアス(キャプテン・アメリカ)が1992年リリースしたシングルのカップリング曲「Indian Summer」を収録。 80年代だけではなく90年代からも、スペシャルズ/ファン・ボーイ・スリーのテリー・ホールの1995年作「Chasing A Rainbow」、ジミー・ネイル「Cowboy Dreams」はブリファブ・スプラウトのパディ作のフォーキーなナンバーで1995年リリース。ダニエル・ジョンストンの1994年リリースのアルバムから「Life In Vain」を収録している。
さてOMNIBUS a Go Goも100回目となり、ここで一休み。紹介し忘れた盤もあるし、この後は機会があったらオムニバス盤を取り上げようと思っている。