OMNIBUS a Go Go Vol.99『NORTH OF NO SOUTH COMPILATION ONE』
タイトルはチャールズ・ブコウスキーの短編集『South of No North』をもじったものらしいが、いい音楽を南のストックホルムからではなく北のウメオ(Umea)から、という意味合いでつけられたのだという。その名の通り、多くの曲がウメオのトーンテクニックというレコーディング・スタジオで録られたもの、一部がウメオよりもっと北のルレオのゲイトウェイ・スタジオで録音されたものだ。カタログNo.はNONSCD-01で、ノース・オブ・ノー・サウス(NONS)の第一弾リリースとされている。
このコンピには日本でカーディガンズと人気を2分したバンド、クラウドベリー・ジャムが初期にレコーディングした楽曲が2曲収録されている。「Are You Happy?」はこれがあのジェニー嬢か?と思ってしまう、やけっぱち&やさぐれた感のあるボーカルが聴けるストレートでパンキーなナンバー。もう1曲の「Love Song」はアコースティックながらニューウェイヴィーな曲調。クラウドベリー・ジャムといえばジャズ・テイストのコード感があるギター・ポップ・バンドだったが、この頃というかこの2曲はポップというより、ややダークな面が強調されている感じの曲。クラウドベリー・ジャムは1992年この2曲を含むCDシングルをリリース(もう少しポップな曲もあった)、1994年トーレ・ヨハンソン・プロデュースのミニアルバム『アート・オブ・ビーイング・クール』で変貌と遂げる。
ジャカランダからシングルをリリースしていたハネムーンズは「You Never Say」と「Tell Me Why」の2曲。どちらもギターの響きを大切にしたポップ・ナンバー。オルガンの使い方も良い。武骨なギター・バンドといった感じのサテライト・サーカスは「Carmine Sky」と「Gallery of Ghosts」の2曲。後のNONSを代表するバンドのひとつとなるコメダは「Magnifying Glass」と「Mellow Song」でどちらもストレンジな魅力がある。
このコンピを購入したのはシーシェルズの初期録音が2曲収録されていたからだった。シーシェルズはドイツのレーベル、マーシュ・マリーゴールドから1994年にリリースしたファースト・アルバム『ルッキング・アフター・ユア・フラワーズ』や1995年NONSからのセカンド・アルバム『ウィ・ロブ・バンクス(邦題:恋の銀行強盗)』を手に入れて、やや頼りないボーカルながら、曲やアレンジの良さで気に入って聴いていた。このコンピに収録されている「Rainbow Day」はシーシェルズの他の楽曲ではあまり聴かない歪んだギターの音色が目立つところが特徴か。もう1曲の「Station Song」は涼しげなコーラスとキラキラしたギター・フレーズで、このコンピでもピカイチのギター・ポップ・ナンバーだろう。
他にテイスト・オブ・レインドロップス、イン・ザ・フレッシュ、ブライスといった、ポップな要素もありつつシューゲイザーやオルタナティブからの影響を感じさせるバンドも収録されている。8バンド各2曲、全16曲を収録。