DUSTY SPRINGFIELD「MAKE IT WITH YOU」
NHKの「ミュージック・ポートレート」を見て興味の湧いたもう1曲がダスティ・スプリングフィールドの「Make It With You」で、やはり“よしもとばなな×サンディー”の回でサンディーが3曲目に運命の出会い、として選んでいた曲。
ダスティ・スプリングフィールドはこれまでバカラック関連のオムニバスで聴くくらいで「The Look of Love」が凄く好きなんだけれど、オリジナル・アルバムを入手してはいなかった。この「Make It With You」が放送で紹介されたとき、ダスティ・スプリングフィールドの『イン・メンフィス』のアルバム・ジャケットが映し出されていたから、 “あ、この曲はこのジャケのアルバムに入ってるんだな”と頭にインプットされた訳だが、1969年リリースのオリジナル『イン・メンフィス』に「Make It With You」は収録されていない。
1999年にライノがリイシューしたオリジナル11曲にボーナス・トラックを14曲追加したデラックス・エディションに初めてこの「Make It With You」が収録された。…ということはサンディーが歌手なるきっかけの時(1970年代前半と思う)に歌った「Make It With You」はダスティのヴァージョンでは無いと思うのだが、オリジナルのブレッドによるものか、ほかの人のカヴァー・ヴァージョンを参考にしたのか。ダスティによる録音は1971年にニューヨークのスタジオでされており(『ブラン・ニュー・ミー』の次アルバム用に録音されたがリリースされなかった)サンディーはどこかで聴いていたのか…。
「Make It With You」のオリジナルはアメリカのバンド、ブレッドが1970年にシングルでリリース、全米1位、全英5位のヒットとなった。アレサ・フランクリンやシラ・ブラック、アースウィンド&ファイア、クロディーヌ・ロンジェ等、多くのアーティストにカヴァーされている。 ダスティのヴァージョンは、イントロのギター、リムショット、キレのよいベースフレーズ、続く魅惑的で深く、息遣いのように響く、だけど滑らかなダスティの歌声、歌われる蠱惑的な歌詞、流麗なストリングスと素晴らしいアレンジ。ブルー・アイド・ソウル/ソフト・ロックの神秘的な名曲となる仕上がり。
本編の『イン・メンフィス』もバリー・マン/シンシア・ワイル、ゲフィン/キング、バカラック/デイヴィッド、ランディ・ニューマンなどの作家陣が曲を書き、ソウルフルな演奏と弦のアレンジに、表現豊かだけど抑制の効いた揺れの少ないダスティの歌がマッチした名盤。ジャケット・アートもキュート。このデラックス・エディションのボーナストラックは『イン・メンフィス』録音時のアウト・テイク1曲、『イン・メンフィス』録音プロデューサーと再び組んだシングルAB面と、次のアルバム『ブラン・ニュー・ミー』録音と同時期のセッションから2曲、「Make It With Me」を含む1971年のリリースされなかったアルバム・セッションから9曲(キャロル・キングの「You've Got A Friend」も聴きもの)と豪華な仕様だ。