My Wandering MUSIC History Vol.2 太田裕美『木綿のハンカチーフ』

1975年CBSソニーからリリースのシングル。

私にとっては初めてジュークボックスを使ったという思い出の曲。どこへ行ったのかは覚えていないけれど家族旅行で泊まった旅館のロビー(だったと思う)に置いてあったジュークボックスでこの曲を選んだ。ジュークボックスは四角い箱型で、タイトルが手書きで、大きめの赤い選曲ボタンがついていた。たぶん50曲位は入っていたのではないかな。1曲幾らだったか覚えていないけど…。

この曲が気に入っていたのは、タイトルの “木綿のハンカチーフ” がサビとかで連呼されるのではなく、4番まで聴いて、それも最後のフレーズで登場するというのが他の歌と違って変わっていて面白く、子供心に気が利いてるなと感じたからと思う。それに都会で願望を叶えようとする彼と、あなたの他は何もいらないという彼女のやりとりが交互に歌われていく歌詞も面白かった。あなたに会いたい、君が恋しい、という心情吐露を強調するのでは無く、都会や田舎の風景、それに付随する小道具を使って松本隆が描き出した世界は、太田裕美のピュアな歌声と親しみやすい筒美京平のメロディ、軽快なサウンドと共に洗練されたポップスとなっている。
この歌詞がボブ・ディランの「Boots of Spanish Leather」に似ている、というのは知られた話だが、歌詞の構造を下敷きにしているだけで、松本隆はディランとは違うとても解りやすいかたちに独自の世界を作り上げていると思う。

「木綿のハンカチーフ」は1975年リリースのアルバム『心が風邪をひいた日』に収録され、のちにシングルとして発売するために再録音された。その際3番の “恋人よ君は素顔でくち紅もつけないままか” の歌詞が “恋人よいまも素顔でくち紅もつけないままか” に変更され、 “今も”という語句で昔とかわらない女性像を際立たせている。アレンジもアルバムのやや素朴なもの(編曲は荻田光雄)からシングルでは弦を強調、バックコーラスを加えるなど化粧し直されたヴァージョン(編曲は筒美京平と荻田光雄)となり、シングルはオリコンで2位を記録するヒットとなった。

*右上のジャケ写は2003年に発売されたタイムスリップ・グリコ・青春のメロディー食玩CD(TDDD9030 AR-G002)8cmシングル。表題曲のみ1曲入りだった。

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