My Wandering MUSIC History Vol.22 SEX PISTOLS『THE VERY BEST OF SEX PISTOLS AND WE DON'T CARE』
このHPの中でよくパンク/ニュー・ウェイヴVSハード/ヘヴィ・ロック(またはプログレ)という書き方をしているが、 2014年の今となっては両者の対立に何の意味があるのか、と思えるけれど、オリジナル・パンクが出現した1976年からハードコア・パンクが登場する1980年まで、少なくとも(特にイギリスでは)パンク・ロックはヘヴィ・メタルだけではなく、ブルース・ロックやプログレッシヴ、クロスオーヴァー、ディスコ・ミュージックへのアンチであり決別であった。パンク・ロッカー達はゼップやクイーンやシンリジィ、ピンク・フロイドやイエス、ビージーズ等を罵倒し、自分たちのサウンドが如何に真実味があるかを語っていた。
私もいよいよパンク/ニュー・ウェイヴ熱が高まるにつれ、それまでせっせと収集していたハード/ヘヴィ/プログレのレコード、ブラック・サバス(ブートもかなりあった)やオジー・オズボーン、ディープ・パープル、レインボー、ギラン、ユーライア・ヒープ、キャメル、ナザレス、バッド・カンパニー、アイアン・メイデン、ジェフ・ベック、テッド・ニュージェント、TOTO等、日本では紫やレイジー、スペース・サーカス等のアルバムを売りに行った。当時は手提げの紙袋にレコードを入れ、重たいのにわざわざ都内の中古屋まで売りに行っていたのだ。レコードが売れるとその金を元手に中古盤屋や輸入盤屋でパンクやニュー・ウェイヴのレコードを買った。そんな買い方をした覚えがあるのがこのセックス・ピストルズの日本編集ベスト盤。たしか渋谷のハンターで買ったと思う。
たぶんピストルズを始めて聴いたのは友人に借りた『グレイト・ロックンロール・スウィンドル』だったような気がする。見開きジャケでインナーに写っていたキャット・ウーマンの写真が話題になっていたけど、裏ジャケのバンビの写真が気持ち悪いし、なんかシンフォニーで始まるし、ヴォーカリストは変わるし、音質も良かったり悪かったりと内容については散漫な印象。もちろんシドの「My Way」や「Something Else」、「C'mon Everybody」はかっこよかったし、ポール・クックやスティーヴ・ジョーンズが歌う「Silly Thing」、「Lonely Boy」もポップで好きだった。なので、『グレイト・ロックンロール・スウィンドル』から好きな曲とそれまでのシングル曲「Pretty Vacant」、「God Save The Queen」、「Anarchy In The UK」やそのB面曲が入ってるし、「Black Leather」、「Here We Go Again」という見慣れない曲名にも興味が惹かれ購入した。ピストルズの唯一のオリジナル盤といってもよい『Never Mind The Bollocks Here's The Sex Pistols』のトータルな衝撃とは違ったバラエティ感があり、このベスト盤には満足したものだ。ジャケットは何か模様のようにも見えるがジョニー・ロットンの歌っている同じ姿をいくつも重ねたもの。
『The Very Best of Sex Pistols And We Don't Care』は1979年12月に日本独自編集でリリースされたが、本国イギリスなど海外で1979年10月にリリースされたピストルズのコンピ『Flogging A Dead Horse』をベースにしたもの、またはそれに準じたものと思われる。どちらもシングルリリース曲を中心に選曲されているが、日本編集の『The Very Best of~』には『グレイト・ロックンロール~』のアウトテイクで当時未発表だった「Black Leather」と「Here We Go Again」が収録されている。イギリスでは翌1980年シングル6枚組『6 Pack』中の1枚を「Black Leather c/w Here We Go Again」としてリリースされた。どちらもジョーンズ&クックのポップな曲だが2014年5月現在までCD化されていない。