My Wandering MUSIC History Vol.40 JOY DIVISION『LOVE WILL TEAR US APART』
ジョイ・ディヴィジョンの楽曲を聴いたのはこのシングルが初めてじゃなかったと思うが、この「Love Will Tear Us Apart」は強力な印象を残した。私が手にしたのは12インチだったが(7インチはジャケが違う)、ジャケットのゴシックな嘆きの天使の墓石というかトゥームのモノクロ写真だけでもインパクト大。あらためてネットで調べてみると(今は便利)イタリアのジェノヴァにある墓地“Staglieno Monumental Cemetery”というところで撮影された写真を使用している (アルバム『クローサー』のジャケットも同所のトゥームを使用しているようだ)。ファクトリーのデザイナー、ピーター・サヴィルによるスリーヴ・デザインはまさに芸術作品といえるジャケット。シングルのリリースはヴォーカリストのイアン・カーティスが自死した1980年5月18日の前月、1980年4月だった。
閃光のように始まりを告げるアコースティック・ギターのカッティング、メロディを際立たせるベースライン、深みと広がりを与えるシンセサイザーのフレーズ、イアン・カーティスの低く、精神の深淵を思わせる歌声は、お互いの愛が近づけば傷付けあうものである事を告白し、“もう一度、愛が僕らを引き裂く”と歌う。
「Love Will Tear Us Apart」のレコーディングは1980年3月に2回のセッションが行われており、 シングルのA面にはストックポートのストロベリー・スタジオで録音されたヴァージョンが収録されている。このヴァージョンは性急にハイハットを刻む歪んだ16ビートが特徴で、流れるようなメロディとの対比が歪な美しさを感じさせる。テンポはやや遅め。もう1回のセッションはオールダムのペナイン・スタジオで録音され、こちらはストロベリー・スタジオのヴァージョンと比べるとテンポが速く、ドラムはハイハットの刻みを工夫しているがエイトビートを基調としリズムは安定していて、バンドの一体感が感じ取れるヴァージョンだ。シングルのB面2曲めに収録されている。今聴くとこちらのヴァージョンが好み。
B面の1曲めにはやはりペナイン・スタジオで同時期に録音された「These Days」が収録されている。この曲もアレンジが工夫されていて得にギター・ストロークのタイミングや鳴りが絶妙でかっこいい曲。
ジョイ・ディヴィジョン「Love Will Tear Us Apart」はローリング・ストーン誌の1980年ベスト・シングルにも選ばれているが、世界中のオルタナティヴなミュージシャンに影響を与えた曲と言っていいだろう。