BRUCE SPRINGSTEEN「GOTTA GET THAT FEELING」
ブルース・スプリングスティーンの3CD+3DVDの6枚組のボックスセット『闇に吠える街 The Promise:The Darkness On The Edge of Town Story』は高価で手が出なかったけど、そこから単独リリースした未発表曲集CD2枚組『The Promise~The Lost Sessions』を最近手に入れた。『The Darkness On The Edge of Town(邦題:闇に吠える街)』制作時に作られたが未発表となっていた楽曲を集めたものだ。曲によっては必要に応じて当時の録音に追加レコーディングをおこなっているという。
『The Promise~The Lost Sessions』にはブルース本人のライナーノートがある。
“『闇に吠える街』はパンクの爆発的な人気が頂点を極めていた頃曲を書きレコーディングした作品でもあった。 俺はニューヨーク・シティにあった行きつけの小さなレコード店で、パンク初期のシングルを出た先から買い占めていた”
“これらのレコードの強硬なパワーが『闇に吠える街』に辿り着いたのだ。俺はこのアルバムをこれまでの中で最も強硬な曲のコレクションにすることを選んだ”
と、1976年~1977年頃に勃興したパンク・ムーブメントからの影響について記載している。
と、1976年~1977年頃に勃興したパンク・ムーブメントからの影響について記載している。
もっとも音楽的には既にビッグなメロディ、コーラス、豊かなアレンジという方向性が決まっていたということで、 “素材やテーマ選び” に大きく影響をうけたようだ。今回久しぶりに『The Darkness On The Edge of Town』を聴いたが、やはりブルースが “手持ちの曲から最もハードなものを選んだ”というだけあって、沈痛で重く、ロマンティックな印象はあまり感じられず、数曲を除いてはポップな曲調からかけ離れている。なるほどね。パンクからの影響はここに出ていたんだ。ブルースはどんなパンク・バンドの曲を聴いていたんだろうか。パンクのシングルはポップさも兼ね備えていたと思うんだけど。むしろこれらの曲はブルースにとってのハードコアか。
ブルースが1977年~1978年にかけてレコーディングした4枚目のアルバム『The Darkness On The Edge of Town』は、 多くの未発表曲が存在していて、とりわけ有名だったのは、やはり未発表曲集だった1998年リリースの『Tracks』にも収録見合わせとなり、1999年にリリースした『18Tracks』にニュー・レコーディングとしてピアノ・ヴァージョンが収録されていた「The Promise」のオリジナル・テイクだろう。その待望の「The Promise」が、この『The Promise~The Lost Sessions』で初めて公式に発表となったわけだ。
たしかに「The Promise」はリリカルでロマンチックかつ埃っぽく乾燥した味わいのあるバラードで、加えられたオーケストレーションも歌詞の内容も素晴らしい。1978年のブルースの魅力をたっぷり詰め込んだ名曲だ。
その他にも『The Promise~The Lost Sessions』には『The Darkness On The Edge of Town』制作時にハードな曲を選んだことで意図的に外されたポップな曲やソウルフルな曲が数多く収録されている。そのなかでも特にいいな、と思ったのはスペクター・サウンドで彩られた「Gotta Get That Feeling」。
例のバスドラのフレーズで始まるこの曲はパーカッションやコーラス、ホーン、キーボード、ギターが幾重にも重ねられ、華麗に装飾をほどこされたアレンジ。彼女に特別な気持ちを取り戻そうと呼びかける、ロマンティックな曲だ。この曲でアルバムが始まっても良かったんじゃないかと思う、煌びやかな3分間のポップ・ソング。