My Wandering MUSIC History Vol.44 ARB『指を鳴らせ!』
前作から8ヶ月後という短いインターバルでリリースされたARB、4枚目のアルバム。
ドラムのキースが胆石で入院し、元ダウン・タウン・ブギウギ・バンド(当時サッキング・ルージュ)の相原誠、元サンハウス(当時トランプ)の浦田賢一、アナーキーの小林高夫がヘルプでドラムを叩いている。なので、“KIETH (IN THE HOSPITAL)”とクレジットされている。渋いモノトーンのジャケットは井出情児によるもの、裏ジャケットのメンバーの写真もいい。歌詞カードの各曲をモチーフにしたイラスト(Rのサインがあるから凌が描いたものだろう)も楽しい。一目惚れ“Love at first sight”という英語を知ったのもこのアルバムだなぁ。
その“Love at first sight”が歌いこまれた「イカレちまったぜ!」、緊張感のあるサウンドの「13番街のワル」、一目惚れの後日談のような「I'm Jumping」は、“この一瞬をずっと待っていたんだぜ”というフレーズがとても印象的。「Hip,Shake,Hip」はアルバムタイトルに通じる“フィンガー・スナッピング”も歌いこまれたブルージィなナンバー。田中一郎のB.B.キングばりのブルース・ソロも聴きものだ。老いも若きも魅了するR&Rの「教会通りのロックン・ロール」。
スピーディかつややハードなロックンロール「Standing On The Street」、渋くジャジィな煙草ソング「PALL MALLに火をつけて」。えぇ買いましたよ“PALL MALL”。あの頃は高かったけどね(あ、今も高いのかな)。ロカビリーな「シティ・ギャング・シャッフル」。パブ・ロック風な“お楽しみはこれから”「Well Well Well」、石橋凌の実兄や友人をモデルにしたという「さらば相棒」は、ARBのアルバムに1曲は収録されていた物語仕立ての楽曲。この曲をモチーフにして1年後の1982年11月に宇崎竜童監督、石橋凌主演で映画化された(ディレクターズ・カンパニーが制作したピング映画3本立てのうちの1本で、 他の2本は高橋伴明監督「狼」と泉谷しげる監督「ハーレム・バレンタインディ」)。ピンク映画(死語かな…)という事で予算は3本で1,000万円、撮影4日間、各映画の時間も58分と、かなり制約のあるものだった。
収録時間33分というコンパクトなアルバムだが名曲ばかり。キースの不在はあるものの、この時期のARBの勢いを感じることが出来る仕上がりだ。