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5月, 2016の投稿を表示しています

Drop's「十二月」

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2016年5月25日、STANDING THERE, ROCKS/キングからリリースのアルバム『Donut』より。 前作『Window』から10ヶ月という短いインターバルでDrop'sのアルバムがリリースされた。 バンドの多様性を作り出すことを目指した前作とは変わり、今作ではVo&Gの中野ミホが全ての作詞作曲を手掛けていて、中野のパーソナルな部分にフォーカスした楽曲・アルバム作りとなったようだ。 前作発表後には映画2作の主題歌を制作というトピックもあった。バンド外部からの要請をサウンド化するという難しさもあったと思うが、今年3月に公開された映画『無伴奏』の主題歌「どこかへ」と今年6月に公開される映画『月光』の主題歌「月光」がこのアルバムに収録されている。どちらの曲もDrop'sとしての新しい面を見せていると思う。 取り上げた1曲は3曲目に収録されている「十二月」。 Drop'sらしいオルガンとヘヴィなギターに包まれたミディアムナンバー。途中ドラム、ベース、アコギの演奏だけで歌われている部分の、  “あの時 書いた 歌だけが なぜかしら  あざやかで うつむいて しまうのです  そうねきっと 私はあなたで あなたは私だったね” という歌詞が成長と変わりゆく自分に対する僅かな喪失感を窺わせる。中野の求めても答えを得られないエモーショナルな歌声が、聴いている者の感情を揺さぶるナンバーだ。 勢いのある「G.O.O.D.F.E.E.L.I.N.G.」に始まり、ハネたリズムの「Cloud City」、 アコースティックでスローな「ダージリン」、アルバムタイトル・トラックの「ドーナツ」。 “からっぽ”っていう言葉はいつもロックンロールにとって重要なテーマだ。中野ミホは自分のぽっかり穴の開いた心と、甘ったるいだけのうぬぼれた気持ちをドーナツになぞらえて歌う。 実は一番好きかも「LONELY BABY DOLL」は、ストレートなロックンロール。 一発録り、カセットテープに落としてラジカセで鳴らし再度マイクで録音したという(日本脳炎もやってたな)粗いサウンドが魅力。ラストのグルーヴィな「からっぽジャーニー」。からっぽを意識しながら “からっぽの分だけ 吸い込む空気を”って歌詞が秀逸。その他、全12曲を収録。 5月末にリリースされたアルバムだが、歌われる内

サンハウス「GOT MY MOJO WORKIN'」

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2016年3月26日、SON RECORDSからリリースのアルバム『Tiger In Your Tank!(Tribute To Muddy)』より。 マディ・ウォーターズ生誕100年(マディの誕生年は1915年とされているが1913年誕生説もある) を祝って2015年9月12日に下北沢ガーデンでおこなわれたライヴからサンハウスのライヴがCD化された。菊、鮎川、奈良、浦田という(1983年『クレイジーダイアモンド』録音と同じ)メンツだ。サンハウスが当日演奏した全15曲、「キングスネークブルース」や「レモンティー」などサンハウスの7曲に、マディのカヴァーが8曲、それにスタジオアウトテイク2曲をプラスして17曲が収録されている。 アルバム・タイトルにもなっている「タイガーインユアタンク」はマディ・ウォーターズが1960年に発表した曲でウィリー・ディクソン作。柴山俊之による日本語詞で歌われているが、ブルースライオンの2001年リリースのアルバム『X-01』でも録音されてい(作詞・柴山、作曲・ブルースライオン名義で大分アレンジは違うけどね…)。 「Got My Mojo Workin'」は当日ライヴでのラストナンバーで、パンタ・バンドで長く活躍していた中山努がピアノ、永井“ホトケ”隆がボーカルとギターでゲスト参加している。スピード感のある奈良&浦田のリズム隊に鮎川のぶっといギターの音色をのせた演奏はドライヴ感抜群。中山のピアノもファンキーに絡み、永井ホトケのギターソロもフューチャーされている。この曲は日本語詞ではなく英語で歌われている。「Got My Mojo Workin'」はマディ・ウォーターズ作(本名のマッキンリー・モーガンフィールド名義)だが、原曲があってアン・コール&サバ―バンズによってリリースされた「Got My Mo-Jo Working」(プレストン・フォスター作)。アンの「Got My Mo-Jo Working」はヴ―ドゥーなアイテムが数多く登場する歌詞で、マディのとはかなり違うところがあるが訴訟となったようだ。まぁそのあたりもあるのかもしれないが、このアルバム、ジャケ記載と歌詞カード記載の作詞・作曲クレジットがなんか適当な感じ…。 下北沢ガーデンのライヴは“BLUES BABY ROCK AND ROLL”というタイトルもつけられていた

ザ・モッズ「うるさい」

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石井聰亙監督『狂い咲きサンダーロード』のブルーレイ化・クラウド・ファンディングが始まる。 奇跡的に発見された1980年撮影当時の『狂い咲きサンダーロード』16mmネガ・フィルムを1コマずつ精査・修正、ハイクオリティ画質でのブルーレイ化。 クラウドファンディングプラットフォームMotionGalleryのページ。 『狂い咲きサンダーロード』完全復活プロジェクト うーむ、フィギュア付きは25万か…。 ザ・モッズの「うるさい」は『狂い咲きサンダーロード』で使用された曲。昔90分テープでサントラ作ったなぁ…。

森田童子「ぼくと観光バスに乗ってみませんか」

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長らく廃盤状態だった森田童子のアルバムが再発。最新リマスター/SHM-CDで2016年7月20日発売。 Universal Music JapanのNewsページ 森田童子の残した名盤カタログ全9作品が、2016年7月20日にSHM-CDにてリイシュー! 森田童子を初めて聴いたのはT君の下宿で、1983年か1984年頃かなぁ…。「ぼくと観光バスに乗ってみませんか」や「ぼくたちの失敗」を収録したアルバム『マザースカイ』だった。極めて薄い剃刀の刃のような危うさを秘めた歌詞とシンプルな演奏。ルックスと歌声のギャップにも驚いた。 アナログは持ってるけど、どうするかなぁ…。

MODERN DOLLZ「チェリーに夢中」

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2016年1月20日、YOUTHからリリースのアルバム『THE UNRELEASED TRACKS vol.1』より。 モダンドールズの未発表トラック集がリリースされた。モダンドールズの音源といえば2002年にUKプロジェクトからリリースされたCD『Complete Best』があったが、今回リリースCDのブックレットに記載されたクレジットによれば、収録された音源で『Complete Best』とのダブリはなく同タイトルが数曲あるが録音時期の異なるトラックだ。『THE UNRELEASED TRACKS vol.1』に収録された音源の録音時期は1981年11月~1983年10月、Vo佐谷、G松川、G平山、B田中、D倉井というメンバーで録音されている。 『THE UNRELEASED TRACKS vol.1』のCD収録全22曲のうち、ラスト2曲「ソーダポップ」と「チェリーに夢中」が最も古い1981年11月の録音。1981年はベースの田中、ドラムの倉井が正式加入しバンド名の表記をMODERN DOLLSからMODERN DOLLZに変更した時期だ。今回選んだ「チェリーに夢中」はのちの「チェリーに首ったけ」の初期ヴァージョンなのだろう、スピーディなアレンジは同じだが、中盤部分に一旦スピードダウンしてレゲエアレンジが組み込まれているところが面白い。歌詞はほとんど同じで後半の“チェリーに首ったけ”が“チェリーに夢中さ”と歌われている。なのでタイトルも「チェリーに夢中」。粗削りな魅力あるトラックだ。まぁ若干ブロンディの「I'm On E」(アルバム『プラスティック・レターズ』収録)なメロディではある。 その他少しだけ紹介すると、「ソーダポップ」は、いまやマッサンとして有名な玉山鉄二が陣内孝則監督の映画『ROCKERS』(2003年) のなかで歌っていてサントラにも入ってるモダンドールズの代表曲といっていいグラマラスなナンバー。「素敵なハニーキャット」は後の「ストレイキャット・ブルース」でアレンジはほぼ同じだ(しかしストレイキャッツの影響は大きかったな…)。バディ・ホリー的なリズムが軽快な「夜のシーサイドラヴ」、スリリングなビートチューン「Monkey Drive」などなど。 少々キザな歌詞が似合うポップなメロディとビートの効いたナンバー、洋楽からの影響が垣間見えるアレ