TH eROCKERS「涙のモーターウェイ」
ザ・ロッカーズの7インチ・シングルリリース3枚目は「涙のモーターウェイ c/w TVエンジェル」で1981年8月にリリースされた。シングル盤ジャケットのメンバー写真は『COME ON』の別カットが使用されているが、レタリングなどデザインはポップな仕上がり。「涙のモーターウェイ」は陣内作詞作曲の、あの娘と深夜の街を突っ走るロマンチックなナンバー。
“くちびるにメロディ ジェラシーはトランクに”ってフレーズが秀逸。キマってる。それにこの曲のメロディ、陣内のヴォーカルにピッタリなんだよな(自作だからあたりまえだけど)。
“憂鬱な明日を 占うよりも
とぼけた奇跡を じっと待つよりも
ロマンスを手に入れた 夜をころがせ
スクラップに なっちまう前に”
スクラップ寸前の人間にとっては、やけに染みる曲だぜ。
このシングル・ヴァージョンの「涙のモーターウェイ」が今回リイシューされた『SHAKIN'』のボーナストラックとして収録された。今回のリイシュー、最初のアナウンスでは『SHAKIN'』にボーナストラックは無いような記載だったので、購入を見合わせようかなぁと思っていたのだが、どうせ買うんなら3枚同時に…と思って、買ってみてびっくり。買ってよかった…。
ロッカーズのサード・アルバム『SHAKIN'』は1981年9月にリリース。「涙のモーターウェイ」はアルバムのラストに収録されたが、アルバム収録ヴァージョンはシングル・ヴァージョンとヴォーカルトラック、演奏トラックは基本的に同一と思われる。
シングルをもとにすると、ギター等の音の付け加え、コーラスの変更、音量バランスや音の定位置変更などによりアルバム・ヴァージョンとしているようだ。アルバム・ヴァージョンはナチュラルなギターの音色をプラスしてギターの弦の響きを活かした印象、コーラスは抑えられ、ややシンプルに聴こえる仕上がり。途中タンバリンの追加も効いている。こちらのほうがエンディングが25秒ほど長い。シングル・ヴァージョンはコーラスが随所に際立っているように思う。 特に3分過ぎ演奏がドラムのみになるところ“Hurry Up~”部分のコーラスは気持ちいい。
1980年3月上京~1980年9月アルバム・デビュー~1982年6月ザ・ロッカーズ解散。鶴川・穴井が抜け空中分解してしまった1982年からはすぐに解散することも出来ず、決まっていたスケジュールを消化しなければならなかった、と陣内著『アメージンググレース』に書いてある。ということは『爆裂都市・バーストシティ』公開が1982年3月だから映画絡みのプロモーション/バトルロッカーズのライヴなんかもあったんだろう。いやはや…キャニオンもいろいろ考えてたんだろうがなぁ。
上京から実質2年にも満たない間にシングル3枚、アルバム4枚、それに『爆裂都市』の撮影やらサントラ制作やらもあるし…。これはどう考えても詰め込み過ぎと思うが、だからこそこれらの作品が残されている訳で…んー複雑。じっくり曲作りもバンドの音作りも出来ず、常にハイスピードで駆け抜け高速に回転するエンジンをのせたマシーンのように最後はバーストしてバラバラになってしまったザ・ロッカーズ。
『アメージンググレース』にこんな記述がある。
“誰だったっけ、評論家がいつか、俺たちのステージをこんな言葉で表現してくれていた。
「旅立ちの前夜、少年が男になる前夜、闘いの前夜、そして革命の前夜。奴らのライブは、いつだって、なにかの前夜祭なんだ」(中略)
オレたちは最初から最後まで前夜祭に浮かれ騒いでいたのかもしれない ”
大きなサクセスを夢見て、バンドとして夢果たせなかったロッカーズの前夜祭は終わった。だが今回のリイシューを聴けばわかる通り、日本のロックシーンに決して小さくはない花火を打ち上げたんだ、と思う。