My Wandering MUSIC History Vol.77 THE ROOSTERS『C.M.C』

1983年7月1日 Shan-Shan/日本コロムビアよりリリース。

ザ・ルースターズ通算5枚目の作品集、12インチ・シングル。
『C.M.C』については前回と同じく こちら(2004年5月の古い記事だけど)でも書いたので、繰り返しになるところもあるが補足的に紹介。

1982年10月、『ニュールンベルグでささやいて』レコーディング終了後、大江慎也の精神状態は“どうにもならない状態”にまで悪化。花田裕之もこの時の事を振り返り語っている。“『ニュールンベルグ~』のジャケット撮影の時とか、かなりキツそうな感じでした。もう、行動がおかしいというか…あの時には本当にヤバいなと”

見かねた大江の母親は息子をレコーディング終了後、九州へ帰郷させ精神科を受診させる。大江はそのまま10月末には入院。『ニュールンベルグでささやいて』リリースにあわせて予定されていたライヴはキャンセルとなった。ライヴの休止と大江の病状を知らせる当時の音楽雑誌には神経性の急性胃炎や急性肝炎で入院と記載されていた。

翌1983年6月14日、新宿ロフトで行われた1984のライヴ。その日アンコールで演奏された「Case of Insanity」で大江がヴォーカルをとりライヴ復帰。続けて来日したイギー・ポップのフロントアクトとしてルースターズは6月19日~21日にライヴを行っている。

スタジオ・レコーディングは1983年5月におこなわれ、新たに「Drive All Night」をレコーディング。 前作『ニュールンベルグ~』収録曲を録音した1982年9月~10月のセッションで残された「C.M.C」と「カレドニア」の2曲にも手を加えていると思われる。さらに1981年12月の新宿ハローホリデーにおけるライヴ・テイクの「Case of Insanity」を加えて、4曲入り・45回転盤『C.M.C』を1983年7月1日にShan-Shanレーベルからリリースする。

ジャケットには鏑木朋音のドローイングによる大江の肖像画。ポップなタイポグラフィが使われ、アート・ディレクションは前作に続いて戸田ツトム(Tztom Toda)が担当した。
前作『ニュールンベルグでささやいて』アナログ盤裏ジャケットの山名昇によるライナー・ノーツには、 ”この12インチ45rpm盤の後、彼等は既に80年代最大のプロテスト・ソングを用意している。さりげなく、待ちたまえ”と書かれている。『C.M.C』がリリースされタイトル曲「C.M.C」を聴いた時、この突如戦争状態となったサマービーチを描いたロックンロールナンバーが“殺戮”に対するプロテスト・ソングなんだろうな…と勝手に思った私はとんだ勘違い野郎だった。

乱調気味のピアノ、ベースとドラムの完璧なリズム・コンビネーション、的確なギターコードワーク、終盤の息苦しいまでの静かな高揚感が味わえる「カレドニア」。エリオット・マーフィーが1977年に発表したアルバム『Just A Story From America』収録曲のカヴァー「Drive All Night」。花田にこの曲をカヴァーするのを薦めたのは柏木省三だったそうだが、曲の構成・進行はオリジナルに基づいたものながら、原曲のフィル・コリンズの豪快なドラムはドラム・マシン(Lynn dsとクレジットされているがLinn Drum)に置き換えられ、固く高い音に加工されたスネア、井島のこれも加工されているサックスの音色、ギターのフィードバックが響き続ける実験的(1984的)な側面もあり、クールな花田のヴォーカルと無機質なサウンドでありながらも様々なアイディアを詰め込んでティーンエイジ・パッションを表現している。ダンサブルな井上のベースライン、後半の下山淳による高速繰り返しギターソロも聴きどころだ。

「Case of Insanity」は1981年12月13日新宿ハローホリデーにおけるライヴ。当時は知らなかったがキーボードを後からオーヴァーダビングしている加工されたライヴ・テイク。素のライヴ・テイクは2004年9月にリリースされたボックスセット『Virus Security』に収録されている。フィードバックするギターストロークもオーヴァーダブされ、ヴォーカルもイコライジング処理されている。

寄せ集め的と言われることもあるが、リリース当時は全然気にならなかった。ロックンロールな「C.M.C」、アヴァンギャルドな「カレドニア」、 カヴァーで花田が歌う「Drive All Night」、名曲「Case of Insanity」のライヴ。 何しろ大江の復活作だったし、池畑・井上のリズム隊はまだ健在、花田のリード・ヴォーカル曲、ルースターズのライヴ曲の初音盤化と、こんなにトピックがあったら文句言う奴いないだろ?

リリース当時の広告。

たぶんどこかでもらったチラシ(表裏)。

[参考文献:大江慎也の語る半生を小松崎健郎がまとめた『words for a book』、『ロック画報 17・特集めんたいビート』、 ボックスセット『『Virus Security』ブックレット

このブログの人気の投稿

TH eROCKERS「可愛いあの娘」

NICO『LIVE IN DENMARK』

ザ・ルースターズ「PLAYLIST from ARTISTS」