サンハウス「LOCO MOTION」
1973年3月12日、福岡市の明治生命ホールでおこなわれたサンハウス初のワンマン・コンサートの模様を収録した2枚組CDがリリースされた。メンバーは柴山、鮎川、篠山、ドラム浦田賢一のオリジナル・メンバーに、ベースは浜田卓から奈良敏博に変わって数ヶ月過ぎたという時期のもの。
オープニングSEや途中のMCも含め2時間余り、ブルースのカヴァーを序盤に、当時曲数の増えていったオリジナル曲を中盤にたっぷり、終盤はロイド・プライス「Lawdy Miss Clawdy」、 ジョニー ・ティロットソン「Cutie Pie」、ファッツ・ドミノで知られている「Bluebelly Hill」、 リトル・エヴァ「Loco Motion」、ラストはおなじみチャック・ベリーの「Johnny B.Goode」とロックン・ロール、オールディーズのカヴァーで盛り上げている。このオールディーズ・カヴァーはサンハウスのメンバー達がオリジナル曲やブルースのカヴァーを始める以前、ダンスホールや米軍キャンプでライヴ演奏していた曲達なのではないかと想像するが…。
サンハウスのオールディーズ・ポップスの演奏は珍しいと思って取り上げてみたのは「Loco Motion」。
ゲリー・ゴフィン/キャロル・キング作でリトル・エヴァによる1962年のオリジナルは全米1位のヒットとなった。日本では伊藤ゆかりの日本語カヴァーでも知られている。
サンハウスのカヴァーは普段聴きなれてる歌唱からすると、やや違和感がある投げやりな柴山のヴォーカルだが、曲調からなんだか可愛らしくも感じる。ただこの曲の訳詞を調べてみるとドゥ・ザ・ブランニュー・ダンスで、それも“A chug-a chug-a motion like a railroad train”なダンスってことで、 なかなかサンハウス向きかなとも思えてくる。
タイトなドラムと鮎川のギターソロも印象的。コーラスも…まぁ決まっているか…。
「Loco Motion」演奏前に柴山が“参加したい人ステージに上がって”と繰り返し呼びかけているが、CD付属の解説書によればこの曲のコーラスには若きシーナも参加しているということだ(1973年3月というとシーナ19歳か…)。曲の後半によく聴こえてくる。
サウンドボード録音した記録用のオープン・リール・テープが音源で、CD化にあたって中村宗一郎がマスタリングした。コンサート当日のミキシングの演出で難がある曲(「落ち目の唄」や「Johnny B.Goode」のラスト部分)があるものの音質的には全体を通して明瞭。
今回オールディーズのカヴァー曲を紹介したが、もちろんサンハウス本領発揮のエレクトリック・ブルース・カヴァーも、未発表曲を含むオリジナルも完成度と演奏力は非常に高く聴きどころ満載。ブルース、オリジナル、オールディーズというコンサートの構成は若きサンハウスの演奏ともどもフレッシュなもので、こんな音源が聴けるとはファンにとってはありがたいことだ。
このライヴアルバム、サンハウスの音源としては最も古いものに属するが、さらに遡って1972年5月20日「Son Rise Concert」の音源リリースも計画されているようだ。