MODERN DOLLZ「時代は変わる」
モダン・ドールズの未発表トラック集の第2集がリリースされた。
第1集からほぼ2年振りのリリースだ。前回が1981年11月~1983年10月までの録音を集めたものだったので、今回はその続き、CDには1983年11月~1984年8月までの録音(ライヴ録音を含む)が集められ20曲を収録、DVDには1984年のミュージック・ヴィデオや1984年に行われた4ヶ所のライヴから選ばれた映像35曲を収録した2枚組、全55曲のボリュームだ。メンバーはドラムが倉井から下鳥にかわり、Vo佐谷、G松川、G平山、B田中、D下鳥というラインナップとなっている。
1984年4月にはバンドしてピクチャー・ソノシートに続く音源となるカセット・テープ『robber & lover』をリリース(今回の『THE UNRELEASED TRACKS vol.2』のジャケットは、このカセットのジャケットを模したものになっている)、4月26日には天神のビブレホールでワンマン・コンサート、5月からは広島・神戸・大阪・名古屋・東京へのツアー、8月10日には都久志会館で“CHANGES”と銘打ったコンサートを行うなど、バンドとしてひとつのピークに達した1984年の記録だ。
取り上げたのはCDの1曲目に収録されている「時代は変わる」。
曲の副題に~Changes~とあり、それは8月10日の都久志会館のライヴのタイトルにもなっている (DVDにはこの日のライヴが7曲収録されているが映像は6曲で「時代が変わる」は静止画)。自分が変えようとしている古い世代の感覚、古きモラル、因習といったものと、否応なく変わり続ける時代を見据え、飽くまでもモダンにこだわり、若者に自分の心の変革を促す。 ギターのオクターブ奏法が特徴のエネルギッシュなナンバーだ。
“とにかく とにかく時代は変わる
さあ走れ バスが今を乗せて過去へと走り出す
バスが今を乗せて過去へと走り出す前に
Change Own Mind ”
親の世代とのギャップ、自分達の考える音楽業界とのギャップを感じ、その葛藤を表わした曲でもある。
“親と呼ばれる者よ 分かったふりはやめる事さ
若い冒険旅行はあんたの手におえる相手じゃない”
“答えを出すには早すぎる ルーレットはまだ回っている
誰の元に止まるか 勝者は変わりゆくもの”
という歌詞を歌った時から33年が過ぎた。
2001年夏にはヴォーカリスト佐谷光敏が急逝、他のメンバーは親と呼ばれていい年齢になっている。
自分達の作り出すロックンロールが齢を重ねることなど微塵も考えなかったであろうあの頃。過去へ走り出す、というのは『THE UNRELEASED TRACKS vol.2』みたいな音源をリリースするということでもあるんじゃないか。だけど過去の、33年前の言葉や音が現代を生きる若者達へのメッセージとなって生き抜いている、ということについても、当時の彼等には思いもよらぬことであったであろう。
他注目は、CD収録曲では1984年の東京へのツアー、6月24日駒澤大学記念講堂でのライヴ音源2曲(フルセットで出して欲しいね)、DVDにはその翌日6月25日新宿ロフトの映像(モノクロだが)10曲が収録されている。
1984年秋頃にはギタリストの平山克美が脱退、変わってハカパラのギタリスト小峰勇治が加入、続いてベースの田中宏行が脱退、やはりハカパラの田浦祐蔵が加入し、モダン・ドールズにとってもチェンジの年となった。
さて気は早いが1985年以後のvol.3に期待しよう。それが過去を乗せたバスだとしてもね。
参考文献:田代俊一郎著「博多ROCK外伝」、BEATMAKS創刊号(1984年)