BOYS BOYS「MONKEY MONKEY c/w CONTROL TOWER」
遂に2019年再刊となった佐藤ジンの写真集『GIG』を見ていて、1978年〜1980年はほぼ東京ロッカーズ周辺のバンドが被写体となっているが、結構写真点数が多いなと思ったのがボーイズ・ボーイズだった。写真集に付属のインデックスでボーイズ・ボーイズのクレジットがある写真を数えてみると、1978年〜1980年にかけてオフショットやステージ写真が27枚掲載されている。
1978年5月28日六本木にS-KENスタジオがオープン、そこで行われていたフリクション、リザード、ミラーズ、ミスター・カイト、S-KEN等のライヴに客として観に来ていた女子4人、クミ、エミ、チホ、カズミが S-KENのメンバーから“君たち絵になるからバンドやってみなよ”という勧めもありボーイズ・ボーイズを結成したのは1978年8月頃。といってもただの客じゃないんだが…。
紅蜥蜴や3/3、ラリーズ、村八分といった日本のアンダーグラウンド・シーンを取り上げたミニコミ「ロッキン・ドール」を発行していたチホ(ベース)、レックやエスケンとともにミニコミ「WATCH OUT」を編集、1978年8月に発行したエミ(ギター)、ラモーンズ・ファンクラブのスタッフでエスケン(田中唯士)とも知り合いだったクミ(ヴォーカル&ギター)、そしてドラム演奏経験があったカズミ。 彼女達は手始めにヴェルヴェット・アンダーグラウンドのコピーから始めた…。
ボーイズ・ボーイズのライヴ・デビュー1978年12月23日S-KENスタジオでの「クリスマス・ギグ」だった。共演は東京ロッカーズ・セッション、 アーントサリー、SS。続いて1978年12月31日下北沢ロフト「大みそかギグ」にも出演、その後もライヴ活動を行っていたが、1979年3月頃には初代ドラマーのカズミが脱退し、ベースのチホも“つまんなくなって”脱退(チホはその後ゼルダを結成)、1979年4月新たにDサキ、Bヤヨイが加入し活動継続した。
このメンバーで録音、PASSレコードから1980年3月25日にリリースされたのが7インチ・シングル「Monkey Monkey c/w Control Tower」(PAS-201)で、突然段ボール「ホワイト・マン c/w 変なパーマネント」(PAS-202)、Phew「終曲 c/w うらはら」(PAS-203)と3枚同時リリースされた。
このシングル収録の2曲がボーイズ・ボーイズとして唯一発表された音源。
2 曲ともクミのペンによるもので、ジャケットのイラストとデザインもクミによるもの。レコーディングは新宿Studio Bettyでおこなわれた。
2 曲ともクミのペンによるもので、ジャケットのイラストとデザインもクミによるもの。レコーディングは新宿Studio Bettyでおこなわれた。
“ 情報ジャングルたむろするMonkeyゾロゾロ”で始まる「Mokey Monkey」 はタムタム・ジャングル・ビートにのせて都会を徘徊するモンキーに進化した人間共の様子を描いた。モンキー・シティにモンキー・カー、モンキー・ダンスと猿猿猿づくし、よくあるテーマではある…まぁユニークとは思うが。
“ Give Me Power, Control Tower ”で始まる「Control Tower」はストレートでパンキッシュなロックンロール。歌詞は英語で歌われている。ザクザクとしたギター・カッティング、 シャウトするヴォーカルが小気味良くもカッコいい。中間の展開部も気が利いてる。どちらも2分足らずの潔いショートチューン。
この2曲は1996年にCDシングルとしてWAXから復刻されているほか、2005年にはPASSレコードのコンピ『PASS NO PAST〜EP&SINGLES』に収録された。このシングル・リリース後ボーイズ・ボーイズは、フリクション、突然段ボール、グンジョーガクレヨン、Phewとともに1980年4月26日〜5月25日まで、東京、名古屋、大阪、京都、富山、長野、前橋、仙台を回る“ PASS TOUR '80 ”と題されたライヴ・ツアーを敢行、ツアーのラストは神奈川大学だった。
このPASSツアーの頃にはベースが松浦徹(東京2チャンネル、後にノンバンド、突然段ボール)に交代している。
JICC出版局の宝島増刊『ROCKERS1983』に掲載されている地引雄一作成の東京ストリート・ロッカーズ人脈図によると、ボーイズ・ボーイズは1981年8月まで活動していた記載があるけれど、どうなんだろう、いつ頃まで活動が続いていたのかは不明。クミのインタビューでは1979年4月に“メンバー交代してから1年半くらい続けた”と語っていることから、バンドとして活動していたのは1980年10月頃までじゃないだろうか。
ギターのエミこと茂木恵美子は1981年7月にフリクションに参加、ヴォーカル&ギターのクミこと丹羽久美子はザ・ミュータント・モンスター・ビーチ・パーティーを結成した(1986年頃か)。
イキイキとしたボーイズ・ボーイズの写真を見ているとライヴを聴いてみたくなる。
ブルース・インターアクションズから2007年に出版された『フリクションthe book』によると、
フリクション、ボーイズ・ボーイズ、突然段ボール、グンジョーガクレヨン、吉野大作&プロスティテュートが参加して1980年5月25日神奈川大学で行われたライヴ “ Pass Tour Last Night In Kanagawa Univ. ”では、参加した全バンドの演奏がライヴ・レコーディングされたという記載があるから、ボーイズ・ボーイズのライヴ音源が残っていれば是非リリースして欲しいものだ (突然段ボールとグンジョーガクレヨンの演奏は1980年に7インチ2枚組として、フリクションのステージは1996年に『LIVE1980』としてリリースされている)。
RAMONES FAN CLUB JAPANホームページ内にクミ(Kummy)のインタビューがある。
I'M RAMONES MANIA FILE 27 KUMMY ラモーンズとの出会い、ラモーンズ・ファンクラブとの関わり、ジョーイとの繋がりの他、ボーイズ・ボーイズについても語っている。
I'M RAMONES MANIA FILE 27 KUMMY ラモーンズとの出会い、ラモーンズ・ファンクラブとの関わり、ジョーイとの繋がりの他、ボーイズ・ボーイズについても語っている。
参考文献:雑誌「ミュージック・マガジン」1980年7月号、宝島増刊『ROCKERS 1983』(1983年JICC出版局)、地引雄一著『ストリート・キングダム』(1986年ミュージック・マガジン刊)、 真保みゆき・小嶋さちほ著『乙女のロックだんご』(1986年ミュージック・マガジン刊)、 藤沢映子著『ZELDA物語』(1988年JICC出版局)、エスケン著『S-KEN回顧録 1971-1991』(2018年河出書房新社)、『フリクションthe book』(2007年ブルース・インターアクションズ)、 CD『PASS NO PAST〜EP&SINGLES』ブックレット