石原洋『formula』
White Heaven、The Starsで活動していた石原洋の23年振りのソロアルバムがリリースされた。
録音には、
石原洋:ヴォーカル、ギター、シンセサイザー、キーボード、エフェクト
栗原ミチオ:ギター
北田智裕 :ベース
山本達久:ドラム
中村宗一郎:キーボード
というパーソネル。
寝静まった夜にCDを再生…冒頭からゴボゴボゴボゴボと続く不気味な音…。
やがて部屋に喧騒でざわめきたつ街頭というか駅の改札付近が出現した。
人々のざわめき…話し声、笑い声、咳。靴音、券売機からの音、設置されたスピーカーから流れるアナウンス、電車が通り過ぎる音、警笛、発車を知らせる合図、誘導チャイム。バイクの走り去る音。
途切れることなく続くさまざまなストリート・ノイズの隙間から聴こえてくる石原洋たちの演奏と歌声は、微かにと言ってもいいくらいの音量にミックスされている。
収録されているのは、それぞれが約21分の「formula」と「formula reverse」の2曲。
演奏部分を聴いてみると、ゆったりとした浮遊感のある曲から電子音とフィードバック音にギターのストロークを挟みつつ、軽快な楽曲が聴こえるのが「formula」。
ループやエフェクト加工したノイズと演奏がより一体化した部分もありつつ、繰り返すリズムにエレクトリックギターのフレーズが絡む曲から、ミディアムな曲調の演奏へ、さらに性急なリズムを伴った曲に変わる「formula reverse」。こちらの喧騒はどこか店内という雰囲気もある。
この収録されたサウンド全体を聴いていると、都会のありふれた日常のひとコマといった印象を受ける。ありふれた日々への作り手の思い、というのがあるのかもしれない。
ジャケットコンセプトの黄昏(または夜明け)の高圧線と街の風景も美しい。
個人的には演奏のみを聴いてみたかったが、トータルな作品としては面白いと思う。
とても巧妙に作り込まれたBGM、または都市のサウンドトラックと言える興味深い作品だ。
アルバム『formula』トレイラー・ミュージック・ビデオ
部屋で聴いた時はどこか懐かしい記憶の情景のようにも感じたが、車で聴いた時は落ち着かない妙な感じだった。都会の雑踏の中、ヘッドフォンで聴いたらどんな感じを受けるだろうか。
追記2020.3.8:『ele-king』のHPに石原洋のインタビューが掲載されている。
君はこの音楽をどんな風に感じるのだろうか?
コンセプチュアルで快楽的なブートレグ。そして記憶から遠ざかっていくロックの記録。