My Wandering MUSIC History Vol.85 ECHO & THE BUNNYMEN『SILVER (TIDAL WAVE) 』

1984年4月13日、Korovaよりリリースの12インチ・シングル。

エコー&ザ・バニーメンの12インチ・シングルは『Never Stop (Discotheque)』のあと、1984年1月にUKリリースされた傑作12インチ『Killing Moon (All Night Version)』を購入、ジャケと内容の素晴らしさに私は更にバニーメンの音楽へと傾倒していった。続いて1984年4月にUKリリースされたのが12インチ『Silver (Tidal Wave)』で、カップリングには「Silver」の7インチ・ヴァージョンと「Angels And Devils」が収録されている。7インチ「Silver c/w Angels And Devils」も同時に発売された。

「Silver (Tidal Wave)」は、イントロに流麗でパワフルなストリングス・パートを追加し、1分50秒ほど長く、5分12秒に仕上げたヴァージョン。弦の響きがまるでTidal Wave=大波のように迫りくる音像をつくりあげた。それは真新しい冒険の日々にのりだす船乗りたちの気分のように高揚した音楽だった。個人的にはもう少し長くしても良かったのではないかと思ったけど。

初期バニーメンの切っ先鋭いソリッドなサウンドからは予想もつかない、クラシカルなストリングスを大胆に採用。ストリングス・アレンジは1980年代のバンド、ザ・フラワーポット・メンのアダム・ピータースが担当しており、当時流行していたシンセサイザーを多用した楽曲に対するイアン・マッカロクのアンチな気持ちをどこかで読んだ気がするが、徹底して生のストリングスに拘ったアレンジとなっている。バンドも骨太リズム隊を核に、ウィル・サージェントのアコースティック・ギターと繊細なエレクトリック・ギターの音色、イアンのコーラスも加わり、新鮮で豊潤な響きを持った楽曲になった。

前作「Killing Moon」は全英シングル・チャート9位となるヒットを記録したが、「Silver」は全英シングル・チャート30位止まりとなった。 この曲の録音はフランス・パリのスタジオ・ダヴー(DAVOUT)で行われ(余談だけどルースターズ が後にアルバム『パッセンジャー』の録音で使用した)、プロデュースはAll Concerned(全ての関係者)となっているがバニーメン自身とGil Nortonがおこなっているようだ。

「Silver」の初期ヴァージョンが、1983年6月にBBCのジョン・ピール・セッションで演奏・放送されており、2019年にリリースされた『The John Peel Sessions 1979-1983』で聴くことができる。その後ライヴのセットリストにも早くから組み入れられており、1983年7月19日のロイヤル・アルバート・ホールに於けるライブ盤に「Silver」が収録されている。

カップリングに収録された「Angels And Devils」は、アメリカ・サンフランシスコのスタジオThe Automattで1984年3月18日に録音された。シングル・リリースの僅か1ヶ月前だ。ヴェルヴェッツのモーリン・タッカーのドラミングのようなタムタムと鳴り続けるタンバリンの音にのせて歌うイアンの声はマジカルに響き、 ” Devils on my shoulder / Angels coming colser ”と歌われるラストが余韻を生む。イアンもお気に入りのシングルB面曲だという。ハープシコードを演奏しているのはウィル・サージェント。

ジャケットは、イングランド南西部コーンウォールにあるスレート鉱山跡のカーングレーズ洞窟で撮影された。フォトグラファーはこれまでもバニーメンのジャケット写真を撮影していたブライアン・グリフィンで、ブライアン・グリフィンのサイトに、この時撮影された別カットの写真が掲載されている。
BRIAN GRIFFIN ALMUM COVERS ECHO AND THE BUNNYMEN

このカーングレーズ洞窟は当時エルビス・コステロのマネージャーのジェイク・リヴィエラが所有していた、と記載がある。

参考文献:Four Disc Set『CRYSTAL DAYS 1979-1999』liner notes(2001年)、Reissue CD『OCEAN RAIN 25th Anniversary』liner notes(2003年)、Reissue CD『OCEAN RAIN COLLECTOR'S EDITION』liner notes(2008年)

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