浅川マキ『SINGLE COLLECTION』
配信限定でリリースされていた『シングル・コレクション』が、浅川マキ没後10年となる2020年に初CD化された。
浅川マキというと下山淳と池畑潤二、奈良敏博 が参加した曲を含むライヴ・アルバム『夜のカーニバル』や 『Stranger's Touch』、『black』といったアルバム、ビクター・ニューロック・シングル集『からのベッドのブルース』に収録された浅川マキのデビュー・シングル「東京挽歌 c/w アーメン・ジロー」を聴いたことはあった(ビクター・ニューロック・シングル集には頭脳警察のシングル曲が収録されていたので購入)。 上記の他には通販用と思われるベスト『夜が明けたら』(The CD Club)をどこかの古本屋で安く買ったくらいだった。
再デビューといってもいい1969年7月リリースの「夜が明けたら」から1988年12月リリースの「見えないカメラ」まで、東芝からリリースされた全11枚のシングルAB面の楽曲が年代順に収録されており、そのなかには初CD化のシングル・ヴァージョンを含み、CD2枚組で2,500円(+税)という価格でリリースされるというのだから、浅川マキ入門編として良いのではないかと思い購入。このシングル集で再デビューから約20年の浅川マキの変遷を(わずかな楽曲ではあるが)辿ることができる。
オリジナル・アルバムを持っていないので聴き比べは出来ないが、ライナーノーツ(藤脇邦夫による・読み応えあり!) より引用すると、
シングル・ヴァージョンを収録しているのは、
「夜が明けたら」:蠍座でのライヴ・ヴァージョン
「ちっちゃな時から」:ヴォーカルの音量を上げたシングル用ミックス
「ふしあわせという名の猫」:ストリングス入りの別テイク
「港の彼岸花」:アルバムとは別テイク
「赤い橋」:シングル・ヴァージョンと記載があるが違いの記載はなし
「こんな風に過ぎて行くのなら」:アルバムとは別テイク
「さかみち」:シングル・ヴァージョンと記載があるが違いの記載はなし
「翔べないカラス」:明大前キッド・アイラック・アート・ホールでのライヴ・ヴァージョン
「マイ・マン」:アルバムとは別テイク
「こころ隠して」:シングル用のエディット・ヴァージョン
「アメリカの夜」:1986年のアルバム『アメリカの夜』収録曲の再録音
以上の11曲。
ボサノバ・タッチの「ふしあわせという名の猫」、ピアノのみをバックに歌う「さかみち」、ロッキンな「翔べないカラス」、ファニー・ブライスやビリー・ホリディが歌った曲に日本語詞をつけたリリカルな「マイ・マン」は、移り気な彼の愛を “ 本当じゃないって なんになるの ”と歌っているところがいい。
「こころ隠して」は、先頃亡くなってしまった近藤等則が作曲したレゲエ・テイストの曲、カップリングの「むかし」も同じく近藤等則作曲の前衛的なナンバーだ。
この他、アメリカンなテイストのゆるやかなナンバー「少年」、歌謡曲的なメロディの「めくら花」、 ジェリー・ゴフィン/バリー・ゴールドバーグのペンによる曲に浅川マキが日本語詞をつけたソウルフルな「それはスポットライトではない」、浅川マキの歌詩に後藤次利が曲を書いた「コントロール」は、どこかの蓮っ葉なアイドルが歌ったらハマるんじゃないか、なんて思ってしまう。カップリングの「時代に合わせて呼吸をする積もりはない」も実験的なアレンジ。アーバンでソウルフルな「見えないカメラ」等々…全22曲。
どの時期の曲もそれぞれの味わいがあってもっと聴いてみたい気になる。いまさらだが、浅川マキの歌詩も含め素晴らしいものだ。
あーアルバム欲しくなったけど再発紙ジャケはどれも入手不可かー。