追悼・立花隆
“知の巨人” または 猫ビルの主人、立花隆逝去。
2021年4月30日のことだった。
初めてその著作を読んだのは『宇宙からの帰還』だった。その内容に感動、感嘆、興奮したなぁ。実際にあったことを掘り起こす取材力、文章に表す知見と表現力。こうして真実に近づいていくのか、という感想も同時にもった。そこに書かれていた人間が宇宙空間へ行くという体験、宇宙から地球を眺めた後の宇宙飛行士の思考は、ボウイの「スペース・オディティ」やジョン・レノンの「イマジン」を想起させるものでもあったかな、私的には。
そのあと『田中角栄研究』、『日本共産党の研究』、『中核VS革マル』、『アメリカ性革命報告』、『マザーネイチャーズトーク』、『脳死』、『青春漂流』、『同時代を撃つ』、『ぼくはこんな本を読んできた』、『解読・地獄の黙示録』なんかを読んだ。こうして見ると1980年代の半ば~1990年頃が立花隆の著作を読んでいた時期のようだ。『宇宙からの帰還』を読んで遡って1970年代の著作を、80年代後半から90年頃は興味ある新刊で、という感じか。
『解読・地獄の黙示録』は2000年代の著作だが、映画『地獄の黙示録 特別完全版(原題:Apocalypse Now Redux )』公開後に書かれた解説書で『地獄の黙示録』ファン必読の書といえる。
右上の表紙写真は1988年に講談社文庫から出版された『青春漂流』で、さまざまな職業の “自分の人生を大胆に選択して生きようとしている男たち” 当時22歳〜36歳の11人を取材し、雑誌『スコラ』の連載をまとめたもの(1984年単行本刊行)。取材された一人がレコーディング・エンジニアの吉野金次(当時36歳)で、幼少期〜高校時代、東芝EMI入社、社内エンジニアとしてのキャリアを積み、ビートルズの音との出会いと研究、フリーエンジニアになるまでが語られており、アウトサイダーで痛快、興味深い内容だった。
立花隆はテレビにも度々出ていたが、日本人として初めて宇宙へ行った秋山豊寛の打ち上げ時の特番での立花隆の嬉しそうな顔や、シベリア抑留を体験した画家・香月泰男の番組での涙をながす立花隆の姿を今も思い出す。