My Wandering MUSIC History Vol.94 鮎川誠『クール・ソロ』
以前に少し書いたが、SHEENA & THE ROKKETSのセカンド・アルバム『真空パック』は購入したものの、その頃はテクノ化したロックンロールが理解できず。借りて聴いたその後の2枚、同じ体制で制作された『チャンネル・グー』しかり、YMOを離れミッキー・カーチスのプロデュースで制作された『ピンナップ・ベイビー・ブルース』はテクノ色は払拭されたが、フューチャーされたサックスの音色がややオールドな雰囲気を感じた(今はどのアルバムも抵抗なく聴けるけど)。
鮎川誠ソロ名義の『クール・ソロ』は1982年にリリースされ、すぐに聴いたと思う。混じり気も飾り気も無し、純度100%のロックンロール・アルバムだった。ジャケットは白地にポーズを決める鮎川の姿(フォト by 半沢克夫)と右上に縦書き明朝体で鮎川誠。初の鮎川名義のアルバムとして、そのデザイン(by 原耕一)は名刺代わりのよう。レコードの帯には “ 百万人のロックンロール ”の文字。
このアルバムは、1981年10月17日、日比谷野音でおこなわれたSHEENA & THE ROKKETSの“ピンナップ・ライヴ ”の録音から、鮎川のヴォーカル曲をセレクトして収録したものだ。当日は30曲が演奏され、全曲録音されていたらしいが、シーナが自分のところは嫌だといって、鮎川のところだけ選んでリリースしたという。
収録されているのは下記の9曲で、
1. JUKEBOXER
2. DEAD GUITAR
3. クレイジー・クール・キャット
4. どぶねずみ
5. アイラブユー
6. ビールス・カプセル
7. ブーンブーン
8. GOOD LUCK
9. ぶちこわせ
1〜3、5〜8は『SHEENA & THE ROKKETS #1』、『チャンネル・グー』、『ピンナップ・ベイビー・ブルース』のいずれかで鮎川が歌っていた楽曲。5〜7は『SHEENA & THE ROKKETS #1』で再録されていたサンハウス・ナンバー。6はルースターズが2ndアルバムで取り上げた曲だが、そのころはこの曲のサンハウスによる録音物は無く、サンハウスのオリジナル・メンバー鮎川のVo&G、サンハウス(再結成するまでの)最後期メンバーだったD川嶋一秀、B浅田孟の演奏で聴けたのは興奮したなぁ。もっともシナロケの1stもこのころは入手困難で聴いていなかったけど。7はサンハウスの「ぶんぶん」を改題したもの。4と9はサンハウスのアルバム『仁輪加』収録曲を演奏、9は「爆弾」を改題している。このサンハウスの2ndアルバムもこのころは入手困難だったので『クール・ソロ』で初めて聴いた。
3はルー・ルイス「Lucky Seven」に、7はザ・パイレーツ「Going Back Home」のギター(ミック・グリーン)に影響され作られた曲。8はスタジオ・アルバム『チャンネル・グー』では柴山俊之作詞の日本語詞だったが、ここでは英語詞で歌われている。
クールでジェントルでありながらもワイルドな鮎川のヴォーカル、ブルース、ブリティッシュ・ビート、アメリカン・サイケ/ガレージ、パンク等が透けて見えるソリッドなロックンロールを聴くことが出来る。全9曲、約38分のコンパクトなアルバムで、アナログ盤リリース時の販売価格は2,000円と当時のアルバムとしてはお買い得な価格設定だった。
2006年にリリースされた2枚組CD『ROKKET FACTORY The Worst and Rarities of Sheena & The Rokkets in Alfa Yers』には1981年10月17日、日比谷野音でおこなわれた“ ピンナップ・ライヴ ”から「CAROL」、「I GOT YOU, I FEEL GOOD」、「ワン・ナイト・スタンド」、「オマエガホシイ」の4曲が『クール・ソロ』アウトテイクスとして収録されている。
参考文献:Alfa時代アルバム再発紙ジャケ6タイトル・ライナーノーツ(MHCL694〜699、2006年)、レコード・コレクターズ増刊『JACKET DESIGHNS IN JAPAN』(2004年)