ニーナ・アントニア著・新井崇嗣訳『ジョニー・サンダース イン・コールド・ブラッド・完全版』

2022年7月15日、シンコーミュージックより刊行。

ニーナ・アントニアにより書かれたジョニー・サンダースの伝記本『ジョニー・サンダース イン・コールド・ブラッド』。日本では1988年に鳥井賀句による邦訳で日本語版が刊行されて以来、絶版となり長らく入手困難だったが、ジョニー・サンダース生誕70年という記念の年に、それもジョニーの誕生日(1952年7月15日)に新しく新井崇嗣の訳により完全版として復活した。奥付には翻訳協力としてHiroshi The Golden Arm Nakagomeのクレジットがある。

『ジョニー・サンダース イン・コールド・ブラッド』のオリジナルは1987年に英ジャングル・ブックスより刊行、日本版は1988年シンコーミュージックより鳥井賀句訳で刊行されているが、この時はまだジョニー・サンダース存命中の出版であり、パティ・パラディンとのアルバム『コピー・キャッツ』(1988年)制作前という時期だった。

その後、2000年に英チェリーレッドから改訂英語版が、2015年には伊パイプラインからイタリア語版が刊行された(こちらも改訂されている様だ)。今回の日本語訳完全版は、おそらく2019年にJungle Recordsからリリースされた電子書籍版(英語)『Johnny Thunders - In Cold Blood ebook』をもとにしていると思われる。

今回の邦訳では、パティ・パラディンとのアルバム『コピー・キャッツ』制作から、訪れていたニューオーリンズでのジョニーの最期(1991年4月23日)とその後、さらにジョニーの盟友ジェリー・ノーランの死(1992年1月14日)を記した新たな章が加えられた。それまでの章にもインタビューを含む取材や考察により大幅に加筆されており、1988年日本語版とはほぼ別物と言っていいと思う。またカラー写真を含む多くの図版が掲載されている。

邦訳初版巻末にあったディスコグラフィは無くなり、今回の日本語版にはニーナ・アントニアがジョニー・サンダース関連の音源リリース時に執筆(インタビュー含む)した下記のライナーノーツが掲載されている。
・ニューヨーク・ドールズ『MANHATTAN MAYHEM:A History of New York Dolls』(2003年)
・ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ『L.A.M.F. The Lost '77 Mixes』(1994年)
・ハートブレイカーズ『L.A.M.F. The Definitive Edition』(2012年)
・ハートブレイカーズ『LIVE AT MAX'S KANSAS CITY Volumes 1&2』(2014年)
・ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ『DOWN TO KILL』(2005年)
・ジョニー・サンダース&ウェイン・クレイマー『GANG WAR』(2004年)
・ジョニー・サンダース『QUE SERA SERA』(1994年・2001年改訂)
・ジョニー・サンダース『QUE SERA SERA Resurrected』(2017年)
・オリジナル・サウンドトラック『LOOKING FOR JOHNNY』(2014年)
・ジョニー・サンダース『BORN TOO LOOSE The Best of Johnny Thunders』(1999年)
こちらのライナーノーツも2019年にJungle Recordsよりリリースの電子書籍版(英語)『Johnny Thunders sleeve notes』をもとにしたと思われる。さらに、ロミ・モリ(取材)と荒谷政寿(構成)による著者ニーナ・アントニアへのインタビューも追加掲載している。

先日たまたま読んだロフト・ブロジェクトのWEB「Rooftop」内の、ギターウルフのセイジとサニーデイ・サービスの曽我部恵一の対談でジョニー・サンダース初来日の初公演が四国(1985年1月25日、高知グリーン・ホール)だったことを語っていたが、本書『イン・コールド・ブラッド』のなかでもちらりと日本初公演時のエピソードをジョニーが語っている箇所がある。ジョニー・サンダースは4度来日しているが、他にも来日時の興味深いエピソードが(前訳者の)鳥井賀句による談話で紹介されている。

ニーナ・アントニアは本書のなかでジョニー・サンダースが生きたロックンロール・ライフについて、こう記している。
“  死の聖母がすぐ側に控えていたにもかかわらず、サンダースは死忌避をひとつの芸術へと転化したわけだが、それは二度と再演されることのない独り舞台だった。彼は自らの危険な神話の勝者であると同時に、犠牲者でもあった。ジョニーはある時点で気がついていた、死して初めて、自分は大物になれるのだろうと。そして、彼は正しかった ”

Well the only way you get respect is when you die - Johnny Thunders「Disappointed In You」

参考文献:Kadoi The Heartbreak & Hiroshi The Golden Arm監修『JOHNNY THUNDERS Complete Works - the Art of Cosa Nostra』(2020年・シンコーミュージック刊)

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