MY PLAYLIST Vol.8『FAVORITE COVERS OF BOB DYLAN SONGS』
ボブ・ディランのカヴァーでマイ・ベスト・トラックをCD1枚分集めたいと思って、最初につくったのは2000年代の初め頃かな、その時は日本のアーティストも入れて作ったのだが、そのうちサントラの『アイム・ノット・ゼア』やCD4枚組のカヴァーアルバム『チャイムス・オブ・フリーダム』がリリースされて、海外のアーティストで、なるべくスタジオ録音で、と変わっていった。
オープニングは、ジミ&エクスペリエンスの「見張り塔からずっと」で、やはりディラン・カヴァーの最高峰だろう。原曲のアコースティック・ギターのカッティングから発展させたようなイントロ。性急さを取り込みながらも腰のあるリズムに変換したミッチ・ミッチェルのドラム。原曲のコード進行は王道ともいえるが、ディランのヴォーカル・メロディにジミのギターが目眩く空間を作り出す、ロックでポップでサイケデリック、決して色褪せない至極の1曲だ。
それでラストはザ・ローリング・ストーンズ「ライク・ア・ローリング・ストーン」。高慢な金持ちが住所不定・路上生活者=ローリング・ストーンのようになるまで落ちぶれ、かつてあんたが蔑んでいた者たちと同じになって、どんな気分だ?と問いかける栄枯盛衰の歌。この初めと終わりの2曲は変わらず定位置にしている。
以下、私の選んだ『FAVORITE COVERS OF BOB DYLAN SONGS』
1. All Along The Watchtower The Jimi Hendrix Experience
2. Ballad of A Thin Man Kula Shaker
3. Crawl Out Your Window Transvision Vamp
4. I Wanna Be Your Lover Wilko Johnson
5. Going Going Gone Richard Hell & The Voidoids
6. Stuck Inside of Mobile With The Memphis Blues Again Cat Power
7. It's All Over Now, Baby Blue Hole
8. My Back Pages Ramones
9. Absolutely Sweet Marie Flamin' Groovies
10. Joey Joey Johnny Thunders
11. Just Like A Woman Jeff Buckley
12. Leopard-Skin Pill-Box Hat Beck
13. Wicked Messenger Patti Smith
14. This Wheel's On Fire Siouxsie & The Banshees
15. Property of Jesus Sinéad O'Connor
16. Wanted Man George Thorogood & The Destroyers
17. I Shall Be Released Paul Weller
18. Highway 61 Revisited Karen O & The Million Dollar Bashers
19. Maggie's Farm Stephen Malkmus & The Million Dollar Bashers
20. Like A Rolling Stone The Rolling Stones
Track 1. アルバム『エレクトリック・レディランド』(1968年)
Track 2. ベスト・アルバム『コレクテッド』(2002年)
Track 3. アルバム『リトル・マグネットとザ・バブル・オブ・バブルの対決』(1991年)
Track 4. アルバム『プル・ザ・カヴァー』(1984年)
Track 5 アルバム『ディスティニー・ストリート』(1982年)
Track 6, 18, 19 サウンドトラック・アルバム『アイム・ノット・ゼア』(2007年)
Track 7. シングル「マリブ」(1998年)
Track 8. アルバム『アシッド・イーターズ』(1994年)
Track 9. ベスト・アルバム『グルーヴィーズ・グレイテスト・グルーヴス』(1989年)
Track10. アルバム『ハート・ミー』(1983年)
Track11. アルバム『ユー・アンド・アイ』(2016年)
Track12. ベネフィット・アルバム『ウォー・チャイルド』(2009年)
Track13. アルバム『ゴーン・アゲイン』(1996年)
Track14. アルバム『スルー・ザ・ルッキング・グラス』(1987年)
Track15. カヴァー・アルバム『チャイムス・オブ・フリーダム』(2012年)
Track16. アルバム『バッド・トゥ・ザ・ボーン』(1982年)
Track17. サウンドトラック・アルバム『ホロウ・リード』(1996年)
Track20. シングル「ライク・ア・ローリング・ストーン」(1995年)
という内容。全20曲で収録時間は約80分。
クーラ・シェイカーの「やせっぽちのバラッド」は、ヘヴィな曲だけどサイケで1990年代中頃のブリットポップ期のバンドらしく聴きやすさも兼ね備えた、かなり好きなカヴァー。「窓から這い出せ」はいろんなアーティストがカヴァーしてるけど、さりげないカヴァーのトランスヴィジョン・ヴァンプを。ウィルコ・ジョンソンはディランのカヴァーを何曲かしていてどれも好き。ディラン・カヴァーの初期体験としてはジミの「見張り塔〜」とリチャード・ヘル&ヴォイドイズの「ゴーイング・ゴーイング・ゴーン」で、ヘルのだるい感じのヴォーカルとロバート・クワインのキレたギターが魅力だった。1990年代に登場したアメリカのシンガーソングライター、キャット・パワーの「メンフィス・ブルース・アゲイン」もノリがいい。
「イッツ・オーヴァー・ナウ・ベイビー・ブルー」もいろんなアーティストがカヴァーしているがシングルのカップリングで聴いたホールのカヴァーを選んだ。シンプルなコード進行が多いディランの曲はパンク・ヴァージョンも似合う。ほろ苦いメロディの「マイ・バック・ページ」をラモーンズの高速カヴァーで。『ブロンド・オン・ブロンド』のなかで好きな曲のひとつ「アブソリュートリー・スウィート・マリー」はフレイミン・グルーヴィーズのベスト盤からで、オリジナル・アルバムでは『ジャンピン・イン・ザ・ナイト』収録曲、そのまんまカヴァーだけどガレージなタッチがいい。ジョニー・サンダースの「ジョーイ」はアコースティックな『ハート・ミー』から。
「女の如く」もカヴァーが多い曲だけど、エモーショナルな弾き語りのジェフ・バックリィのヴァージョンを。ベックの軽快なカヴァー「ヒョウ皮のふちなし帽」、パティ・スミスの「ウィキッド・メッセンジャー」はデイヴィッド・リンチな世界も感じさせるヘヴィーなテイスト。こちらも独特の世界を作り上げるスージー&ザ・バンシーズの「火の車」は浮遊感が素晴らしい。真っ直ぐなシネイド・オコナーの「プロパティ・オブ・ジーザス」、ジョージ・サラグッドのシンプルながらもエッジーな「ウォンテッド・マン」、ポール・ウェラーの「アイ・シャル・ビー・リリースド」は映画『ホロウ・リード』のサントラから。
ヤー・ヤー・ヤーズのヴォーカル、カレンOの「ハイウェイ61」とスティーブン・マルクマス(元ペイヴメント)の「マギーズ・ファーム」の演奏はトム・ヴァーレインがギターで参加したザ・ミリオン・ダラー・バッシャーズ(他のメンバーはソニック・ユースのリー・ラナルド、スティーブ・シェリー、ウィルコのネルス・クライン等が参加)でディランを題材にした映画のサウンドトラック・アルバム『アイム・ノット・ゼア』から。
右上の画像はセレクトしたディスク。