浅川マキ『STRANGER'S TOUCH』
前作『LIVE・夜のカーニバル』に引き続き、浅川マキ25枚目のこのアルバムにも下山淳、池畑潤二、奈良敏博、野島健太郎が参加、アルバム『アメリカの夜』(1986年)に収録されていたロックンロールナンバー「あいつが一番」と「CHROME STAR」をメドレーで演奏している。
『STRANGER'S TOUCH』について浅川マキ自身は、“このアルバムを聞き終えたとき、ちょうど1本のシネマを観たような印象を受けるのなら、私は嬉しい”と記している通り、原田芳雄が出演した短編映画『男からの声』の音声が挿入されたり、マキの語りあり、モダン・ジャズ、前衛的な演奏、ヘヴィなロック、ポップなアレンジ、と多様な感触の曲が収められ、各曲はトラック分けされているがクロスフェードやコラージュ的にミックスされて繋げられているものもありトータルな印象も感じさせる。
「あいつが一番〜CHROME STAR」は、曲の冒頭に短編映画『男からの声』に使用されていたTristan Honsingerのチェロ演奏や原田芳雄と浅川マキが地下のバーの階段を降りてゆく場面のサウンドが1分ほど挿入され(地下のライヴハウスへ降りてゆくイメージか)、歓声のあと「CHROME STAR」の池畑潤二のダイナマイト・リズムに下山の激しくフィードバックするギターからリフにのせ浅川マキは「あいつが一番」をさわりのみ歌って、すぐにT-REXのカヴァー「CHROME STAR」がメドレーで演奏される。原曲で歌われていた歌詞“Life is just a joke”を“明日の事など いつだって いつだって吹く風まかせね”と、うまく意訳した日本語詩が素晴らしい。ヘヴィーなアレンジで、下山淳の爆音ギターがここでも堪能できる。このアルバムにはレコーディング場所のデータ記載がないのだけれど、このテイクはライヴ録音のようだ(1988年12月の文芸坐のライヴか…?)。
