私の放浪音楽史 Vol.112 ECHO & THE BUNNYMEN『SHINE SO HARD』
1981年、KOROVAよりリリースの12インチライヴEP(UK)。
1981年1月17日、ボクストンのパヴィリオン・ガーデンズでおこなわれたライヴを収録した短編映像作品『SHINE SO HARD』のサウンドトラックとしてリリースされた。ファーストアルバム『クロコダイルズ』から「Crocodiles」と「All That Jazz」が、後のセカンドアルバムに収録される「Zimbo」(後の「All My Colours」)と「Over The Wall」の4曲を収録している。
この12インチ、ジャケットはかっこいいし、バニーズのライヴ演奏が聴きたくてぜひとも入手したかったが1980年代中旬、新宿のコレクターズショップではかなり高額で売られていてなかなか手に入れられなかった。私が『SHINE SO HARD』を聴いたのはリリースから随分経ってからで、これはお茶の水にあったシスコで購入したと記憶している。私の12インチはニュージーランド盤で、買った値段は覚えてないけどコレクターズ価格ではなかったと思う(オリジナルUK盤は文字がグリーンなんだよね…)。
ラフでフリーキーになった「Crocodiles」、Zimboという言葉が繰り返し歌われ催眠的な効果を生みだしている「Zimbo」。そして特にピート・デ・フレイタスのパーカッシヴなドラミングは、アタックの強いドラムロールで高揚感をもたらす「Over The Wall」や「All That Jazz」、エキゾチックなムードを演出する「Zimbo」で印象に残る。「Zimbo」の歌詞がアルジャーノン・ブラックウッドの小説『ジンボー』(原題:Jimbo: A Fantasy)にインスパイアされたのではないか、ということを読んだのは日本では1983年12月に来日記念盤としてリリースされた『エコー・アンド・ザ・バニーメン(ネヴァー・ストップ)』に封入されていた大野祥之のライナーノーツだった。そこには“主人公のジンボー少年の肉体と心が分離して、心が閉じ込められながらも、最後には閉じ込められた部屋の外へ飛び出す”というストーリーが紹介されている。今回セカンドアルバムに収録されている「All My Colours」の歌詞を読んで、“Flying”ではじまり、“What d'you say when your heart's in pieces”、“Hey I've flown away”と歌われていることから「Zimbo」と「Jimbo」の共通点はあるな、感じた。
ライヴEP『SHINE SO HARD』が収録されたライヴや映像に関して今回ネットで調べてみると、パヴィリオン・ガーデンズのライブには応募してオフシャル・パスを手に入れられた500名が参加することができ、そのパスには“オフィシャル・パスをお持ちの方は『They Shine So Hard』のビデオカセット(500本限定)を特別に用意します”と書かれていた。ライヴを収録したビデオカセットは1982年にリリースされている。バンドのイメージショットとパヴィリオンでのライヴシーンを収録した『SHINE SO HARD』(32分)と『LE VIA LUONGE THE LAST OF THE LONG DAYS:A FILM BY BILL BUTT』(16分)と題された映像が収録されている。
このレコードを聴いた時にはサウンドトラックといってもどんな映像なのかまったく不明だった。一部のイメージショットや「Over The Wall」は後のビデオカセットでリリースされた映像作品『ピクチャーズ・オン・マイ・ウォール』(1984年)に使われていたが、YouTubeの時代になってようやく全編を観ることができた。いまではいずれも鮮明な映像をYouTubeで見ることができる。
『SHINE SO HARD』A Film by John Smith
そのタイトル通り、強烈に光を放ち上昇してゆくバンドの姿を捉えている。
『LE VIA LUONGE THE LAST OF THE LONG DAYS』Directed by Bill Butt