私の放浪音楽史 Vol.113 ECHO & THE BUNNYMEN『HEAVEN UP HERE』
1981年5月30日、KOROVAよりリリースのアルバム(UK)。
鮮烈なデビューアルバムと楽曲のスケールを拡大した『ポーキュパイン』に挟まれた第2作。ややいぶし銀的な印象を受けるが、1曲1曲は硬く芯まで凍りつき、それぞれの曲から痙攣するような振動が感じられるだろう。まるで抜き身の刃のような青白い妖気を漂わせる緊張感に満ちた名盤である。
アルバムのオープニングは1980年11月BBCのジョンピールセッションでは「That Golden Smile」として演奏していた「Show of Strength」で“Your golden smile would shame a politician”という歌詞が歌われている。うねりのあるギターフレーズがかっこいい。続いてスピード感のあるパンキーな印象の「With A Hip」、ライヴEP『シャイン・ソー・ハード』に収録されていた「Over The Wall」はもくもくと湧き上がる灰色の雲のような不穏なイントロからタイトでパーカッシヴなドラミングがダイナミックな曲。ファンキーな印象の「It Was A Pleasure」、シングル曲の「A Promise」。アナログ盤ではここまでがA面。
ノイジーなギターが炸裂するタイトルトラックの「Heaven Up Here」、シンプルかつサイキックな小品「The Disease」、ライヴEPでは「Zimbo」というタイトルだった「All My Colours」、ユニークな印象もある「No Dark Things」、粉砕するように攻撃的なサウンドの「Turquoise Days」、“私が望むもの全てが私は欲しい 私が愛しむもの全てを私は愛す 間違いを犯したとしても、誰がそれを責められよう”(大意)と歌われる「All I Want」がラスト。バニーメンの歌詞って全体的にフィロソフィーとメランコリーが混在しているよね…。
スパイキーでタイトな演奏が充実したこのアルバムはイギリスでトップテンヒットとなった。
このアルバムを含むバニーズ初期4枚の美しいアルバムジャケットを撮影したフォトグラファー、ブライアン・グリフィン(Brian Griffin)は2024年に亡くなっている。