私の放浪音楽史 Vol.121 SANDIE SHAW「HAND IN GLOVE」

1984年、徳間ジャパン/ラフ・トレードよりリリースの12インチシングル(イギリスでは1984年4月リリース)。

モリッシーの敬愛する60年代の歌姫・サンディ・ショウがザ・スミスの楽曲を歌った3曲入りの12インチシングルで、当初は「I Don't Owe You Anything」がA面に予定されていたがスミスのデビュー曲「Hand In Glove」がA面としてリリースされた。

ザ・スミス・ヴァージョンで印象的だったイントロのハーモニカは使用されておらず、サンディ・ヴァージョンにリアレンジされ、ややザラっとしたサンディのヴォーカルで歌われる。ザ・スミスの輝かしいデビュー曲で、“ギャング仲間のスピリット”(byモリッシー)を高らかに宣言した「Hand In Glove」を再び世に問うかたちとなったこのシングルは、全英チャートで27位をマークした。

“ぴったり息のあったふたり
 私たちは世界の中心で光り輝く

 ぐるのようなふたり 
 善良な奴らは笑っているわ

 確かに私たちはボロを着ているけど
 あいつらには決して手に入らないものを持っているのよ”
「Hand In Glove」

カップリングにはファーストアルバム『ザ・スミス』収録曲の「I Don't Owe You Anything」。
7thコードを多用したクリアなギターサウンドとキーボードの響きが爽やかな夏の夜のバックグラウンドミュージックとも言えそうな演奏だけどモリッシーの歌詞が歌われればそれはザ・スミスの世界。

“盗んだワインで誘惑され
 うなずいたのが全ての始まりだった
 次に何が来るのかあなたはよく知っていた

 私はあなたに借りはないけど、あなたは私に借りがあるのよ
 今すぐ返してちょうだい

 人生は決して優しくはない
 人生は厳しいもの
 でも今夜何があなたを笑顔にするのか私は知っているわ”
「I Don't Owe You Anything」

カップリングにはもう1曲「Jeane」。ザ・スミスのシングル「This Charming Man」のカップリングに収録されていた曲で、サンディのヴァージョンはアコースティック・ギターの響きをメインにしたアレンジになっている。パワフルな歌声でサンディ・ショウが歌う。

“ジーン、誰にも認められない生活に魅力を失くしたの
 それに、ここの道を歩いて食器棚が空っぽの部屋まで行くのはもううんざりだわ
 ジーン、幸せの意味がわたしにはもうわからない
 でもあなたの瞳を見て、そこにそれが無いことはわかっているのよ

 わたしたちは何度も何度も何度も何度も何度も試したけれどいつも失敗した
 即金で支払ってしまえるような、そんなものはただのお伽噺、わたしはもう魔法を信じていないのよ、ジーン”
「Jeane」

トニー・リチャードソン監督の映画『蜜の味(A Tase of Honey)』(1961年)から女優のリタ・トゥシンハムの横顔をアートワークに使用したジャケットデザインはモリッシーによるもの。プロデュースはジョン・ポーター。


イギリスでは1988年10月にサンディ・ショウのアルバム『ハロー・エンゼル(原題:HELLO ANGEL)』がラフ・トレードからリリースされスティー ブン・ストリートがリミックスした「Hand In Glove」が収録されている。2004年にEMIからリイシューされたCD『ハロー・エンゼル』にはオリジナル・シングル・ヴァージョンの「Hand In Glove」とカップリングの「I Don't Owe You Anything」、「Jeane」の12インチシングル3曲がボーナストラックとして収録された。
SANDIE SHAW『HELLO ANGEL』reissue CD EMI 7243 8 66255 2 6(2004年)

SANDIE SHAW reissue CD『HELLO ANGEL』Back Inlay Picture
Sandie Shaw with Morrissey and Johnny Marr

12インチ「Hand In Glove」がリリースされる前の1984年3月12日にロンドン、ハマースミス・パレスでおこなわれたザ・スミスのライヴにサンディ・ショウがゲストで登場、「I Don't Owe You Anything」を歌った。その時のライヴを収録したブートレグは数種類リリースされているが、私が入手したのは『LAST OF THE ENGLISH ROSES』というCD。
BOOTLEG CD:THE SMITHS『LAST OF THE ENGLISH ROSES』BIG MUSIC BIG043(1993年)
このブートレグCDのクレジットにはレコーディングされたのがLive in Europe 1985、4曲目の「Girl Afraid」の表記が「I'll Never Make That Mistake Again」となっている。

参考文献:『モリッシー&マー・茨の同盟』ジョニー・ローガン著・丸山京子訳(シンコーミュージック刊・1993年)、『ジョニー・マー自伝 』丸山京子訳(シンコーミュージック刊・2017年)、『モリッシー自伝』上村彰子訳(イースト・プレス刊・2020年)、雑誌『beatleg vol.11 october』(2000年)

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