私の放浪音楽史 Vol.123 THE SMITHS『HATFUL OF HOLLOW』
ザ・スミスの2枚目にリリースされたアルバムで、シングル収録曲6曲と4回のBBCセッションから10曲を収録したコンピレーション。寄せ集め感はなくバンドの初期衝動と進化していく様を見事に捉えた内容で、このアルバムも繰り返し繰り返しよく聴いた。
ジャケットにはフランスの雑誌「リベラシオン(Libération)」1983年7月号に掲載されたジャン・コクトーの線画をもとにしたタトゥーを左肩下にいれた青年の写真が使用され、その白黒写真をかこむカラーは涙色。アルバムのタイトルは『虚しさで溢れた帽子』。
収録曲は下記(アナログでは9曲目からB面)。
1. William, It Was Really Nothing
2. What Difference Does It Make?
3. These Things Take Time
4. This Charming Man
5. How Soon Is Now?
6. Handsome Devil
7. Hand In Glove
8. Still Ill
9. Heaven Knows I'm Miserable Now
10. This Night Has Opened My Eyes
11. You've Got Everything Now
12. Accept Yourself
13. Girl Afraid
14. Back To The Old House
15. Reel Around The Fountain
16. Please, Please, Please, Let Me Get What I Want
Track 1, 5, 16 from 12inch single「William, It Was Really Nothing」
Track 2, 6, 15 from BBC Radio 1 JOHN PEEL Show first broadcast 31/5/83
Track 3, 11 from BBC Radio 1 DAVID JENSEN Show first broadcast 4/7/83
Track 4, 8, 10, 14 from BBC Radio 1 JOHN PEEL Show first broadcast 21/9/83
Track 7 from 7inch single「Hand In Glove」
Track 9. 13 from 12inch single「Heaven Knows I'm Miserable Now」
Track 12 from BBC Radio 1 JOHN PEEL Show first broadcast 5/9/83
デビューシングル[7]のオリジナル・シングルヴァージョンに続いてジョニー・マーのハーモニカをフィーチャーしたBBCセッションの[8]も聴きどころ。当時の最新シングル[1]から全3曲([5]と[16])も入ってるし、[3]、[6]、[11]、[13]といったスピード感のあるナンバーのBBCセッション、このコンピで初めて音源化された悲しい余韻を残す[10]も名曲。セカンドシングル候補だった[15]の響きもいい。アルバム全体を通じてアンディ・ルークとマイク・ジョイスの演奏力の高さも感じられる。
”たまには良い時を過ごしたいな
ほら僕の持っていた運は善人を悪人に変えてしまうほどのもの
だから、どうか僕の、お願いだから僕の望みを叶えてください
長い間夢見たことなんかなかった
ほら僕の過ごした人生は善人を悪人にしてしまうほどのもの
だから生涯で一度くらい 僕の望みを叶えてください
それは僕にとって間違いなく初めてのことになるのだから”
「Please, Please, Please, Let Me Get What I Want」
このアルバムの最終曲でもある「Please, Please, Please, Let Me Get What I Want」は、シングル「William, It Was Really Nothing」のカップリング曲で、ジョニー・マーが <アイリッシュ・ワルツ> という仮タイトルでデモを作り、モリッシーが歌詞を書き上げた。懐かしいイメージのサウンドとともに歌詞には強い思いが込められており、マーの弾くマンドリンも印象的だ。この曲はドリーム・アカデミーがカヴァーし1985年にシングルでリリースされている。
参考文献:『モリッシー&マー・茨の同盟』ジョニー・ローガン著・丸山京子訳(シンコーミュージック刊・1993年)、『ジョニー・マー自伝 』丸山京子訳(シンコーミュージック刊・2017年)、『モリッシー自伝』上村彰子訳(イースト・プレス刊・2020年)、『レコード・コレクターズ 11月号』(ミュージック・マガジン刊・2017年)
