JIMI HENDRIX『IN THE WEST』

1972年1月、ポリドールよりリリース(UK)のライブ・アルバム。

ジミ・ヘンドリクスの音源の権利が親族に移ってから、音質が悪かったり、演奏パートを差し換えたりといった粗悪なものはなくなったが、ジミの死後ポリドールからリリースされた中でも魅力的なパッケージのものはあった。ライブ盤では『ジミ・プレイズ・モンタレー』、『ライブ・アット・ウィンターランド』、そしてこの『イン・ザ・ウエスト』はその部類に入ると思う。このアルバムも収録場所が、1969年2月ロンドンのライブを1969年5月のサンディエゴでのライブと偽って表記されていたりもした(そのためタイトルがイン・ザ・”ウエスト”となっていた訳だが)。
現在はアナログ、CD共に廃盤となっていて、このアルバムの入手は困難となっているが、2000年9月にリリースされた4枚組BOXに『イン・ザ・ウエスト』から5曲がリマスタリングされて収録されている。個人的には、バラエティに富んでいる選曲なのでこのまま再発しても良いと思うのだが....。今回の全曲解説はアナログ盤の形となっています。

SIDE A :
1.  Johnny B. Goode(written by Chuck Berry)
チャック・ベリーの曲で、ジミが最新型のスポーツ・カーに試乗してブッ飛ばしているようなパンキッシュなカバー・バージョン。おなじみのイントロから、リチャード・ヘル、ジョニー・サンダースにも似た、よれよれ気味のボーカルに、トーン・コントロールやピックアップ・セレクタを駆使したギタープレイ、ソロで弾き倒す。ベースはビリー・コックス。ミッチのドラムとのコンビネーションも抜群だ。1970年5月30日バークレーでのライブ。
4枚組BOX『THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE』ディスク4に収録。

2. Lover Man(written by Jimi Hendrix)
『モンタレー』等のライブで聴けるB.B.キング作の「Rock Me Baby」を下敷きにした曲で、とても歌いながら弾いているとは思えないギターが凄い。ギターソロの後半でミスをしてしまうところがあるが、そこにまた勢いを感じる。ジミは少しのミスや、少々のチューニングの狂いなど持ち味に変えてしまう魅力がある。フェイド・アウトする寸前、「Stone Free」のイントロのハ-モニクスが聴こえる。この曲も1970年5月30日バークレーでのライブ。

3.  Blue Suede Shoes(written by Carl Perkins)
カール・バーキンスの曲で、ジミとビリーの弾くリフにより、元曲がわからないほどにアレンジされ、ファンク・ナンバーに生まれ変わっている。1970年5月30日バークレーでのライブ。
4枚組BOX『THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE』ディスク4に収録。

4.  Voodoo Child -Slight Return-(written by Jimi Hendrix)
Experienceの3枚目のアルバム「Electric Ladyland」に収録されていたナンバー。ワウ・ペダルと低音で繰り返し弾かれるフレーズが呪術的な、ゴジラ級のヘヴィー・ロック。メリハリの効いた演奏、ギターの上をジミの両手が自由自在に動き回る。最後はフェイド・アウトだが、8分近く充分に堪能できる名演だ。1969年2月24日ロンドン・ロイヤル・アルバート・ホールでのライブ。4枚組BOX『THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE』ディスク3に収録。

SIDE B :
1.  The Queen -British National Anthem-(Traditonal)
2.  Sergeant Pepper's Lonely Hearts Club Band(written by  Lennon & McCartney)
1970年8月30日、ワイト島フェスティバルのライブからで、この2曲はオープニングで演奏された。3人のメンバー紹介のあと、イギリス国歌に続いて、ミッチの短いが小気味良いドラム・ソロをはさみ、ビートルズの「サージェント・ペッパーズ~」へ。「サージェント~」はワンコーラスを歌ったあと、「Spanish Castle Magic」へなだれ込むところでフェイド・アウト。ワイト島の音源は『Isle of Wight』や『Live Isle of Wight 70』で聴ける。

3.  Little Wing(written by Jimi Hendrix)
Experienceの2枚目のアルバム『Axis:Bold As Love』に収録されていたナンバー。スタジオ・バージョンは、”雲を渡り...、美しい蝶、月光...”といった言葉が並び、おとぎ話を語るようなジミのボーカルに、抑制と瞬発力に満ちた演奏が一分の隙もないほど完成された曲だが、このライブ・バージョンではさらに自然に解き放たれたような美しさが増している。1969年2月24日ロンドン・ロイヤル・アルバート・ホールでのライブ。
4枚組BOX『THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE』ディスク3に収録。

4.  Red House(written by Jimi Hendrix)
Experienceのデビュ-・アルバム『Are You Experienced?』に収録されていたブルース・ナンバー。13分の長い曲だが、表情にすぐれたボーカルと、時に語りかけ、時にマグマのように噴出するジミのギターは曲の長さを感じさせない。
個人的には、ジミのフリーキーでエキセントリックなギター・プレイは、ニューヨーク・パンクのトム・ヴァーレインやロバート・クインにも通じる響きがあり、ブルースという型には収まりきれない魅力がある。ジミの使っていたギターをパティ・スミスやヴァーレインが所有、レコーディングで使用していたという逸話もある。1969年5月25日サンディエゴ・スポーツ・アリーナでのライブ。同日のライブは1992年3月にリリースされたCDボックスセット『Stages』で聴ける。
4枚組BOX『THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE』ディスク3に収録。  

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